今日の読書 世界を戦争に導くグローバリズム/中野剛志

アメリカの凋落、これを多かれ少なかれ意識した事がある人は多いと思います。

それについてどうとらえるかは、それぞれの人の物の見方の力点の違いであったりしますが、少なくとも現在のアメリカはこの世の春を謳歌して、アメリカが世界秩序だ!という立場から明らかに後退しているというのは実感できるのではないでしょうか。

第二次世界大戦から世界の覇権国家となり、冷戦構造の崩壊により単独のスーパーパワーたりえたアメリカは現在は、覇権国という立場に十分に対応できるだけの力を失いつつあります。

そうなったアメリカが覇権国家という立場からどのように動こうとしているかを軸に、アメリカが覇権国家として描いてきた世界像と、現在の世界秩序との乖離は何故起こって、その都度アメリカがとってきた対応策がどのように影響し、今後アメリカはどう動いて世界秩序はどう影響を受けるかというのを、国際政治経済学の手法で分析しましょうというのが本書になります。

アメリカの描く理想主義と現実主義、それぞれの字面だけ見ると印象が違いますが、理想主義というのは、基本的にアメリカの社会制度は最高だから世界的に流布しよう、そしてそれを受け入れないものは悪!という非寛容な覇権主義。

逆に現実主義というのは、それぞれの国家は伝統も宗教も違うものだから、普遍的に分かりあえる価値観なんていうのは限界があり、互いの干渉は最低限度にして、それを踏まえて何とかやって行きましょうというもの。

直近のアメリカ大統領を見ると、ブッシュが理想主義でオバマが現実主義というもの。

オバマのチェンジ!というのは、実行できたかどうかを横におけば理想主義から現実主義への転換というもの。

これを踏まえて、アメリカ的価値観によるアメリカ覇権主義の限界から、現実主義に転換して覇権国家としての義務から撤退しようとしている上で、それで引き起こされているカオスという現実。

アメリカという大国がやってきた覇権国家だからこそ許されてきた横暴とアメリカ主導の秩序、それを撤回するという事の困難と混乱、理想から現実への転換は簡単に切り替えらるものではないという事と、理想と現実の埋めがたいギャップと、それぞれの国家がそれぞれの思惑で動くので、混乱が混乱を引き起こし、問題解決に取り組もうとしても、1つのミスで取り返しのつかない事に簡単になっているし、現在のアメリカが描くシナリオが思うように動かせなくなっているという事などなど。

これを踏まえて、アメリカが覇権国家であるという前提に国家運営を行っている日本が直面する問題、特にアメリカの弱体化とリンクして膨張している中国の問題と、アメリカは中国と正面から事を構えない、わかりやすい現実主義というか、ある意味アメリカの掲げる正義を引っ込めた態度などの困難。

どちらかというと悲観主義にならざるを得ない分析続きになりますが、それだけ現在の世界情勢が、戦乱状況であるという事を示していると。

覇権国家の交代が実際に起こるというよりも、次の覇権国家候補がいない事による混乱の世の中、日本も本気で自衛できる国にならないとヤバイよというものですかね。

個人的に期待しているのは中国国内で分裂騒動になる内乱がおきる事なんですが、その可能性はあまり触れられていないのが、余計に悲観論っぽく感じます。


はじめに 日本が戦争に巻き込まれる日
第1章 「危機の二十年」再び グローバリズムと戦争
      覇権国アメリカの凋落と世界秩序の崩壊
      アメリカ一極主義とグローバリズムのポスト冷戦体制
      グローバル化の加速とイラク戦争で頓挫したアメリカ一極主義
      グローバル覇権無き多極化時代へ
      アメリカが描く中国台頭後のシナリオ
      アメリカ外交の二大潮流 現実主義と理想主義
      パワーを巡る逃走を直視する理想主義者
      「危機の二十年」 選間期にも支配的だった理想主義
      戦間期のアメリカでなぜ理想主義が興隆したか
      経済自由主義の教義が理想主義に転化した
      思想主義の非現実性ととグローバル化への楽観が世界大戦の原因
      理想主義の「原則」と現実主義の「目的」
      政治の本質を忘れて繰り返される危機
      安倍政権の価値観外交は理想主義
      理想主義ナショナリズムは不整合なのか
      日米外交理念の断層がもたらす悲劇

