今日の読書 経営者・平清盛の失敗/山田真哉
会計士が書いた歴史と経済の教科書という事で、平清盛の成功と失敗というか滅亡を経済視点で考察した物になります。
平氏にあらずば人にあらずという言葉や、平家物語の有名な1節、驕れるものも久しからず、また源氏に平家が敗れたのは、武士が公家化した影響という扱いの強固なイメージから、平家の栄華というのは、長期にわたった物という錯覚を起こしていたのですが、実は平家が驕っていられた期間というのは、最近驕れるものも久しからずとばかりに滅亡した民主党政権よりも短期間だったという事に驚いたというか、年号を覚えるのが苦手で、歴史の期間という概念が希薄だったからというか、単に知識量が圧倒的に不足していたからというか、複合的なものなんですが、イメージによる勘違いってあるものなんだなと。
驕れるものという意味で、どうしても藤原氏の栄華とイメージを被らせていたんですが、規模として全く違うにもほどがありますね(苦笑)
平家物語のイメージが強すぎて、どうしても平家は没落していく様の印象が強く、しかもそれが武士のくせに公家のような軟弱者になったからという、自業自得的に扱われてしまっているので、どうしてもそれで話を済ましてしまいたくなってしまうのですが、それこそ私が勘違いした藤原氏のように、長期間盛者であり続けるのならば、必衰への流れになる事の説明で済ませる事も簡単なのですが、平家の場合、それこそ清盛が盛者へとなりあがり、清盛が一度隠居したあと、実権を譲った長男の重盛が死去して、再び権力の座に復帰する事になっている間に、平家滅亡へのストーリーがガッツリと始まってしまうという短期間にもほどがあるものなんですね。
武士なのに公家化したから滅亡と説明するには、一族郎党が一瞬にして大幅に劣化するという事が起きないと説明がつかない。
少なくとも当時は選挙じゃないので、民主党のように一瞬で信用を失って滅亡という事も起きる事は考えにくい。
という事で、平家というか清盛は、何で短期間で盛者必衰になったかというのを、経済の観点で考えてみようというのが本著ですね。
清盛が盛者となるためにやった事となぜそれが失敗したかという成功と失敗を分析するわけになるのですが、かなりザックリと見ると清盛がやった事は、日本を重農主義から重商主義へと転換し、その成果を出したという事ですね。
日宋貿易と宋銭の普及という、物々交換から貨幣経済への転換、日本はこれよりも過去に貨幣経済への転換を図った事はあるものの、自然消滅になっていたのを、宋銭というものを利用して貨幣経済を普及したという事。
貨幣経済は、今の時代では当たり前に通用していますが、貨幣という概念が無いと成り立たないものであり、その概念の普及だけではなく、宋銭が銅銭であった事を上手く利用して普及させたあたり、貨幣の代わりに、米などを中心とした交換経済の性格も利用していて面白い視点で流通させたなと感心せざるを得ないですね。
普通、近代社会は重農主義から重商主義という流れは歴史の必然というように、一度商業の概念が流布されてしまうと、農業の価値が相対的に低くなっていくものなのですが、平家が貨幣経済や貿易を中心とした重商主義に切り替えて、日本全体のシステム転換に成功しようとしながら、歴史の流れに逆らうかのように、源氏を中心とした、一所懸命な重農主義が平家を倒したという事になったという視点で見ると、非常に面白いものがありますね。
平家が敵に回したのは、貨幣経済に切り替える事によって、従来の米などの交換経済でこそ儲けを出していた勢力。
そして、貨 幣経済が未熟さもあり、米の不作によるインフレ対策が行えなかったという事、それにより盛者であったはずが、アドバンテージを全て失い一瞬にして栄華が途絶えてしまったと。
そういう視点で平家の滅亡というものを見直すと、日本は歴史上において価値観の転換に失敗してしまったのではないか?と思えなくはないですね。
