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今日の読書 鍵の掛かった男/有栖川有栖

臨床犯罪学者・火村英生を探偵役に、大学時代の同級生で推理作家の有栖川有栖を相棒役にした作家アリスのシリーズの久しぶりの長編作品になります。

有栖川有栖はいわゆる本格ミステリの普及を狙い、その狙いが上手くはまっていわゆる新本格と言われるジャンルの作家として、マニアックになり過ぎずそれでいてジャンルから外れた作品に向かう事もせず一番ジャンルの真ん中を進み続けている作家であると思います。

その上で、探偵火村はある意味では便利な存在、作品はそれぞれ独立していて連続ものとしての意味合いを持たせるわけでもなく、年齢設定も30代半ばと設定してから時代が移ってもその設定だけは動かす事もなく立場が変わったというのは、登場時は助教授という立場だったのが、助教授という名称が準教授に変更されたのでそれに合わせて準教授に変更されたという事くらい。

そのためかどうか分かりませんが、初期の頃は長編も普通に量産されていたのが、ここの所は主に短編作品に偏って、探偵役という設定の説明を省いて謎解きをするのに上手く使われているという言い方だと語弊があるかもしれないですが、使い勝手のいい設定として使われている感は感じていました。

もちろん、だから悪いという意味でもなんでもないんですが、短編作品に偏っているとそう感じるのと、時系列によって設定も一緒になって変化する、江上二郎を探偵役とする学生アリスシリーズや、探偵が禁止され分裂国家となってしまったという架空の設定の日本を舞台にするソラのシリーズとかですと、物語が進んで行く事で生じる変化も期待されると言うのに対し、もっと単純に論理的な謎を楽しませるというのには使いやすいんだろうなというだけの事ですね。

前置きはともかく、久しぶりの長編作品は有栖川有栖作品としては珍しい毛色の作品になります。

作家の有栖川有栖が直接面識のない歴史小説の大物作家から、大阪は中之島にあるホテルで自殺扱いされて死んだ男の死を自殺扱いでは納得できないから調べてくれと依頼されるというもの。

世捨て人な老人としか思えないその男は、ホテルに部屋を借り住み続け5年になるが、自らの素性は鍵をかけたように明かさず、孤独で分け有りのようなんだが、でも自殺をするようにも思えない、他殺と言いきれるほどの証拠は無いが、自殺と納得できる者のも提示されていない。

警察でも事件扱いしなかったものを、調査する事になったものの、受験シーズン真っただ中で火村は最初から合流できず、相棒の有栖川有栖が男がいったい何者であったのかから調査するというもの。

男の素性を調べるという流れが、いわゆる本格ミステリとしては珍しいというか、バックボーンを探る作業と同時に、心の奥底を探るというのは珍しいなと思ったのと、謎の多い人物をたどっていくというと、どうしても宮部みゆきの『火車』が頭をよぎったりしたので、余計にいわゆる本格と離れているように思ったりしたのかもしれないですね。

とはいえ、有栖川有栖ですから、本文中に阪神淡路大震災のネタが入ってこようが何しようが、社会派ミステリ方向に力点が行く事は無く、集めた情報をまとめて推理して行ったりする過程は本格そのものでした。

心に鍵を掛けていた男の事を探るという事で、探偵役で同じく心に鍵を掛けているという事が何度も出てきている火村に対してもそういう面があるという事に結構行きがちになるあたりは短編では出来ないよなと思えるものがあり、シリーズでも珍しい方向に持って行った力作だなと楽しめました。

テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

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