fc2ブログ

今日の読書 日本史サイエンス/播田安弘

副題が『蒙古襲来、秀吉の大返し、戦艦大和の謎に迫る』というもので、この3つについて歴史学者視点ではなく、元造船エンジニアである筆者が残っている記録、数字をもとに通説は物理的に可能なのかどうかという視点で考察するというものになります。

蒙古襲来、いわゆる元寇はかつては神風という名の台風によって元軍は海の藻屑となったというような通説でしたが、それは元々記録として残っていた『八幡愚童訓』からの影響が強く、当時としても武士が真っ当な国防に奮闘したという記録を残した方が都合が悪い(鎌倉幕府がそれに報いられていない)という事もあったりしたわけですが、この神風神話だけが一人歩きして、窮地に陥っても日本は神風が吹くから大丈夫と言う根拠無き楽観論を形成してしまった。

また戦後の教育は戦争そのものをタブー視してしまい軍事史についての検証がしっかりとなされず、しっかりとした国防が出来ていたという着地点にはしたくなかったために、蒙古襲来が実際どのように行なわれたのか実地検証をまともにしてこなかったなどなど。

そういったものを船について専門家なので、当時の船ならばどれだけの人数や食料を運ぶ事ができて、それがどうやって上陸させることが出来て、船酔い具合はどれくらいのものが考えられてと検証していくのは読んでいて楽しいものに仕上がっています。

秀吉の中国大返しについても、実際どれくらいの速さで実行出来るのか、人間の活動限界などなど考慮し考察、また無用の長物扱いになってしまった戦艦大和は実際に当時すでに戦艦としてダメだったのかという事に対しては戦艦としては当時世界でも屈指の存在だったが、活用方法が時すでに遅しだったという結論などなどその根拠含めて、歴史検証について新たな観点というか、自然科学と人文科学と分けていくのは無理だよねって改めて思わされましたね。

ただいわゆる理系分野は文系に虐げられているというか何というかね、教育分野は自然科学に一番金が集まる形にして行かないとダメだよねって個人的には思いますね。

序列として自然科学、人文科学、社会科学でいいだろうって(大学の一般教養ってこういう分け方を現在でもしているのか知りませんが)

第1章 蒙古軍はなぜ一夜で撤退したのか
第2章 秀吉の大返しはなぜ成功したのか
第3章 戦艦大和は無用の長物だったのか
終 章 歴史は繰り返される

テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

今日の読書 黒幕の日本史/本郷和人

黒幕という言葉には、実際に自分は矢面には立たず裏で影響力を発揮する存在というようなイメージになると思うのですが、日本ではなんとなくイメージ出来るものが英訳してみるとしっかりとはまるようなものはないらしく、ある意味日本独自な位置づけのある存在なのではないかと言うことで、筆者が唯物史観に挑むべく面白い歴史観の構築を狙ってまとめた1冊になります。

黒幕のタイプとして、『有名な黒幕』『過小評価されてきた黒幕』『不遇な黒幕』『意外な黒幕』というような評価を軸に黒幕に相当する人物を紹介していきますが、不遇な黒幕あたりは黒幕というか実績が後世に知られていない埋もれた存在というだけというか、まぁ黒幕の拡大解釈であり、黒幕という言葉の再構築まで狙っているでしょうというか。

第1章 宇多天皇 オモテがウラになる時代
第2章 信西 世襲の壁が生んだ黒幕
第3章 北条政子 女人入眼の日本国
第4章 中原親能 下級貴族、鎌倉に行く
第5章 極楽寺重時 京都に学んだ幕府のご意見番
第6章 海住山長房 後鳥羽挙兵に反対した実務貴族
第7章 平頼綱 肥大化した側近エリートの末路
第8章 北畠親房 正当を追及した「黒幕」
第9章 三宝院賢俊 「錦の御旗」を持ち帰った尊氏の密使
第10章 細川頼之 室町王権の設計者
第11章 三宝院満済 将軍への意見を突き返した「黒衣の宰相」
第12章 黒田官兵衛 「軍師官兵衛」と言われるが…
第13章 千利休 茶の湯と政治
第14章 高山右近 前だけを救った「意外な黒幕」
第15章 伊奈忠次 家康から過小評価された民政家
終 章 西郷隆盛 「維新の英雄」のウラの顔

テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

今日の読書 図解でスッと頭に入る 紫式部と源氏物語/監修・竹内正彦

地図でスッと頭に入るシリーズから派生した図解でスッと頭に入る紫式部と源氏物語という事で、今回は地図で説明するだけではやりにくいという事で図解を軸にしてきましたが、隙あらば地図を入れてきます(笑)

