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今日の読書 スティグリッツ プログレッシブ キャピタリズム/ジョセフ・E・スティグリッツ

非対称性を中心に扱いノーベル賞受賞経済学者となったスティグリッツの現状のアメリカ経済を分析し超絶格差社会と化している状況から脱するための問題点と解決法の提示をまとめたものになります。

学説に変化があるわけではないので基本的なものはそれまでに刊行されている著書と比べて特別目新しいものはないのですが、経済だけ分析していても説明しきれないという事で政治分野にも触れる部分が増えたという事、特にトランプ大統領就任以降の共和党の暴走を、トランプ大統領が突然変異という扱いだけにはせず、それまでの共和党の流れを踏まえた上でさらに暴走したものと定義して説明しようとしているものになります。

スティグリッツは新自由主義、主流派経済学といういわゆる市場原理主義を否定する立場であり、新自由主義という看板のもとでのグローバル経済が世界中に格差を生み出し富裕層はノーリスク・ハイリターンな状況になり格差が広がるだけではなく格差固定社会となっているというものを事細かに説明していくのが定番となっていますが、今回もその流れは変わりません。

金融業が本来は手段のはずが目的となって何も生み出さずそうギャンブル化社会を作り上げた元凶、サブプライムローン発の金融危機など世界中に大打撃を与えながら金融業に関わっているトップ達は責任を取らないどころか、国から税金で補填させた上自分の給料だけは絶対に減らさずにやっていて、それを野放しにしてしまったという事で、オバマ政権の失敗の1つとしてあげていたりはしますが、民主党寄りの立場を出しながらも民主党が市場原理主義からの脱却に失敗していることを嘆くスタンスになり、共和党憎しながらも民主党を称えきれないもどかしさがあるのだろうなぁというのは察してしまうものになっていますね。

トランプ大統領誕生の裏にある、ヒラリー候補のエリートの上から目線による失敗をあげていたりもしますし、むしろ表看板が弱者保護というリベラルの上から目線というのが、完全に偽善者にしかなっていないというのがあらゆる面で元凶になり得るのは、もっと強く意識されるべき事なんだよなぁと、個人的には思いますし。

アメリカの中流の再生として、市場原理主義からの脱却、社会保障の充実や規制強化によって環境改善、インフラ整備、公平な教育の充実など課題は山積み扱いとはいえ、これをやりきれば絶対に良くなるというのは分かりますし、市場に任せるのでは無く国であるとか公がもっとやるべき事をやっていくというのは、市場の失敗があるのと同時に政府の失敗というのもあって、素直に聞き入れられない所もあるのは少し残念なところですね。

アメリカの富裕層による特権階級化はそれはそれで大問題ですが、日本の官僚の特権階級化という問題を見ていると、官民どういう立場であろうとも利権を持てばそれだけで絶対に腐敗するものでしかないという悲しい現実がありますからね。

ただ日本はアメリカと比べればまだ格差は大きくなく、社会保障の充実という意味では社会の分断化は進んでおらず、困った時はお互い様という概念が存在するので、それを踏まえた上でアメリカでその概念を強くするにはどうだろうと考えると、まず国が大きすぎる事、人種や宗教、土着民としてのアメリカ国民と言う概念が薄くなるくらい積極的に移民を受け入れることでやってきた人工国家であることが、国民として一体化することを難しくしているよなと思うしかないんですよね。

経済でグローバル化を批判していながら、トランプの人種差別的態度、移民排除の姿勢も強く批判する。

理論上では理解出来るのですが、グローバル化という言葉からイメージされるものが人によって違いすぎる、経済学の視点では強者のための理論になりますが、政治や社会思想の視点となるとグローバル化は弱者のための理論、ナショナリズムの対義語扱いになるのでグローバル化反対がそのまま差別主義者扱いに変わってしまう。

そのため現在のグローバル社会は歪な形で噛み合ってしまい、社会的弱者のためによかれと思ってグローバル化こそ正義と言っている人達が、そのせいで格差社会を作り出すのに一役買っている状況になってしまっていると。

社会保障分野に限って言いますと、結局は困った時はお互い様と言えるのは、価値観を共有出来る国民という規模までが限界だと個人的には思っていて、民族や宗教が仮に別であっても、その上の概念で同じ祖国で産まれ同じ文化で育った国民だからこそ助け合うのも良いだろうとなると思っていて、それがない状況でひとまとめにしようと思うと、何で俺の金を見ず知らずのやつが使うかもしれないんだと反発されて終わりになってしまうと。

分断のない社会は理想ですし、アメリカが分断されてしまった要因の説明としては本当に分かりやすく説明されているのですが、アメリカ人が1つになって協力し合えるような社会を作り上げるには、それこそ国民が一致出来るほどの外敵でも無い限り難しいんじゃないかなぁと、それくらい国家として一体感を作るのが難しい状況が出来上がっていると個人的には思いますね。

