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今日の読書 武士の碑/伊東潤

滅びの美や敗者の大義に光を当てた、歴史上の敗者側を主人公として描く歴史小説の多い伊東潤による西郷隆盛、大久保利通の後継者と目された村田新八を主人公にした歴史小説になります。

日本が明治維新により近代化された後、近代最初の内戦であり武士の世界最後の内戦ともいえる西南戦争。

西郷隆盛と大久保利通の関係がこじれた事によって起こってしまった戦争を、その2人よりも年下ながらも昔から2人の事をよく知っている村田新八が間に挟まれる事になり、何とか元の仲に戻したいと思いながらも、相容れない関係になってしまった、立場上引くに引けなくなってしまったという流れで西南戦争になだれ込んで行くわけですが、西郷さんの描き方が面白いですね。

神格化され過ぎた西郷隆盛だからこそ、本人の意思とは関係なく回りが動いてしまう。

昔から知っている新八はそういった状況を良く思わないが、同時に本人の意思でどうにもならなくなったが故に自分の意思を表に出さなくなった西郷隆盛に対して不満も現れてしまう。

明治の世になり急激に社会が変化し、その変化に追いつけない、また明治維新を起こしたのにその恩恵を受ける事が出来ないといった武士階級の不満と、武士階級の不満をそのまま受け入れると、日本という国家単位で物事を動かそうとすると動かせなくなるという現実。

歴史上の変化、単純な善悪二元論ではなく、それぞれがそれぞれに大義を持っているが、その大義がむしろ邪魔になってしまうという事でのぶつかり合い。

西南戦争は薩摩藩士たちの敗戦というだけでは無く、武士階級の終焉という形に持って行くあたりが敗者側を引き立たせる作品だらけの作者ならではなだと。

『死んでたまるか』で幕府側の最後の抵抗を舞台にしていましたが、その時の勝者側として戦っていた新八が、負け戦側になると、流れが完全に持って行かれていると感じるあたりに順番に読むとなかなか面白い感じになっています。

負け戦の最中に、フランスに留学していた頃の思い出がちょくちょくさしはさみこまれるのですが、いろいろとカッコイイというかちょっとしたハードボイルドな感じになっていますね、フィクションでしょうが。

作品が増えてきて、戦国時代以外にもドンドン手を広げて、近代にまで踏み込んできましたが、果たしてもっと近い時代にまで踏み込んでくるのか、また今まで以上にさかのぼるのか、歴史上の敗者なんて沢山いるのでいろいろと期待したいですね。

この中でも新撰組と斬り合ったエピソードなんかも出てくるので、新撰組関連の作品とかは書いて欲しいと改めて思いますが、たぶんあまり競合していない所を扱うとは思います。

テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

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