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今日の読書 図書館戦争/有川浩

アニメ化もされた図書館戦争のシリーズが文庫版になったという事で再読しました。

この作品は、メディア良化法という公序良俗に反する言論を取り締まる法律が成立して30年後の世界。

テレビや新聞、出版やインターネット上の言論の自由はことごとく検閲される中、図書館だけが言論の自由の最後の砦となってしまった仮想の日本を舞台としたもので、その世界の中では言論の自由を守るために文字通り命がけになっている図書隊という存在があり、その図書隊を舞台に繰り広げられる一大エンターテインメント作品となっています。

この作品が最初に出版されたのが2006年と今から5年前。

言葉狩りであるとか、論理性の伴わない自主規制という言論の自由が日本からどんどん削られている感はありながらも、実際の法律上はまだなんとか言論の自由を守れているのではないかというギリギリのラインはあったのですが、この作品が出て以降、虚構の世界だからこそ成立する極論の世界が、現実にも近づいているのではないかと危惧してしまう事例は多々目にする事になっています。

残念ながら、私の住んでいる地域のち○こを障子に突き刺す小説でおなじみの知事が、非実在少年規制という、出発点は全否定出来るものではないものの、拡大解釈と恣意性を多いに含み、将来の検閲への足がかりとなるようなものを平気でやっていたりします。

自由にはもちろん責任を伴います。

自由だから何をしても良いというわけではなく自由を履き違えている人の見苦しさというものは、重々承知していますし、一線を越えたものは18禁にするなどの処置をする事すらも反対する気はありません。

しかし、出発点が正しいという事と終着点が正しい事は別であるという事は強く意識しておかなければいけない問題でしょう。

作品世界でも、実際の社会でも出発点は倫理的、もしくは正義感の現れである事は間違いがありません。

表現の自由だからと言って、差別を助長するようなものは許せるものではありませんし、犯罪を助長する物を放置するわけにはいきませんし、18歳以下に見せるにはお行儀がよろしくないものなどいくらでもあります。

しかし、出発点が倫理的であるとか出発点が正義というものは、それ故に暴走しがちである事を経験的に実感している人は多いのではないでしょうか。

非実在青年なんていうものは、アニメやマンガにおいてそれを目にした青少年が影響を受けて犯罪行為に繋がる事があるという、完全にとは言いませんが、極々一部の頭のいかれた人間を基準とした世論誘導というものがあります。

必ず、原因がはっきりとした何かのせいにしないと落ちつかない人がいるんですね。

ホラーを見た頭のいかれた犯罪者が出たとすると、ホラーを見た事によって自分でも人間を切り刻んでみたくなったなんていう理屈をつけて、規制に走るなんていうバカげた事を一度でも目にした人はいくらでもいるでしょう。

虚構と現実の分別のつかないバカを基準で物事を考える事自体が、虚構と現実の区別のつく大多数の人間に対して差別的な扱いをしているという、論理を駆逐し、自分たちの倫理、自分たちの正義こそが正しいと倫理が暴走している状態だと言えるでしょう。

実際の犯罪を未然に防ぐ事が出来るのならばそれに越した事はありません。

これに対して異を唱える人はいないでしょう。

しかし、論理的な検証もなく、虚構と現実の分別もつかないバカというある種犯罪者に対して差別的な視線を持ちわせながら、自分たちの倫理観こそ全てと未然に防ぐ行為をしているっぽい自分たちの正義感に酔って、論理を封じこむというツッコミどころ満載な勢力というのは、何故か放置されてしまいます。

犯罪行為を未然に防ぐ事というのは難しいものです。

身近な誰かの犯罪であれば、犯罪に走りそうな何かしらのシグナルを見つける事によって防ぐ事が出来る場合もありますが、多くの場合は無理ですし、倫理の暴走に酔っている人が必ず遭遇出来るものでもありません。

しかし、虚構の規制への圧力というものは、それと比べると非常に簡単であり、関わっている人にとって達成感を感じる事が出来るため、1つ達成すると新たなイチャモン相手を探すという暴走行動に直結しやすい性質を持っています。

虚構の取り締まりに対して、私がいつも思うのは虚構を取り締まるのならば、もっと現実を見ろよと思う事でしょうか。

虚構の作品から影響を受ける以上に、現実の事件から模倣犯が起きているという事を、もっと大騒ぎしてみたら?と。

何かの殺人事件が起きたとします。

その事件の報道に影響されて、自分も殺人を犯したくなったという、あたまのおかしい犯人が出現したとします。

もしそうなった場合、その事件を誘発した前の犯人に対して、罪を付け加えるべきという事になるはずなんですが、寡聞にしてそういう訴えは聞いた事がありません。

例えば、拉致という犯罪をした犯人が捕まったとします。

逮捕後に動機は、どこかの国の将軍様に憧れて拉致をやったんだと説明した場合、どこかの国の将軍に対して、お前が拉致なんかするから影響されて模倣犯が出てくるじゃないか!

将軍は規制すべきだ!なんていう話になるのでしょうか?

虚構の作品と現実の犯罪、どちらが現実的かというと現実の事件はすでに前例としてあるので、影響力は虚構の作品よりも大きいのではないか?という私の疑問はあるのですが、犯罪者は犯罪を助長するから犯罪者は死ね!というような犯罪者狩りというものは見た事が無いですね。

私のような知性に欠けた人間のたわごとはこれくらいにして、図書館戦争に話を戻しましょう。

この作品は言論の自由という大きな物から、もっと純粋に自分の読みたい本を守りたいという小さなものまでひっくるめて図書館という存在を上手く使っています。

そして、言論の自由を守るという重たいテーマを背負っていながら、図書隊で奮闘する主人公達の青春ものとしても読めますし、恋愛ものとも読めます。(何気に占める割合は多いですし、こっ恥ずかしい描写も多々ありますが)

重たいテーマを背負いながら、それを忘れる事が出来るくらいエンターテインメント作品として、何度も笑ってしまうような気軽さもあります。

楽しみながら考えさせる事が出来るという贅沢な作りになっていますので、読者が1人でも増えてくれたらなぁという作品ですね。

文庫版という事で、巻末には先日亡くなってしまいました俳優であり読書家と知られている児玉清さんと作者の対談とアニメDVDの購入特典に入っていたショートストーリーが載っています。

どちらも初見で、本編は再読という事での懐かしさや、1巻目でここまでやっていたんだっけ?というような再確認を楽しんだのですが、文庫の初見は短くてもそれ以上に楽しめましたね。

特に対談は面白く、作者の作品の作り方であるとか、児玉さんから見た作品の良さなどの指摘などは、こういう風に指摘出来る事そのものが羨ましいというか、改めて惜しい人を亡くしたと思わないといけないなと。

対談は文庫化全作品に続くようなので楽しみの1つですね。
図書館戦争  図書館戦争シリーズ(1) (角川文庫)図書館戦争 図書館戦争シリーズ(1) (角川文庫)
(2011/04/23)
有川 浩

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