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今日の読書 戦後リベラルの終焉 なぜ左翼は社会を変えられなかったのか/池田信夫

現在、マスメディアは日本の右傾化を盛んに憂慮するような方向性を喧伝している感じがします。

右翼も左翼も本来はスタンスの違いでしか無く、罵倒語では無いはずなのですが、どうにも右翼も左翼も罵倒語にしかなっていないと感じるのは私だけではないはずですし、本来右翼は保守という意味でしかなく、左翼は革新という意味でしか無いはずなのに現在の日本では右翼は軍国主義、左翼は売国主義とほぼ同義語で使われてしまっていて、単なるレッテルの貼り合いで使われてしまっていて全く持って非生産的であるなぁと思ったり。

マスメディアの右傾化憂慮を煽る姿勢というのは、厳密には右傾化というよりも左翼離れが正しいだろうというのは、特にどちらの極論にも汲みしていない人の感想だと思いますし、実際問題左翼の劣化、硬直化が主な理由だろうなぁと。

左翼にせよリベラルにせよ本来あるべきスタンスというのは、現在の社会は間違っているから大ナタふるって改革すべき!というものであると思います。

しかし、実際の日本の左翼であるとかリベラルと呼ばれる人がやっている事は何か?というと、憲法は護るべきものであるとか、日本は戦争をしてはいけないという70年前の価値観で70年前の日本政府に対する改革でおしまいになっている、左翼、リベラルの保守化硬直化でしかなくなってしまい、時代の変化に取り残されてしまった感が強くあると思います。

また左翼やリベラルと呼ばれる人が多かれ少なかれ影響を受けてしまったのが、マルクスという共産主義者であり、これもまた時代の遺物になってしまった思想であるというのも、改革派の保守化を生んでしまっているなぁと。

良くも悪くもマルクス主義というのは、資本主義の失敗点に着目し、最終目標が資本主義の全否定。

その全否定を証明するために資本家と労働者の二項対立構造という便利な物を使って説明したり、資本主義成立過程に影響を及ぼした歴史的背景として伝統や宗教の全否定と、とかく善悪二項対立が好きな思想に陥ってしまっているんですよね。

まぁ妥協というのは、あまり良い言葉ではありませんが、人間社会において現実問題理想と現実両方鑑みて何がしかの落とし所を探るというのが社会というものであって、その妥協という選択肢を排した二項対立構造っていうのは、根本的に無理が生じるのは当たり前なんですよね。

この二項対立構造の落とし穴として、特に反権力というものを振りかざす場合、悪の権力に対して正義の鉄槌を下すという名目を作りやすく、目的が正しければ手段が褒められた物でなくても正当化されるという所に陥ってしまう。

それこそ、テロリストの論理ですし、朝日新聞の大誤報というか捏造報道なんていうのもまた、目的が正しければ手段は正当化されるという罠に陥った証拠。

その手段が評価されなくなっているのが、マスメディアの情報伝達手段の独占化が崩れたネット社会というものであり、それ故に主に左方のマスメディアがネットに対して蛇蝎のごとく悪のレッテルを貼りたがる事なんだろうなぁと。

まぁ良くも悪くもネットは好き勝手であり、全否定も全肯定も無いものであるという大前提があるのですが、これもまた二項対立に持ち込みたがるんですよねぇ。

政治の世界もまたこの二項対立構造から抜け出せないまま来ているのが現在。

民主党政権があっさりと吹っ飛んだのも何でも反対する野党病が原因である事は明白ですし、自民党が優れていたのではなく55年体制の永遠の野党というスタンスから脱却するつもりはあったのかもしれないが、分かりやすい二項対立構造を作らないといけないという病的な強迫観念によって何でも反対した結果、実際にどういう社会構造を作りたいのか、そのビジョンがぶれまくったというか、自分達が野党時代に反対した物を与党になった瞬間に手のひら返さなくてはいけなくなってグダグダになっただけだと。

まぁこれは与党自民党が野党と関係なく自分たちで勝手に派閥政治によって節操無く政権交代してきた歴史があって、そのたびに野党が全部反対していると野党の中に矛盾が出てくるという、与党も野党も基本軸がぶれているだけの結果であり、軸がぶれながらもやりくりしてきた自民党の方がやりくりは出来るというだけの結果なんですけれどもね。

本書はリベラルや左翼批判という形になっていますが、だから現在の自民党を持ち上げるのかというとそういう類の物ではありません。

左翼マスメディアや学者に対する批判が多く、結局やっているのは感情論を煽っているだけだよねという所に落ち着きますかね。

理論よりも感情優先、正しく理論だっているけれども小難しい情報よりも、バカにも分かりやすくて事実関係よりも不安を煽る情報の方が目立って売れるという商業主義におぼれるマスメディア。

現実よりも理想を語り、実際の社会分析よりも自分の建てた仮説の方を正しいといして、それが現実と違っていたらば、現実の方がおかしいという評価をする学者。

そういった劣化した左翼リベラルに対する批判ですが、ようは利権を持ってしまって自己批判できない人々に堕ちた人々という事に落ちつきますかね、私の持論としてどれだけ正しい主義主張を持って始まった団体であろうとも、利権を持ったならばあまねくその団体は腐敗するというのがありますが、それが見事に当てはまっていると。

基本的にうなずけるものの多い主張でまとめられていますが、結論としてまとめ行く過程で、小沢一郎を持ち上げ過ぎているのがちょっと一体何だろう?と思ったりしましたね。

ちょっと蛇足感があり過ぎた、まぁ過去の小沢一郎幻想があるんでしょうし、与党も野党も結局大きな政府論じゃんという批判をするために、持ち上げたというのがあるんでしょうが、他に真っ当に持ち上げる人選はなかったのかなぁと(苦笑)


プロローグ 私が左翼だったころ
第1章   朝日新聞の挫折
第2章   「平和主義」のユートピア
第3章   メディアが日本を戦争に巻き込む
第4章   メディアが作った原発の恐怖
第5章   労働者の地獄への道は善意で舗装されている
第6章   進歩的文化人の劣化
第7章   「オール野党」になった政治
第8章   戦後リベラルの栄光と挫折
第9章   左翼はなぜ敗北したのか
エピローグ 「普通の国」への長い道

テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

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