一所懸命という土地神話や江戸時代まで綿々と続く年貢米という税金ならぬ税米を基本とした経済構造。
土地にしがみつくというと、やや見苦しい感じですが、何かあるとすぐにその土地から逃げ出すよりも、地元密着型の生活様式の方が、土着文化という意味でも私は評価したいのですが、源氏が平家を倒した事によって、必要以上に重農主義の意識が根付いてしまい、歴史の流れを一度止めてしまった事になるのかなと思わされましたね。
平家が滅ぶにしろ、タイミングとしては貨幣経済がしっかりと根付いた後に滅んだのだとしたら、日本の歴史も違った形になっていた可能性はありますかね。
必然と思える時代の流れも、必ずしも流れに沿っていくばかりではなく、逆流する事もあるというサンプルとして平家滅亡、源氏の勝利があるという視点で見れば、それはそれで現在にも当てはまる事として参考になりそうですかね。
第1章 教科書にはない日宋貿易の真相
第1節 「貿易で巨万の富を得た」を素直に信じるのは子供だけ
第2節 平忠盛、巨万の富のカラクリ
第3章 清盛の「貿易革命」
第4章 貿易の成功者
第2章 日本経済史最大のミステリー、「宋銭」普及の謎
第1節 「宋銭」普及の謎
第2節 宋銭普及のよくある通説1・2・3
補 論 宋銭普及はダラライゼーションにはならない?
第3節 古代貨幣はなぜ廃れたか
第4節 銭をつぶせば救われる!?「末法思想」がすべての始まり
第5節 宋銭普及の謎 すべての真相解明へ
第3章 平家滅亡の真犯人、そして清盛の「失敗」
第1節 平家を滅ぼしたのは源氏ではない・・・・誰だ?
第2節 謎の現象「銭の病」
第3節 平家が見た地獄
第4章 経営者・平清盛
第1節 伊勢 強みを伸ばして活かしきる経営
第2節 博多 経営者のセンスが問われる地盤の決断
第3節 薩摩 将来のリスクでライバルを峻別
第4節 神戸 前例にとらわれない発想で危機に立ち向かう
平氏にあらずば人にあらずという言葉や、平家物語の有名な1節、驕れるものも久しからず、また源氏に平家が敗れたのは、武士が公家化した影響という扱いの強固なイメージから、平家の栄華というのは、長期にわたった物という錯覚を起こしていたのですが、実は平家が驕っていられた期間というのは、最近驕れるものも久しからずとばかりに滅亡した民主党政権よりも短期間だったという事に驚いたというか、年号を覚えるのが苦手で、歴史の期間という概念が希薄だったからというか、単に知識量が圧倒的に不足していたからというか、複合的なものなんですが、イメージによる勘違いってあるものなんだなと。
驕れるものという意味で、どうしても藤原氏の栄華とイメージを被らせていたんですが、規模として全く違うにもほどがありますね(苦笑)
平家物語のイメージが強すぎて、どうしても平家は没落していく様の印象が強く、しかもそれが武士のくせに公家のような軟弱者になったからという、自業自得的に扱われてしまっているので、どうしてもそれで話を済ましてしまいたくなってしまうのですが、それこそ私が勘違いした藤原氏のように、長期間盛者であり続けるのならば、必衰への流れになる事の説明で済ませる事も簡単なのですが、平家の場合、それこそ清盛が盛者へとなりあがり、清盛が一度隠居したあと、実権を譲った長男の重盛が死去して、再び権力の座に復帰する事になっている間に、平家滅亡へのストーリーがガッツリと始まってしまうという短期間にもほどがあるものなんですね。
武士なのに公家化したから滅亡と説明するには、一族郎党が一瞬にして大幅に劣化するという事が起きないと説明がつかない。
少なくとも当時は選挙じゃないので、民主党のように一瞬で信用を失って滅亡という事も起きる事は考えにくい。
という事で、平家というか清盛は、何で短期間で盛者必衰になったかというのを、経済の観点で考えてみようというのが本著ですね。
