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今日の読書 迷子の王様/垣根涼介

リストラ請負人を主人公とした、君たちに明日はないのシリーズ5作目にして完結編。

初期の2冊は基本的には、企業が真っ先に首切りをしたいが、法律の問題上強引に首切りができない、無能であったり、人間的に問題があったりする人物を害虫処理よろしくしっかりと追いつめて解雇に持ち込んでいくというものであったりしました。

実際に、日本が長い長い不景気に陥りリストラという名の首切りをしない事には企業が立ちいかなくなり、そうなればそうなるほど、有能な人から泥船から逃げ出すように去り、保身にだけ長けていて残って欲しくない人ほど残るというのは傾向として出やすいものであったわけで、初期の傾向も分かりやすいですし、そういったタイプの話に爽快感もあった事は確かでした。

しかし、不況が恒常的なものになってしまい、問題のある人物だけを首切りすればいいという時代を越えてしまうと、リストラ=解雇といういつの間にか狭い意味だけの言葉になってしまったものから、本来もう1つ踏み込んだ再編成を解雇される側のアフターケアまで踏み込む流れに3作目でなっていき、前作ではついにむしろ会社に残る方がマイナスだよねというような優秀な人材の生き様にまで流れて、時代の変化そのものを捕らえるような作品になっていきました。

最終作という事で、時代の流れによって好むも好まざるもなく、それまで当たり前と思っていた常識が崩れてしまっている世の中になってしまい、ある程度社会構造そのものが変化してきたという事で、そういった時代背景に沿って会社で働くというものを軸に、その中で重要視する事は何か、金かやりがいか、好きな事か、決断するのは結局自分であるという流れにし、また、東京オリンピック招致が決まり、賛否両論ある中、現政権の脱デフレ路線が有効求人倍率を良化させてきているのも踏まえ、リストラ屋という存在そのものもまた時代の変化から必要とされなくなってきているという所に落ちついていきます。

長い事シリーズをやっていて、それぞれの時代の流れを使った作品だからこそ、こういう終着点になったんだなぁと感慨深いものになりましたね。

正直、脱デフレが手段と目的を履き違えてしまうとスタグフレーションという最悪の結果を導き出す事もあり得ますし、またグローバル経済を避けて通るわけにはいかなくなっているという事は、資本主義の暴力的な一面が剥き出しになって襲ってくる可能性が高く、現在のアメリカの貧富の格差と格差固定という問題と似通ったものに日本も巻き込まれてしまう事すら示唆されてもいるんですよね。

日本は民主主義国家ではありますが、グローバル社会の中の外交問題になると、日本国民の声とか関係なく暴力的に飲み込まれていくものだからなぁと、やや悲観的に考えたりはしますが、果たして暴力的なグローバル社会は絶対に歯止めが必要だという理性的な着地点にたどり着けるのかとなると、難しいだろうねと示唆させられるラストかなと考えさせられました。

悲観的なラストというわけではないですし、希望を感じると言えば希望を感じさせるラストではあるんでうすけれども、所詮主人公はなんだかんだと有能な人物だからこそというのがありますから、希望を感じると言うだけですから。
迷子の王様: 君たちに明日はない5迷子の王様: 君たちに明日はない5
(2014/05/22)
垣根 涼介

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テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

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