今日の読書 モルフェウスの領域／海堂尊

海堂尊の一連の医療問題啓蒙、官僚支配構造批判を目的としていると思える小説シリーズ群の中の１冊になります。

２０１２～２０１５年までと近未来を舞台とした、世界初のコールドスリープを題材としたものになっています。

近未来という事もあり、実際に現在行われていない技術(秘密裏に実は行われているとかがあったらば知りませんが)を使うという事は珍しいですが、新技術という題材を使う事で、医療現場目線と官僚目線の明らかな違いを浮き立たせる目的があるのではないかと。

ある種の騙し合いというか、駆け引きは多くの作品にあるものですからね。

東城大学病院を舞台としていて、『ナイチンゲールの沈黙』と『医療のたまご』を先に読んでいると、馴染み深い登場人物達になっていますね。(明確には書かれていませんが、『ブラックペアン１９８８』を読んでいると、思い当たる人物も登場しています）

コールドスリープという、ちょっとＳＦ色が強いかなと思える題材ではありますが、狙いとしてはリスクも経費もお高くなるもが、実績を積む事によって医療の新境地を切り開けるというものがあったとして、それに対する官僚機構というものは難癖つけたり邪魔をしたり大人の事情を作ろうとしたりという有象無象がいますよという形を提示するのが狙いなんだなというのは、分かりやすいですね。

一連のシリーズの中では、ちょっと異質かなと思わなくはないですが、これはこれで狙いが露骨に分かりやすい構成だなと。

---

モルフェウスの領域 (2010/12/16) 海堂 尊 商品詳細を見る