清盛が盛者となるためにやった事となぜそれが失敗したかという成功と失敗を分析するわけになるのですが、かなりザックリと見ると清盛がやった事は、日本を重農主義から重商主義へと転換し、その成果を出したという事ですね。
日宋貿易と宋銭の普及という、物々交換から貨幣経済への転換、日本はこれよりも過去に貨幣経済への転換を図った事はあるものの、自然消滅になっていたのを、宋銭というものを利用して貨幣経済を普及したという事。
貨幣経済は、今の時代では当たり前に通用していますが、貨幣という概念が無いと成り立たないものであり、その概念の普及だけではなく、宋銭が銅銭であった事を上手く利用して普及させたあたり、貨幣の代わりに、米などを中心とした交換経済の性格も利用していて面白い視点で流通させたなと感心せざるを得ないですね。
普通、近代社会は重農主義から重商主義という流れは歴史の必然というように、一度商業の概念が流布されてしまうと、農業の価値が相対的に低くなっていくものなのですが、平家が貨幣経済や貿易を中心とした重商主義に切り替えて、日本全体のシステム転換に成功しようとしながら、歴史の流れに逆らうかのように、源氏を中心とした、一所懸命な重農主義が平家を倒したという事になったという視点で見ると、非常に面白いものがありますね。
平家が敵に回したのは、貨幣経済に切り替える事によって、従来の米などの交換経済でこそ儲けを出していた勢力。
そして、貨 幣経済が未熟さもあり、米の不作によるインフレ対策が行えなかったという事、それにより盛者であったはずが、アドバンテージを全て失い一瞬にして栄華が途絶えてしまったと。
そういう視点で平家の滅亡というものを見直すと、日本は歴史上において価値観の転換に失敗してしまったのではないか?と思えなくはないですね。
一所懸命という土地神話や江戸時代まで綿々と続く年貢米という税金ならぬ税米を基本とした経済構造。
土地にしがみつくというと、やや見苦しい感じですが、何かあるとすぐにその土地から逃げ出すよりも、地元密着型の生活様式の方が、土着文化という意味でも私は評価したいのですが、源氏が平家を倒した事によって、必要以上に重農主義の意識が根付いてしまい、歴史の流れを一度止めてしまった事になるのかなと思わされましたね。
平家が滅ぶにしろ、タイミングとしては貨幣経済がしっかりと根付いた後に滅んだのだとしたら、日本の歴史も違った形になっていた可能性はありますかね。
必然と思える時代の流れも、必ずしも流れに沿っていくばかりではなく、逆流する事もあるというサンプルとして平家滅亡、源氏の勝利があるという視点で見れば、それはそれで現在にも当てはまる事として参考になりそうですかね。
第1章 教科書にはない日宋貿易の真相
第1節 「貿易で巨万の富を得た」を素直に信じるのは子供だけ
第2節 平忠盛、巨万の富のカラクリ
第3章 清盛の「貿易革命」
第4章 貿易の成功者
第2章 日本経済史最大のミステリー、「宋銭」普及の謎
第1節 「宋銭」普及の謎
第2節 宋銭普及のよくある通説1・2・3
補 論 宋銭普及はダラライゼーションにはならない?
第3節 古代貨幣はなぜ廃れたか
第4節 銭をつぶせば救われる!?「末法思想」がすべての始まり
第5節 宋銭普及の謎 すべての真相解明へ
第3章 平家滅亡の真犯人、そして清盛の「失敗」
第1節 平家を滅ぼしたのは源氏ではない・・・・誰だ?
第2節 謎の現象「銭の病」
第3節 平家が見た地獄
第4章 経営者・平清盛
第1節 伊勢 強みを伸ばして活かしきる経営
第2節 博多 経営者のセンスが問われる地盤の決断
第3節 薩摩 将来のリスクでライバルを峻別
第4節 神戸 前例にとらわれない発想で危機に立ち向かう
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