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今日の読書 百姓から見た戦国大名/黒田基樹

基本的に歴史というのは、その時代の統治者を視点にして語られているものになり、日本の歴史区分でも基本的には幕府所在地である、鎌倉時代や室町時代、江戸時代など時の統治者、権力者が誰であるかという事を前提に語られて行きます。

もちろん、時の権力者がその時代の風潮を決めている部分は当然ありますし、それがその時代の特色であるという事そのものは間違いでは無いのでしょうが、それだけでは歴史は語る事はできないよというのが、本書の主張になります。

上からの記録だけではなく、一般庶民視点もあってこそというのは、現代に置き換えれば理解しやすいものであり、為政者の感覚と一般人の感覚に乖離がある事なんて当たり前と言えば当たり前ですし、今現在どんな支持政党を持つか、どんなイデオロギーの影響を受けていようが、どんな職業についていようが、どんな経済的基盤があろうとか関係なく思い当たる事はあるのが常識であると思います。

仮に違和感を微塵も感じない人は、為政者サイドなりそういう仕事に付いている側じゃないかとか。

現在の価値観からすると、近代以前は支配者と被支配者というのは完全に固定されていて、絶対服従の形をとるかのようにイメージされている部分はあると思います。

もちろん、現在と比べればそう思える部分が強いにせよ、実際は事はそう簡単では無かったよというのを説明しているのが本書ですね。

いわゆる村社会というものが存在し、個人が尊重されるという価値観こそ現在のようにないものの、村は統治者に対して楯突く事も珍しい事ではなかったという事で、絶対に支配者と被支配者の単純な二項対立構造で全てを理解してはいけないよと。

そもそも、戦国時代が何故戦国の世となったかというと、室町幕府による秩序が崩壊したという理由だけではなく、飢饉が頻発して文字通り生きるか死ぬかという崖っぷちに追い込まれた状況で、そういった状況に対し世論は統治者に対して突き上げをしてくるし、それを上手く対処しないと統治者も見捨てられてしまうという関係性があり、食わせるためには近隣諸国から食料を奪って来なければならないというような所に追い込まれていた側面もあるという事。

今現在の価値観であれば、決して褒められる行動ではないですが、統治者は強者として近隣から力づくで奪い取ってでも民衆を食わせないと、統治者の資格がないという事になっていたと。

今現在の食料安定供給が出来ている時代ではなく、常に非常時だった時代という前提では統治者側と被統治者側の利害の一致というのはそういうものだという事ですね。

そう言った前提の下、村と統治者との関係性とはどういうものだったのかと説明されているのですが、例に出てくるものが北条氏が多めというあたり、北条家はいかに民衆視点で統治しているかというネタを最近散々読んでいたので、私が理解するのに大いに助かりました。

一番反応してしまったのは、河井文書から引用された北条氏照と武蔵由井領野蔦郷(東京都町田市)とのやり取りですかね。

野蔦って今の野津田、つまり我がFC町田ゼルビアの山奥にある聖地!

単なる山奥というだけではなく、戦国時代にはすでに記録に残るような村であったんだなぁという事ですね、たった一か所だけ出てくる地名に反応し過ぎですし、全体の流れから考えると些末すぎるものなのに反応するあたり、自分のローカル至上主義に呆れざるを得ないですねぇ。

プロローグ 代替わりと「世直し」
第1章   飢饉と戦争の時代
第2章   村の仕組みと戦争
第3章   地域国家の展開
第4章   大名と村が向き合う
第5章   戦国大名の構造改革
第6章   大名の裁判と領国の平和
エピローグ 戦争の時代の終わり

テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

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