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今日の読書 総理にされた男/中山七里

30歳も半ばになりながら、劇団で裏方扱いの方が多い売れない役者の加納慎策。

その慎策の最近の見せ場は、見た目から声からそっくりだと評判の若きカリスマ総理大臣のものまねを舞台の前座で演じる事。

役者としての評判は上がらないものの、そのモノマネの評判だけは高く、自分は芸人になりたいわけではないと憤りながらも、思わずニュースを見ると首相の一挙手一投足に目を向けてモノマネのネタにして取り込みどんどん自分のものとしていしまう。

そんな慎策は総理に似ているという事で、替え玉として巻き込まれる事になり、与党も野党も替え玉とばれないようにやりくりする羽目になってしまいという、隆慶一郎の歴史小説『影武者徳川家康』の現代版とも言える政治エンターテインメント小説になります。

基本現在の日本の政治状況を踏まえ、現与党と野党の立ち位置は政権交代で下野してから復活した安倍政権と近く、経済政策もアベノミクスを踏まえていますが、政治家の顔触れは、元ネタが誰という形で分かりやすく設定しているわけでもなく、あくまでも踏襲しているのは政治経済などの現状。

問題山積みの中、替え玉とはいえ立ち向かう羽目になった慎策はモノマネで培った、いかにも総理が言いそうというようなセリフを軸に、現在の政治問題の現場の常識と国民意識との常識との乖離に、政治家、政治屋では無いからこその義憤などを絡めて分かりやすく提示して突っ走っていくという、ある意味理想のファンタジーと言えるかもしれないですね。

とにかく、誰もが描く青臭い理想と現実との乖離、これを単純な善悪二項対立構造に落とし込まないで、それでいながら権力批判であるとか、権力批判のための権力批判への批判であるとか、バランスよく落としこんでいるあたり、偏りなく書くためにかなり気を遣ったろうなというのは分かりますね。

経済問題に関しては、確実にポール・クルーグマンの著書を参考にしているだろうというのは分かりやすいなと思っていたらば、現在のデフレ脱却対策としてのインフレ・ターゲットの説明なんていうのは、クルーグマンが説明しているというのも出てきたりして、個人的に分かりやすかったですね。

とりあえず、物凄く凝り固まった政権与党や官僚を絶対悪として描かないと気が済まない、政権野党やマスメディアや戦争反対論者を絶対善として描いていないと気が済まないという人が読んだらば、プロバガンダ小説だと怒るかもしれないですが、そうではない、極々一般的な単純な二項対立構造で物事を考えないバランスの取れた何でもかんでも脊髄反射をしないという人には楽しめる政治エンターテインメント小説だと思います。

逆にこれを読んで楽しめない人は、物凄く偏狭で自分は善であり、それ以外の主張はあまねく悪であるという二項対立構造な思考を持っている人だという事になるかもしれないですね、特にテロとの戦いというシーンではね。

テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

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