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今日の読書 走馬灯交差点/西澤保彦

特殊設定におけるミステリを多く手がける西澤保彦による、人格転移の殺人作品となります。

人格転移ものは27年ぶりという事ですが、作品の毛色としてはかなり違いますので同じネタの使い回しという感じは一切ありません。

帯に思い切り人格転移と書いていてそれを目にしてしまったのですが、作品を宣伝したいのが帯だというのを横に置いておいても書かない方が良かったんじゃないかなぁとは思うのですよねぇ。

視点人物の戸惑いや違和感がちりばめられていて、これは普通では無い何かが起きているなというのは小出しに分かるようになっている親切設計ですし、一度ちりばめた謎を、ここからはこの作品独自の設定を説明しながら進めていきますよという流れで組んでいるので。

ただ、込み入っていたり、ややこしいものであるのも確かであって、特殊設定ミステリーだからとある程度頭を働かせながら読むのになれていないと楽しめるのかどうかというのはありますかねぇ、一定以上読み手を選ぶとは思います。

個人的には読者として慣らされているので、個人的には込み入っているけれども伏線を放り投げるようなことなく安心して楽しめました。

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今日の読書 忍びの副業/畠中恵

太平の世の中となった江戸時代、江戸所の警護を生業とする甲賀忍びの末裔が副業をするという話なわけですが、タイトルを最初に見た印象は忍びとしての能力を生かして、些細な収入を手にするというほのぼの日常路線なのかと予想してしまいましたが、本職の武士達がすっかり戦闘能力を失ってしまった中で忍びたちだけが戦国時代さながらの緊迫した状況に放り込まれるというものでした。

世継ぎの警護の使命を受けると、世継ぎの命が狙われているのは多方面から、身内も疑い逆に疑われというなかなかに苦労の多いという話でした。

畠中恵作品はほのぼの路線に見せかけて超ハードな話というのは多いので、読んでいてその路線だとすぐに切り替える事は簡単でしたね。

忍びの副業 上 [ 畠中 恵 ] 忍びの副業 下 [ 畠中 恵 ]

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今日の読書 浪華燃ゆ/伊東潤

大塩平八郎の乱でお馴染みの大塩平八郎が主役となる歴史小説になります。

大塩平八郎はそれこそ乱の首謀者という事しかイメージはなく、元々大坂奉行の与力であったというのは言われると思い出すという程度、それくらいの前知識しか無くても楽しめる内容ですね。

飢饉があったり、民が困窮、餓死者も出るような中、徳川の治政も長期化した事の歪みが露呈して時代、そんな中、与力という立場で悪を根絶した大塩平八郎は学問の重要性を考え行動していき、その先に待っていたのは乱を起こすことになったという事で。

悪を憎み、そのためにどうすれば良いのかと言うことで己にも厳しく謹厳実直で融通が利かないという大塩平八郎像を作り上げ、小さな気の緩みや些細な保身や権力欲から大きな腐敗へと繋がっていくという権力者の流れ出てくる腐敗と理想論からの正義の暴走という対立軸に終息していく形ですね。

権力の腐敗は憎むべき事で間違いはないのですが、そこを出発点として、でも腐敗と断ずるには強すぎる日常を守らなければならない小市民的な保身というのもあるよね、それを悪として全否定できるほど人間は正義を貫く事って難しいよねと、悪というものに対して全否定すべきものを提示しながら徐々に全否定まではできない悪というものを物語上は提示していくという流れに対して、大塩平八郎の掲げる理想や正義感はストイックに貫いていき、理想は素晴らしいけれども全ての人がそれを行使できるかというと無理じゃないかと、正義の暴走へと突き進んでいる感じで進んでいき、悪と正義が交わり立場が逆になっていく構成が現代社会の問題点とリンクさせている感じがしますね。

大塩平八郎の乱に限らずですけれども歴史上の出来事を現代の視点で善悪決めるというのは違う価値観上での出来事なので無理があるわけですが、基本的に大塩平八郎の乱はテロでしかなかったわけで、目的が正しければ行動も正しいと評価するわけにはいかない、そこのバランスを現代の価値観も使って表現しながら、上手くまとめ上げているので読んでいて楽しめました。

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今日の読書 スカーレット・レター/五十嵐貴久

文芸編集者の春川澄香が新人作家の山科和美と打ち合わせをするために岩手県のひなびた温泉宿に出向いた。

新作を書くプレッシャーでなかなか書き上げられない作家を励ます担当作家の物語ながら、プロローグでは凄惨な事件が起きていて、これがどこにどう繋がっていくのかが見えない、話の展開も所々不可解な事が起きているものの、何がどうなっているのか把握できないまま進んでいき、これがどう結末に向かうのかとなるものになっています。

散々はられている伏線は細かに気にとめておく必要のある話でしたし、驚きましたがホラーと分類されるように紹介されているものの、ミステリー色が強いので個人的にホラーが苦手でも問題はなかったですね。

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今日の読書 誘拐遊戯/知念実希人

女子高生が誘拐される事件が起き、犯人は4年前に女子中学生を誘拐し殺害した「ゲームマスター」と名乗り、交渉役にその4年前の事件で事件を担当し奪還に失敗した元刑事を指名してきて、ゲームマスターと名乗る犯人だけにゲームのような指示を攻略して人質を奪還出来るのかという話になります。

誘拐事件は人質を無事に救い出さなければいけないという事もあり、ミステリーでは時間に追われた緊迫感のある犯人との知恵比べであるとか、緊急事態に対する対応能力が問われるようなシーンを作り出しやすい題材として、殺人事件のように起きてしまったことを解決するのとは違う魅力のある題材ですが、この作品は誘拐事件というだけではなく、多くの要素を詰め込んだもの、ゲームを楽しむかのような犯人は何者なのかというのが気になって仕方が無くなるように仕掛けられています。

知念実希人は現役の医者という強みを使った医療知識が必要な謎解きが多く出てくるのが特徴ですが、この作品は、病気は関係してきますがそこまで強くはなく、医療要素強めの作品以外も大丈夫だよという作者の主張も実はあるのかもしれないと思えるもので、医療知識が必要なミステリーだと身構えて手を出さないというような人も関係無く楽しめると思いますね。

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