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今日の読書 逆流するグローバリズム ギリシャ崩壊、揺らぐ世界秩序/竹森俊平

私は基本的にいわゆるグローバリズムという枠組みに反対する立場を持っています。

いわゆるグローバリズムという言い方にする場合想定する物は、グローバルという看板で押しつけて各国の個別事情や個別習慣、個別文化というものを横においておいて、統一ルールで連帯してやりくりしましょうという形に落とし込もうとするものですね。

分かりやすくグローバリズムの危うさとして挙げられる例としては、何でもアメリカのルールに従わせる形のグローバリズムという名のアメリカリズムと紹介されるようなもの。

基本なんで国境が引かれ、国家という単位に分かれているかというと、一緒に出来るものと出来ないものとがしっかりと別れているから、その方が事が単純に運ぶからというのがあるわけでして、それを破壊しようという動きは、その枠組みの中で上手く事が運んでいる時は良いのですが、一旦上手く行かなくなると、場合によっては連帯を組む前よりもかえって悪い事態を引き起こす、それこそ殺し合いにまで発展するというのは、歴史を紐解けば枚挙に暇がないとすら思っています。

それこそ、共産主義という暴力的な装置で1つの国にまとめあげようとしたソ連やユーゴスラビアの崩壊というのは、グローバリズムの失敗の例の1つとしてもっと深刻に扱った方が良いと思っているくらいです。

本書はグローバリズムという名の社会実験とも言えるヨーロッパでのユーロ統一通貨について、ギリシャの悲惨な財政状況についての分析になります。

統一通貨であるユーロは始まるまでは、成功のメリットばかりが喧伝されていました。

しかし、通貨を統一するメリットはそれこそ上手く回っている事前提のものばかりであり、社会が上手く行っていない場合、各国独自の金融政策も財政政策も自由に出来るわけでもなく、各国の経済事情がある程度均一ならば問題がない所が、少しでも格差が出来た瞬間におかしな事になると言う、ある意味机上の空論というか、上手く回ると想定される状況が凄く狭い中で成り立つというものでした。

それでも推し進めたのは、ヨーロッパ各国が世界的に弱体化して行ったり、アメリカ1人勝ちとも言える状況に、皆で力を合わせればそれだけで対抗できるんだというような強迫観念のようなものでもあったわけで、始まる前から各国の財政状況から何からむりくり基準に合わせた風にしてやったあたりから、失敗条件が埋め込まれたまま始まってしまったんですけれどもね。

ここら辺、失敗を想定すると言う事を念頭に置いた対策を埋め込んでいなかったあたり、日本の言霊社会に共通する物が感じられますが、ヨーロッパにはそう言う概念はないですよね?

結局、ギリシャの崩壊はギリシャの責任とだけおっかぶせるのではなく、そもそも出発時点から失敗した時の回避策を想定していなかった欠陥が全てという結論になっていくのですが、それはそれとして面白かったのが、ドイツがケインズ政策を徹底して嫌っているという事ですね。

厳格なルールに縛られて融通を聞かせられない新自由主義経済政策という、一見矛盾するような制度がドイツというのは知らなかったので、なかなか興味深い経済政策だなと。

世界経済史上、一番最初に成功したケインズ政策を行ったのがヒトラーであったという事がトラウマになっていて、政府主導で景気浮揚策を行う事が出来なくなっていたり、とにかくルールに従えばそれで全てよしとする精神が埋め込まれているというのが、後ろ向きなアイデンティティというか、自分達を信用出来ていないというか、何だか奇妙な事になっているなと。

日本絡みになると、ウクライナ情勢でロシアと対立して、民主主義勢力として法を破った蛮行を許せないという立場を表明しておきながら、中国に関してはスルーしてきた事の矛盾にこれから苦しむ事になると言うあたりは、これから見物かなと思うと同時に日本としては、これからIMFを通してヨーロッパから金をたかられる立場になると言う事で、いかに言いなりにならずに、言う事をはっきり言わないと危ないよという警告ですが、それ以上に金で立場を買ったと言われようとも、IMF体勢が基本第二次世界大戦の戦勝国側の論理で作られているという所から脱却させる所まで持って行くような外交力を欲しいと思ったり。