逆に言うと、アメリカの現状を反面教師として市場原理主義ダメ絶対というような世論形成を日本で作り上げないといけないのですが・・・日本の政治家は経済学理論を知らないままやっている人だらけだから無理かなぁ(遠い目)


第1部 迷走する資本主義
 第1章 分断された社会
 第2章 悪化が進む社会
 第3章 搾取と市場支配力
 第4章 グローバル化により自らの首を絞める国家
 第5章 金融が引き起こした危機
 第6章 新たなテクノロジーが提示する課題
 第7章 なぜ政府の介入が必要なのか
第2部 政治と経済を再建するために
 第8章 民主主義を回復する
 第9章 万人に仕事やチャンスを提供する 力強い経済を回復する
 第10章 万人にまともな生活を
 第11章 市民社会を再生する

テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

今日の読書 地獄の楽しみ方/京極夏彦

17歳の特別教室として、一般公募の15歳から19歳までの聴講生50人に向けた特別授業をもとに構成された1冊になります。

第1部・言葉の罠にはまらないために

第2部・地獄を楽しむために

京極さんとの言葉をめぐる一問一答

という3部構成(最後は分量としては少ないですが)であり、1部で言葉とはどういうものかというところから出発し、基本的に言葉というものは不完全なものであり、多くの場合は不完全でも分かり合えたような気がしてなんとかなっていたり、それぞれが考えたイメージを共有化しないまま進めていって、どうにもおかしな事が起こったり、現代ではSNSが発達してきているが、誤解されることが当たり前という前提を頭にしっかりとおいて、その上で言葉を大事に発信しないといけないかなどなど、若者に向けて上から目線を一切排除した、むしろ今の時代の若者は自分達の頃以上に言葉に触れているなどなどについて。

2部はそれを踏まえた具体例を語るというものになっています。

言葉そのもの、日本語の特色一般的に流布している言葉のイメージが必ずしも本来の意味とは外れているもの、愛、絆、正義など良い意味で使われているはずのものが、表面上は良い意味に思えていても、それ故に誤魔化しに使われてしまう、単純化されてしまう、他に言い換えが可能であるものは言い換えてみるなど語彙力をつけておいた方が良いなどなど。

言葉という事を考える良いきっかけになる一冊だなと思いますね、特に物事を単純な言葉でレッテル貼りをしがちな昨今の現状に辟易してしまっているような人は、自分はそういのを避けるためにはどうするかと参考にもなりますし。

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今日の読書 倒れるときは前のめり ふたたび/有川ひろ

有川浩改め有川ひろのエッセイ集に小説2編が収録されたものになります。

改名理由から始まり、日々の縁について、好きな本について、ネット上の言葉のやりとりについて等々。

過去に発表されたものをまとめたものになるので、同じ話題のものが続いたりもありますが、依頼された媒体による微妙な違いも込みで読んでもらおうという狙いがあるようですね。

ネット上のやりとりだけでは無く、子供のためという建前を使い幅をきかせまくっている自主規制要請という名の、自分が気にくわないものは全否定というようなものに対する批判であるとか、本を読む事は楽しいという事を普及させようという狙いと同時に、読書感想文というような強制というものの害悪、純粋に楽しむための読書というものを阻害しているという事など、全肯定できる事ばかりでは無い(ここら辺は男女の違いであるとか、出身地の違い、読書傾向の違いで肯定するも何も知らないことなので、自分の考えと比べようが無いとかが主ですが)のですが、概ね近い考え方をしているなと思えて、腑に落ちやすいですね。

学校の課題として読書感想文というのはあっても、仮面ライダーごっこ感想文は無いというのが分かりやすさ極まれだったり。

大災害が起きたならば、不謹慎として自主規制をしまくるのではなく、むしろみんなでガンガン金を使って経済を回せという概念、最近はかなり浸透してきているかなぁと思う事はありますが、これは本当に日本のためにも一般化されるべきだよなと、有川ひろは色々なところでそういうのを出していますが、未だに不謹慎やけしからんという切り口で自主規制や言葉狩りを進めて経済活動を阻害することこそ正義という人がいますし、その正義を疑わないというか下手に善意で動いている人ほど厄介というのも、書かれていたりしてただひたすら真っ当だよねって思うので、そういうのを真っ当だよねと思うものの、それが真っ当では無いかのように世論誘導されて自分の価値観が揺らいでいる人は、自分の考えが間違ってはいないよねと確認するために読んでみると良いかもしれないですね。

あと、SNS上でひたすら何かをボロカスに喧伝する人対策というのも何とかならんかなぁというのと同時に、某かのSNSをやっている人は、悪いと思う事やダメだと思う事をそのままストレートに感情的に書くのでは無く、無理矢理にでも良いと思うことを喧伝し続けた方が良さそうだよねという事も書かれているので、参考にしてみるもの手かなと。

