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今日の読書 エウレカの確率/石川智健

経済学捜査員伏見真守という、行動経済学の理論を捜査に応用する学者捜査員が事件の謎解きをするミステリーになります。

ミステリーの探偵役がいわゆる警察の捜査の知識ではなく、アカデミズムの知識を利用して別角度から事件を解決するというものは、古くからあるものであったりしますが、そういった者の中に経済学が使われる事というのは、少なくとも私はほとんど見た覚えがありません。

いわゆる理系ミステリーが華やかになった時に、理系の知識を使っていろいろと計算してみて事件を解決するというものは沢山生みだされましたが、計算するという行動が絡んでくる学問でもある経済学というのはスルーされてきたというか、基本的に使い道が無かったというのが実情でしょうか。

経済学というものそのものよりも、経済犯罪そのものを題材にして学問的な知識よりも金の流れの不正とかそういう事にしか結びつきようが無かったというのもあるわけですし。

そんなか、経済学の分野でも比較的新しい行動経済学という学問分野が一般的にも知られるようになってきたという事で、行動を分析するという事が、事件捜査と相性が良いという事でようやく使われるようになったと。

まぁ行動経済学って、経済心理学ってひっくり返してもほぼ同じ事につながるので、ようは心理分析ですから、そりゃ相性が良くて当たり前ですね。

行動経済学であると断りながらも経済学という所に、ある意味はったりをきかせての話の作り方は面白いですし、プロファイルと比較しながら、得意分野と苦手分野、専門分野の違いという事で対比させながら、競わせながらの捜査の流れというのも、刑事と探偵の反発というミステリーの定番というだけではなく、そこにベタな刑事が嫌がるプロファイルと更に何で捜査に加わるのか分からない扱いされる行動経済学捜査という、対立構造を上手く利用して話を進め、対立構造にする事によって、この経済学捜査員の立ち位置を上手く説明する事ができたなと思えましたね。

今後シリーズ化するのかどうか分かりませんが、仮にシリーズ化していくとするのならば、行動経済学を捜査に使うというのは、こういう事です!と分かりやすく本作で提示する事に成功したからこそシリーズ化につながったと言えるくらい上手く分かりやすくまとめたなと思えましたね。

ちょっと合理的というのを強調し過ぎているかなと思うのは、行動経済学そのものは世の中合理的な人間ばかりではないし、合理的ではない行動をするのが当たり前なのに、全部が全部合理的に行動するという前提で理論構築ばかりが進んでしまって、現実と乖離してしまってい伝統的な経済学の問題点を是正する目的で作られている部分があるからなんですが、まぁ作中でも合理的な行動しかしない人間なんていないと語られているから、構わないですかね。
エウレカの確率 経済学捜査員 伏見真守エウレカの確率 経済学捜査員 伏見真守
(2014/03/14)
石川 智健

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テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

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