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今日の読書 資本主義以降の世界/中谷巌

『資本主義はなぜ自壊したのか』を発表して、それまでアメリカ型経済システムの幻想から脱し、資本主義の内包する問題点を洗い出すと共に、日本はそれを受けてどうするべきかという方向性に持って行くべきかという事を扱う事をメインにした、続編的なものになります。

中谷巌本人も認めているように、いわゆる近代経済学を学びにアメリカに留学した経済学者は、それが戦後直後に近ければ近いほど、自由の国アメリカ繁栄の国アメリカというものを若い時期に見せつけられ、魅了され、敗戦国日本が目指すべきものであると、すっかり洗脳状態にまでなってしまったと。

しかし、21世紀ともなると資本主義の問題点の方が浮き彫りになりすぎていて、かといって19世紀末に現れた資本主義の次の段階として登場した共産主義は、先に自壊してしまう体たらくで、資本主義のに問題点はあるものの、代わるものなしで生きながらえてきた事で、むしろ問題点の方だけが力を強める結果になっていると。

ということで、じゃあ改めて資本主義とは何ぞやと、その歴史的背景、成立過程、思想哲学宗教的背景をおさらいして、西洋近代主義としての資本主義という物に対して、日本はどう向き合い、どう立ち向かい、どう翻弄されてきたのかというものを洗い出し。

そして、西洋近代主義、いわゆる一神教のキリスト教的価値観をベースとした社会システムと、多神教、土着型、ほぼ単一民族、信用ベースになりたっている日本型社会とを対比し、対比した上で、その文化的土着思考が破壊された事の問題点をあげて。

その上で、今後日本はどうするべきか、世界的にどう変わるように持って行くかというものになりますね。

基本的には、私は知識として一応持っている物ですので、理解しやすい反面、目新しさは感じないというのが感想でしょうか。

それは、私がその手の文献を読んでいるからとか、それこそ著者の『資本主義はなぜ自壊したのか』にも被る部分が多々あるからというものもあるでしょう。

そして、突飛な極論を排している分、インパクトを与えるものが少ないというのもあるかもしれないですね。

そして、これは2011年に書かれたものであり、日本は民主党政権下であり、円高放置や対中外交の失敗の放置など、国内に明るい兆しを感じられないからこそのものがあったりもします。(自民党政権下の現在も、まだまだ復調を感じきるまでにはなっていませんけれどもね、少なくとも超円高に関しては放置しなくなった事は大きいですが)

経済という事に力点をおくと、いわゆるアメリカ型の新自由主義、アメリカ型の強引なグローバリズムに対する問題点に関してはかなり強く書かれていますね。

アメリカの経済学者が書くものと最大の違いは、日本人視点としての一神教批判というものが入ってくる所であり、勝ち負けの明確化や自然に対する支配的な視点、こういった物に対するアプローチが出来る事は、日本人の宗教観や哲学思考だからこそのものであるかなとは思えますね。

本著のタイトルからすると、現在の行き詰った資本主義に対しての提言というものに力点が入りそうな気がするのですが、それを期待して読む人には物足りなさを感じるかもしれないですね。

日本国内に対しては、アメリカゴリ押しのアメリカ型システムから、バブル崩壊前の信用ベースで、終身雇用などを含む長期視点ベースへの回帰という事になります。

自虐史観から脱し、日本らしさ、日本人らしさを取り戻し、グローバルだからこそ、ローカルとしての独自性を取り戻す事が重要、西洋近代主義は西洋だからこそ起こり得たものであり、文化から何から違う日本人が全部丸のみした所で上手くはいかないという、ある意味当たり前のものになります。

ただ日本国内だけで話が済む問題ならば、それで何とかなるのですが、これが事世界単位でどうするべきかとなると、勝った者勝ちというアメリカ型の価値観が完全に復されないと、どうしようもない事ですし、一神教をベースにした人の価値観を根底から覆さないといけないというものですし、改革できるかどうかというと難しいだろうなぁと。

グローバル経済、特にグローバル金融というものは、国家の枠組みを超えて、あるいは破壊しながら突き進み、資本主義の内包する問題点を一気に加速させたと思います。

そうなってしまった現在、日本国内だけで現在の価値観から脱却しても、他国が変わらないと屁の役にも立たなくなってしまっているしなぁと。

ヨーロッパは、最近フランスなどを中心に移民排除の動きが強まっていますが、土着性の回復というのが、悪しきグローバル経済の脱却の1つの鍵になるのではないかと、個人的には思っていたりはします。

世界が不況になればなるほど、助け合いできる範囲、助け合いする事が我慢できる範囲というのは狭くなり、偏狭なナショナリズムが正しいとは思いませんが、郷に入って郷に従わない利己的な個人主義者が増えたりすると、不況だからお互いに助け合ってという精神は無理になるわけですしね。

移民というものを別にすれば、ユーロ圏の失敗は確実にそれぞれの国の立場が建前を通せずに、剥き出しの本音が出てくると思うんですよね、そうなると寛容の範囲を狭くとった、極端な寛容と被寛容が表出化することが、グローバル経済の1つの終着点になりそうだと。

問題は、土着文化や歴史が浅いアメリカが、力を持ち過ぎている事であり、日本がどう頑張った所で、アメリカの価値観を変える事は出来なそうで、資本主義の悪しき部分を修正できなそうな事なんですよね。

相対的にアメリカも力が弱まっていますし、それこそ最近デフォルト騒動があったりしましたし、アメリカ自身が方向転換できるきっかけは出てはきているんですが・・・

同時に、日本にとって軍事的脅威の中国についても本書では触れられていますが、アメリカに対する問題点と比べると、中国に対してはツッコミが弱いなぁと思えたり。

結局、問題点は山積み、解決策の方向性はある程度考えられるけれども、実現するには、日本だけならばともかく、世界を巻き込んでいる以上難しいよねというのが結論なのかなぁと。

第1章 資本主義はやはり「自壊」したのか
第2章 資本主義はいかにして発展し、衰退したのか
第3章 「失われた二〇年」で日本はなにを失ったのか
第4章 中国の“資本主義”をどう理解すべきか
第5章 最高の社会資本としての「信頼」
第6章 戦略的・脱原発政策のすすめ
第8章 日本は「文明の転換」を主導できるか
資本主義以後の世界―日本は「文明の転換」を主導できるか資本主義以後の世界―日本は「文明の転換」を主導できるか
(2012/01)
中谷 巌

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