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今日の読書 戦国の陣形/乃至政彦

鶴翼の陣や魚鱗の陣など戦国時代を舞台にしたドラマ、映画、ゲーム、歴史小説などなどエンターテインメントではおなじみで、どういうものかきちんと勉強したわけではなくても、何となくぼんやりとでもイメージできるとは思いますが、実はこのおなじみの戦国の陣形は実際に当時使われていたものというわけではなく、後生にまとめられていたものらしく、実際に当時の戦争の陣形というのがどう配置され、どういう狙いで運用されというような事はきちんと研究されていないできているというのが実情らしいという、驚愕してしまうようなことをまとめているのが本書になります。

日本の軍事系の研究って今ひとつきちんとしていないというのもあるにはあるのでしょうが、細かく記されてもいなかったり、鶴翼や魚鱗という言葉ばかりが一人歩きして当時も使う人によって意味が変わっていたというのもあるようですね。

だから、陣形によって明確に相性が良いとか悪いとかいうのは、ゲームに都合が良いシステムだからそう設定していたり、分かりやすいから中身を吟味しないで流布してしまったとかもあるようです。

いろいろと思い込みで流布してしまったものは、いつの間にか思い込みの方が定着してしまって常識化してしまうのが歴史上で繰り返されてきているので、そのままではまずいと思ってまとめようというのが執筆の動機のようですが、歴史の常識が単なる思い込みであると検証し直すっていう狙いが、これが現代史ならば歴史修正主義者とか罵倒する人がいそうとか余計なことが頭をよぎりますが、現代史と違って実際に思い込みが現実とは違うだろうという検証をするにしても、歴史の政治利用をしない時代だと、あくまでも検証結果が妥当かどうかという評価だけに集中できていて余計な横やりが入らなくていいなと思ったり。

陣形というのはイメージだと固定的なもの、例えば鶴翼の陣だと攻める方向に対してV字型という印象が強いが、実際の配置を見ると逆に八の字型が鶴翼の陣として記されているものの方が多かったり、戦闘が始まれば当然動きがあるものとかで、実際には鶴翼は広がって個々が自由動くという事で、魚鱗は密集して秩序立ってというくらいの意味合いで使われていたりもしたとか、何というか実態が分かると多少残念な気持ちになるものばかりであったり、まぁそれはそれと言うことで読んでいて面白いんですけれどもね。

実際の例で使われていませんが、サッカーのフォーメーションなんかもある意味似ているかもしれないですね、4-4-2というフォーメーションをしているからどういう戦い方か、例えば攻撃的なのか守備的なのかそれだけで判断できるものではないですし、4-4-2と3-5-2というフォーメーションだとどちらが有利かという話があったとして、これだけで分かる物では無いというのと似ていますね。

何となく常識化している陣形というのは、今のところ思い込みに過ぎず、どちらかというと戦がなくなってきた後にまとめられた机上の学問としての側面が強く、現実と乖離しているという所を出発点に考えた方が良さそうというのは現段階でのまとめになるようで、まだまだ研究の余地だらけということらしいです。

ただ、ゲームとかになると陣形同士の相性がどうこうというのは便利ですし面白いのは確かですよね。

序 章 鶴翼の陣に対する疑問から
第1章 武士以前の陣形から
第2章 武士の勃興と陣形の黎明
第3章 中世の合戦と定型なき陣形
第4章 武田氏と上杉氏に現れた陣形
第5章 川中島・三方ヶ原・関ヶ原の虚実
第6章 大阪の陣と伊達政宗の布陣
終 章 繰り返される推演としての陣形

テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

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