図解で説明しなければというのは、平安時代の天皇家、藤原家などなどの血統関係であるとか、源氏物語の血縁やら登場人物の関係図ですね、なにかとややこしいですから。

頭の中で整理しにくい事を図解で説明していく初級者向けですが、翻訳版とはいえ源氏物語を一通り読んでいても忘れているものを思い出すにはちょうど良い感じですかね。

初級者向けですが地図という事を軸に捕らえているのはシリーズの特徴ですし、土地勘が場所ですと今ひとつ捕らえにくいという所から何だかんだと助かりますね。

第1部 紫式部とその時代
 第1章 平安時代の後宮生活
 第2章 紫式部の生涯
第2部 『源氏物語』を知る
 第3章 光源氏の青年時代 恋の旅路を歩む貴公子
 第4章 栄華の頂点 位人臣を極めた光源氏
 第5章 宇治十帖 光源氏亡き後の世界

テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

今日の読書 蹴球ヒストリア/土屋雅史

副題として『「サッカーに魅入られた同士たち」の幸せな来歴』とついたインタビュー集になります。

現役のサッカー選手から指導者監督、スタッフという立場の面々にどういった経緯で今に至るのかというのをガッツリと語ってもらうという趣旨になっていて、なかなか読み応えがあります。

個人的には町田市出身、である三浦龍輝、藤田譲瑠チマになりますね、町田出身ながら上のカテゴリーとしての進路に町田が受け皿になりきれていない寂しさというのも込みであるのと同時に、町田が少年サッカーの町というのはしっかりと歴史のあるものなんだよと強調もできるよねっていうのがあったり。

あとは吉田謙、大木武という世界最高峰J2リーグの中でも存在感のある両監督、試合前後でのインタビューではキャラは強いけれどもまともな会話ではないものなのに、こういうインタビューだとしっかりと語るんだなって(笑)

吉田謙 本気の熱量に導かれて
川崎颯太 生粋の負けず嫌い
中村順 豊かに育つように丹念に種を蒔く
中谷進之介 幸福な出会いと成長
三浦龍輝 全てが繋がっている守護神のいま
四方田修平 誠実なる生き様
鷹野智裕 溢れるヴァンフォーレ愛
大木武 比類なきサッカー大好きおじさん
藤田譲瑠チマ 頭角を現わしたサッカー小僧
南雄太 大器晩成
小林伸二 愛し愛される昇格請負人
森保一 感謝を重ねながら謙虚に

テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

今日の読書 鎌倉幕府の真実/本郷和人

一般向け歴史書をどれだけ書いているんだよという東京大学史料編纂所教授である本郷和人による日本史上最も血腥いと言っても過言では無い扱いとなる鎌倉時代前半についてと、史料の読み方についてという大きく2つのテーマでまとめられたものとなります。

日本の歴史学者としては貴重な軍事史を研究している筆者として、戦争史としてロマンの戦争と現実の戦争両方の面があって、この時代ですと源平合戦は軍記物ととして華のあるもので、それはそれとして時代の動きとして興奮しても構わないものとして、でも現実戦争って殺し合いだからカッコイイ扱いにするわけにもいかないよねと、その両面どちらも理解して全肯定か全否定というものにしないようにというのはありますね。

ロマンの歴史という事からですと、源義経というのは判官贔屓という言葉があるくらい人気が高いものですが、奇襲戦法が有名で、それを天才扱いする場合があるけれども、空気を読まないヤバい奴の側面の方が正しいのではないか説を出してきていて、ある程度定説として出来上がっているキャラクター造形にはケンカを売ることになっていますが、同時にキャラクター造形の元となる歴史上の評価の作られ方についても触れられているので、それはそれで興味深いですな。

そして史料の読み方について、唯物史観を全否定するというスタンスであり個人的に共感してしまうと部分ですね。別に歴史の専門家でもなんでも無いのですが唯物史観や進歩主義史観、いわゆる左側が使ってきた分析ツールについては役目は終わったと言うか、皇国史観からのカウンターとして極論から極論にぶっ飛んだ事で成立していたのが日本の左側の学者でしたので、極論にぶっ飛んだ事での誤りというものが現在は分析しやすくなって、極論に対する反論ができるようになった状況は望ましいのかなとは思ったり。

本郷和人は中道の歴史学者だと自分の事を捉えているようで、著書を楽しく読める要因はそういう事だなと思ったり、極論という分かりやすい手段を封じると大変そうだよなってのはありますが、務めている大学のことを考えると極論を使わないと理解出来ないという層では無いでしょうから問題はないのかなと。

とはいえ研究者に対するダメだしは随分と愚痴のように書かれているので一概には言えないのでしょうけれども。

第1章 鎌倉時代の武士の謎
第2章 鎌倉幕府を分析してみた
第3章 人物像を掘り下げる
第4章 古文書抜きに日本史は語れない
第5章 「実証」と「推測」
第6章 歴史研究者を悩ませる「自作自演」

テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

おまけ

カレンダー
11 | 2023/12 | 01
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -
最新記事
最新トラックバック
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
プロフィール

茶留蔵

Author:茶留蔵
心身ともに不健康で知性が大いに不自由な社会不適合者

タグ
おまけ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

カウンター
現在の閲覧者数:
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
義援金募集
FC2「東北地方太平洋沖地震」義援金募集につきまして
検索フォーム
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

RSSリンクの表示
ニューリリース
メタル
QRコード
QR
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる