今日の読書 さっさと不況を終わらせろ/ポール・クルーグマン
ノーベル経済学賞は、理系のノーベル賞とは違い、人によっては、その理論によって、むしろ社会全体がガタガタになったりする事もあるので、ノーベル賞の肩書だけで信頼性が高いかどうかは保証されないものですが(というか、理系分野以外は客観性が薄い者ですし)とりあえず、クルーグマンは私がよく著書を読む経済学者の1人です。
基本的に、ケンジアンの流れをくむ人ですので、分析対象は不況からみのもの、今回は自分の国だからとアメリカの不況についてガッツリと扱い、同時に世界的な不況としてアメリカの不況とヨーロッパの不況の違いがはっきりしているので、ヨーロッパで起きている問題も補足説明という扱いになりますね。
かつては、日本の不況についても分析していたりしましたが、今回日本についての問題点というよりは、むしろ日本の長期不況を分析した結果、巷間でいわれている事を批判するために日本を引き合いに出していますね。
日本については、デフレ不況に陥る前から、インフレターゲット論をクルーグマン=インフレターゲットと覚えておけば良いんでしょと思うくらい使っていましたが、今回はインフレターゲットという言葉はほとんど使わず、財政赤字とインフレに対する一般的なイメージによる懸念を、どうやれば払拭できるか?という所に力点をおいていますね。
そういう意味では日本が金利を下げまくっても、一向に需要が喚起されない流動性の罠に陥って事を例にあげて、アメリカも有効需要をいかに引き上げるか、そのためには財政赤字を気にして緊縮財政を作り出す事がいかに将来的な害悪を引き起こすかという事を、強調しまくります。
緊縮財政によって、失業率を高めると、失業そのものによって多くの人の将来を奪うと、いわゆる市場原理主義であるとか、失業者は自分の能力が問題なんだということばかりを強調する人の無責任さ、欲を言わなければ何か仕事はあるという事を連呼する奴は、じゃあそれを言うなら、仕事を斡旋して見ろと、本当に探せばあるのならば、お前でも斡旋して証明してみろと、喧嘩をうるような論調でまとめているあたりは、乱暴な正論ではありますし、クルーグマンらしい喧嘩の売り方だなぁと。
アメリカの問題を見て、日本にそのまま日本に置き換える事はできませんが、アメリカの失敗を学ぶ事、共通点を知る事はできるわけで、財政赤字の問題では、アメリカならば不況の今財政赤字を気にして緊縮財政をする必要が無く、それが可能なのは自国通貨で借金ができるアメリカ、日本、イギリスだけが持っているアドバンテージであり、国家破綻にはならないと、日本の巨大な財政赤字や、格付け会社の恣意的な評価を例に出していたのは、面白いというか、この部分は日本の政治家は目を通しておいた方が良いかなと。
少なくとも、不況期の支出削減は日米英ならばマイナスにしかならないと。
ユーロに関しては、統一通貨にしてしまった問題点、国ごとの政策ができなくなっているというのが問題という事につきるわけですしね。
これが書かれているのは、日本は不況期に誇らしげに緊縮財政を表看板にだして無駄を削減すれば全てが上手くいくという政権だったわけですが、それで不況感を加速させた理由をそのまま説明できるなと思ったり。
まぁ実質無駄を削っていないで、無駄金を敵国に送り込んだ政権とも言えますが、それはまた別の話という事で。
有効需要を喚起したり、拡張的な雇用創出こそが不況期において重要な事は、まあ理論的には間違いないと思ったりするわけですが、どうしても引っかかるのは、その金の使い方なんですよね。
外国人にばら撒くという狂気は横においておけば、一部限られた人間にだけ恩恵が行くような予算配分になる危険性は避けられないですし、日本はアメリカと違い、かつて高度経済成長時代という世界史上最も成功した部類のケインズ政策とも言えるものをやっただけに、悪い意味で成功例に囚われる危険性があるのがなぁと。
そして、改めて日本の政治家は経済政策という意味では、いわゆる左が緊縮財政を声高に叫んでいて、アメリカの事例と比較する時に、ややこしい(苦笑)
はじめに:これからどうする?
第1章 事態はこんなにひどい
職が無い
人生がめちゃめちゃに
ドルにセント
将来を失う
外国での苦痛
絶望の政治
あきらめないで
第2章 不況の経済学
すべては需要が問題
流動性の罠
構造問題じゃないの?
大量資質で繁栄を実現
第3章 ミンスキーの瞬間
みんながミンスキーを読みなおした夜
ミンスキーの瞬間
鏡の国の経済学
第4章 たがの外れた銀行家たち
解放された銀行家たち
大嘘
あまりよくない時代
第5章 第二の金ぴか時代
なぜ金持ちは(一層)金持ちになったのか
格差と危機
エリートとダメな政策の政治経済学
第6章 暗黒時代の経済学
ケインズ恐怖症
特筆すべき珍しい例外
ひそひそ声とくすくす笑い
クズ経済学
第7章 不適切な対応の解剖
危機来襲
不十分な景気刺激予算
その理由とは
住宅の大失敗
残された道はある
第8章 でも財政赤字はどうなるの?
目に見えない国債自警団
金利とは何だろうか
負債の重荷はどうなんだ?
短期の財政赤字ばかり注目するのは愚か
負債が起こした問題をふさいで解決できるの?
何故財政赤字ばかりにこだわるのか?
第9章 インフレ:見せかけの脅威
ジンバブエ/ワイマールの話
お金、需要、インフレ(またはその不在)
そもそも今のインフレはどのくらい?
もっと高いインフレを!
第10章 ユーロの黄昏
(統一)通貨の困った所
ユーロバブル
ヨーロッパ大妄想
ヨーロッパの本質的な問題
ユーロを救う
第11章 緊縮論者
恐怖という要因
安心感の妖精
イギリスの実験
経済停滞の御業
その理由
第12章 何が必要か
状況はちっともよくない
今支出して支払いは後
FRB
住宅
それ以外
第13章 この不況を終わらせよう!
成功に勝る成功なし
政治的な可能性
道徳的な使命
後記:政府支出については実際のところ何がわかっているの?
相関のこまったところ
災害、銃、お金
基本的に、ケンジアンの流れをくむ人ですので、分析対象は不況からみのもの、今回は自分の国だからとアメリカの不況についてガッツリと扱い、同時に世界的な不況としてアメリカの不況とヨーロッパの不況の違いがはっきりしているので、ヨーロッパで起きている問題も補足説明という扱いになりますね。
かつては、日本の不況についても分析していたりしましたが、今回日本についての問題点というよりは、むしろ日本の長期不況を分析した結果、巷間でいわれている事を批判するために日本を引き合いに出していますね。
日本については、デフレ不況に陥る前から、インフレターゲット論をクルーグマン=インフレターゲットと覚えておけば良いんでしょと思うくらい使っていましたが、今回はインフレターゲットという言葉はほとんど使わず、財政赤字とインフレに対する一般的なイメージによる懸念を、どうやれば払拭できるか?という所に力点をおいていますね。
そういう意味では日本が金利を下げまくっても、一向に需要が喚起されない流動性の罠に陥って事を例にあげて、アメリカも有効需要をいかに引き上げるか、そのためには財政赤字を気にして緊縮財政を作り出す事がいかに将来的な害悪を引き起こすかという事を、強調しまくります。
緊縮財政によって、失業率を高めると、失業そのものによって多くの人の将来を奪うと、いわゆる市場原理主義であるとか、失業者は自分の能力が問題なんだということばかりを強調する人の無責任さ、欲を言わなければ何か仕事はあるという事を連呼する奴は、じゃあそれを言うなら、仕事を斡旋して見ろと、本当に探せばあるのならば、お前でも斡旋して証明してみろと、喧嘩をうるような論調でまとめているあたりは、乱暴な正論ではありますし、クルーグマンらしい喧嘩の売り方だなぁと。
アメリカの問題を見て、日本にそのまま日本に置き換える事はできませんが、アメリカの失敗を学ぶ事、共通点を知る事はできるわけで、財政赤字の問題では、アメリカならば不況の今財政赤字を気にして緊縮財政をする必要が無く、それが可能なのは自国通貨で借金ができるアメリカ、日本、イギリスだけが持っているアドバンテージであり、国家破綻にはならないと、日本の巨大な財政赤字や、格付け会社の恣意的な評価を例に出していたのは、面白いというか、この部分は日本の政治家は目を通しておいた方が良いかなと。
少なくとも、不況期の支出削減は日米英ならばマイナスにしかならないと。
ユーロに関しては、統一通貨にしてしまった問題点、国ごとの政策ができなくなっているというのが問題という事につきるわけですしね。
これが書かれているのは、日本は不況期に誇らしげに緊縮財政を表看板にだして無駄を削減すれば全てが上手くいくという政権だったわけですが、それで不況感を加速させた理由をそのまま説明できるなと思ったり。
まぁ実質無駄を削っていないで、無駄金を敵国に送り込んだ政権とも言えますが、それはまた別の話という事で。
有効需要を喚起したり、拡張的な雇用創出こそが不況期において重要な事は、まあ理論的には間違いないと思ったりするわけですが、どうしても引っかかるのは、その金の使い方なんですよね。
外国人にばら撒くという狂気は横においておけば、一部限られた人間にだけ恩恵が行くような予算配分になる危険性は避けられないですし、日本はアメリカと違い、かつて高度経済成長時代という世界史上最も成功した部類のケインズ政策とも言えるものをやっただけに、悪い意味で成功例に囚われる危険性があるのがなぁと。
そして、改めて日本の政治家は経済政策という意味では、いわゆる左が緊縮財政を声高に叫んでいて、アメリカの事例と比較する時に、ややこしい(苦笑)
はじめに:これからどうする?
第1章 事態はこんなにひどい
職が無い
人生がめちゃめちゃに
ドルにセント
将来を失う
外国での苦痛
絶望の政治
あきらめないで
第2章 不況の経済学
すべては需要が問題
流動性の罠
構造問題じゃないの?
大量資質で繁栄を実現
第3章 ミンスキーの瞬間
みんながミンスキーを読みなおした夜
ミンスキーの瞬間
鏡の国の経済学
第4章 たがの外れた銀行家たち
解放された銀行家たち
大嘘
あまりよくない時代
第5章 第二の金ぴか時代
なぜ金持ちは(一層)金持ちになったのか
格差と危機
エリートとダメな政策の政治経済学
第6章 暗黒時代の経済学
ケインズ恐怖症
特筆すべき珍しい例外
ひそひそ声とくすくす笑い
クズ経済学
第7章 不適切な対応の解剖
危機来襲
不十分な景気刺激予算
その理由とは
住宅の大失敗
残された道はある
第8章 でも財政赤字はどうなるの?
目に見えない国債自警団
金利とは何だろうか
負債の重荷はどうなんだ?
短期の財政赤字ばかり注目するのは愚か
負債が起こした問題をふさいで解決できるの?
何故財政赤字ばかりにこだわるのか?
第9章 インフレ:見せかけの脅威
ジンバブエ/ワイマールの話
お金、需要、インフレ(またはその不在)
そもそも今のインフレはどのくらい?
もっと高いインフレを!
第10章 ユーロの黄昏
(統一)通貨の困った所
ユーロバブル
ヨーロッパ大妄想
ヨーロッパの本質的な問題
ユーロを救う
第11章 緊縮論者
恐怖という要因
安心感の妖精
イギリスの実験
経済停滞の御業
その理由
第12章 何が必要か
状況はちっともよくない
今支出して支払いは後
FRB
住宅
それ以外
第13章 この不況を終わらせよう!
成功に勝る成功なし
政治的な可能性
道徳的な使命
後記:政府支出については実際のところ何がわかっているの?
相関のこまったところ
災害、銃、お金
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