第2章 アメリカ、二つの戦略構想 「リベラル・リヴァイアサン」か「オフショア・バランシング」か
      理想主義vs現実主義
      アメリカはなぜ西半球の外でも覇権を追及したのか
      アメリカをグローバルな覇権へと駆り立てた「門戸開放」政策
      日米同盟は「ビンの蓋」
      現実主義者の提唱する「オフショア・バランシング」戦略
      理想主義者によるポスト「ポスト冷戦」戦略
      リベラルな国際秩序は覇権国家なしでも持続する?
      核の抑止力が世界をリベラルにした?
      「民主的平和の理論」の大いなる誤り
      民主化の過程こそ戦争の危険性が高い
      経済の相互依存関係が平和をもたらす?
      グローバル化が国際秩序を不安定にする
      グローバル化・民主主義・国民国家のトリレンマ
      「リベラル・リヴァイアサン」構想の不可能性
      東アジアの緊張とアメリカの「オフショア・バランシング」戦略
      東アジアで地域覇権を目指す中国
      グローバル覇権のコストに倦み疲れたアメリカ国民

第3章 日米中の攻防
      「軍事力」「経済力」そして「意見を支配する力」
      「覇権安定理論」の不気味な予言
      覇権国家衰退期の三つの戦略
      派遣戦争を先延ばしするために
      アメリカの最大の懸念は米中の覇権戦争
      対中「共存戦略」と対日「同盟戦略」で板挟みになるアメリカ
      尖閣問題と日米安保条約
      日米同盟は「二重の封じ込め」
      歴史認識問題と「アジア・ビヴォット」戦略の矛盾
      日本の安全保障のディレンマ

第4章 中東の動乱
      「自由民主主義の守護神」という理想をあきらめるアメリカ
      理想主義は非寛容で好戦的
      外交の「民主化」が理想主義を生んだ
      価値多元的な国際社会をこのうにするウェストフィリアン・システム
      ウェストフィリアン・システムへの回帰を目指すオバマ
      中東戦略でつまずいたアメリカ
      理想主義の残滓がシリア情勢を泥沼化した
      溶解する主権国家
      中東での失敗がアジアにもたらすもの
      覇権国家の威信失墜と新興大国からの挑戦

第5章 ロシアの怒り
      アメリカの限界と世界同時多発危機
      ウクライナ危機をどう見るか
      NATOの東方拡大という愚策
      「理想主義の二十年」と外交能力の低下
      なぜ、経済統制は効果がないのか
      経済よりも象徴を優先する国家
      理想主義の欺瞞に怒るプーチン
      パワーの源泉たる「規範」を重く見たロシア
      制度を共有する「グロティウス的」国際社会
      アメリカ覇権の寿命を縮めるオーヴァー・ストレッチ
      踏みにじられる「グロティウス的」規範

第6章 覇権戦争
      ユーラシア大陸という壮大なチェス盤
      ロシアを無害化するために
      東アジア「紛争の火山」
      2012年の戦略ヴィジョン 「拡大西洋」と東アジアのバランシング
      プレジンスキーの誤算
      アジア協調体制に可能性はあるのか
      東アジアからの「撤退戦略」
      中国の経済停滞がもたらすリスク
      覇権戦争勃発の条件
      尖閣諸島のもつ本当の意味
      グローバリズムの過ちの果てに

おわりに パワー・ポリティクスの復活
世界を戦争に導くグローバリズム (集英社新書)世界を戦争に導くグローバリズム (集英社新書)
(2014/09/17)
中野 剛志

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