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今日の読書 本と幸せ/北村薫

作家生活30周年となる北村薫のエッセイ集と自選短編ベスト12とショートショートというものになります。

基本的には『読まずにはいられな』『書かずにはいられない』『愛さずにはいられない』のエッセイ3部作に続くものになって、作家生活30周年のためにわざわざ書いたとのではなく、いろいろなところで既に書いてあったものをまとめたもの、基本的には前3作よりもあとに発表されたものが多く、20世紀中に書かれたものも含まれていたりで、直近のものよりも過去に書かれたものに、これから書く作品などに触れられていると、懐かしさを感じたりという楽しさもあります。

北村薫は基本的にはミステリ作家となりますが、狭義のミステリというよりも文学作品全般のなかに謎要素を見つけるのを楽しんでいるところがあったり、文章読みだけではなく伝統芸能などに影響を受けていたり、それこそ若かりし頃に影響を受けたものに対するネタが多目だったりして、ある意味では昭和な生活を知るための歴史書的な側面も楽しめます。

それぞれが短いので、一気に読んでしまうという事をせず、ちょっとした隙間に読み進めるのに向いていますね。

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今日の読書 逆説の世界史3ギリシア神話と多神教文明の衝突/井沢元彦

井沢元彦の逆説の日本史に続くライフワークとなっている逆説の世界史3冊目は、多神教文明についてとなります。

井沢元彦は日本の歴史学会の弱点として歴史上における宗教の役割についての検証の軽視もしくは無視という事に対してボロカスに罵倒して逆説シリーズを書く原動力にしたという事になっていて、実際に逆説の日本史の開始された半世紀前は唯物史観、進歩史観が圧倒的に幅を利かせていて宗教は麻薬という価値観をそのまま鵜呑みにしてしまうような状況もあったとは思いますが、21世紀以降唯物史観、進歩史観に圧倒的に影響を与えていたマルクスもまた形を変えた疑似宗教であったことが認識されるようになって、唯物史観的な考察から解放されている感はありますが、それはそれで学者ではなく作家だから好き勝手に権威ある学者相手にケンカを売って来た事が全部が全部正しかったかというと違うでしょうが、考察する方向性については早くから呪縛から解放されていた事は正しかったという事にはなるのでしょう。

それでもって、逆説の世界史は日本史シリーズとは違って時系列だけでまとめるのでは無く、ひとまとめにする事によって世界的に地域的に後の歴史にどのような影響を与えていったのかでまとめて検証するという手法になっていて、古代文明だからこそ直接的に影響力の強い宗教観について、多神教から一神教へ強引に変化させられた大多数の地域、それこそ古代文明としては存在感の強いギリシャ神話という宗教観が破壊され一神教に移行した理由と、その逆に多神教な価値観が生き残った仏教、神道、ヒンズー教との違いについての分析となっています。

仏教もインド発祥ながらインドでは廃れたのに対し、チベットや東南アジアや日本で生き残った理由、さらに日本の神仏習合という独自進化というものと、廃れたはずのインドでもヒンズー教の中に仏教が内包されていっているという事で、日本とインドの仏教の独自解釈としての生き残り方の似て非なる状況などなど。

個人的に一神教というものは肌に合わないというか、唯一絶対的に正しい考え方があるという事を信じられない性質なので、多神教の神話にあるある種のいい加減さ、ツッコミどころが多い神様がいるという考え方、ダメなのもいるけれどもダメなりに役に立った時もあるというよな部分否定部分肯定が生き残っている価値観というのが好きなのですが、そういった多神教の概念と一神教の概念の違いに関する考察は読んでいて楽しいですね。

一神教の価値観よりも多神教の価値観の方が好きなんだろうな、もしくは一神教の教えにある傲慢さが好きではないのだろうなというのは感じて、そういう意味では公平な視点とは言い難く、一神教の宗教感を持っている人に受け入れられるかどうかは分かりませんが、私は読んでいて楽しめました。

元々の世界史の知識がたいしたことが無いので、この考え方はどうだろうと疑問に思ったりする部分がないから、面白がっていられるだけかもしれないので、ガチに世界史に詳しい人にとって受け入れられるのかどうかは知りません。


序 章 多神教社会に生きる日本人 無宗教では無く「日本教」を信じる民族
第1章 インダス文明の滅亡とヒンドゥー教の誕生 古代インド思想における「輪廻転生」と「永遠の死」
第2章 ブッダの生涯と仏教の変容 なぜインドではなく中国と日本で発展したのか
 第1話 ブッダが追究した「完全なる死」の境遇
 第2話 禅宗がもたらした日本型資本主義
 第3話 仏教はなぜ発祥の地インドでは衰退したのか
第3章 オリュンポスの神々とギリシア文明の遺産 ポリス(都市国家)の連合体が確立した平和
 第1話 キリスト教に敗北したギリシア神話の世界
 第2話 民主主義のルーツとしてのポリス
 第3話 アレクサンドロス大王の偉業とマケドニア帝国の興亡
 第4話 ギリシア・ヘレニズム文明の賢者たち

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