まぁ、戦勝国利権はどこも手放したくないでしょうが、それこそロシアや中国が秩序を乱す側になっているという矛盾を打ち崩すような事が出来る可能性があるとするならば、この混沌状況なんだろうなぁとは思ったりします。

混乱に巻き込まれるだけ巻き込まれてかっぱぎに遭う可能性もそれ以上にありますが(苦笑)

第1章 「欧州統合」に欠けていた戦略的思考
     欧州統合の「作戦の失敗」
     共通通貨ユーロ創設のいい加減さ
     ディアレクティックな発展
     「市民」の概念が戦争を拡大した
     なぜ第一次世界大戦は起きたのか
     ジャン・モネの商売的な発想
     加盟二十八カ国の巨大経済圏へ
     「欧州統合教の信者」たちの問題点

第2章 危機の原因は共通通貨ユーロそのもの
     グローバル化と「ホームバイアス」
     「ホームバイアス」の合理的な理由
     国債の発行残高が大きいメリット
     イタリア国際を買ったイタリアの銀行
     銀行資産を拡大した小国の悲劇とは
     コアとペリフェリーの「共犯関係」
     つくる国と使う国への二極分解
     ECBの会合とは債権者、債務者会議
     アリがキリギリスを歌わせつづけた

第3章 ギリシャ救済はどこで間違えたのか
     もともとおかしかった財政データ
     ユーロの規定に「離脱」はない
     「足の切断手術」か「危機のドミノ」か
     じつに奇妙なトロイカの仕組み
     自らインチキを認めたIMF
     ユーロ圏が拒否した「ベイルイン」
     脱出に見事に成功した独仏の銀行
     もし「減免」が明言されていたら…

第4章 ドイツの過剰な「ルール至上主義」
     立場の弱くなった国、強くなった国
     なぜフランスはドイツに追随したのか
     国債の買い上げをいやがるドイツ人
     ドイツ人のいう「ルール」とは?
     「神話」としての二つのイベント
     「経済自由主義」が信奉される理由
     「ネガティブ志向」で政府を縛る
     大衆を嫌う「オルドリベラリズム」
     インターネットに対する恐怖感
     「小市民的」であることの重要性
     メルケルの「ひし形」が意味したもの

第5章 アメリカとドイツの知られざる戦い
     ドイツへの対抗馬としてのアメリカ
     オバマ大統領が提案した「SDR案」
     失敗に終わった米仏の「ドイツ包囲網」
     アメリカの新パートナーはマリオ・モンティ
     夏休み中に熟考を重ねたメルケル
     ドラギ総裁に与えた「暗黙の了解」とは
    
第6章 苦悩するIMF、揺らぐ世界秩序
     突如、来日したダイセルブルーム議長
     七年ぶりに日本にやってきたメルケル
     IMFの願いはギリシャと手を切ること
     日本の出資金にも損失が発生する
     韓国国民はIMFを許していない
     IMFクォーターに潜む問題点
     ウクライナ支援の大いなる疑問
     ウクライナのEU接近を許さないロシア
     援助資金の一部が武器購入に向かう
     現代版の「マーシャル・プラン」か
     拡大する政治家と国民のギャップ
     アメリカがIMFを離脱する日
     「欧州の悲鳴」に応じるためには

第7章 日本がいま真剣に考えるべきこと
     メルケル首相の心中を察すれば…
     「お願い事」はますます増える
     日本の発言を無視はできない
     ギリシャでいよいよ怒る「釘外し」
     欧州統合を「バブル」に譬えたソロス
     イギリスがAIIBに出資した理由
     中国の要求はどこまで正当か
     世界にも日本にもプランBが必要だ

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