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今日の読書 これから始まる「新しい世界経済」の教科書/ジョセフ・E・スティグリッツ

市場の失敗を情報の非対称性という事を軸にした研究でノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ教授による、資本主義の崩壊、特にアメリカの不平等極まりない超格差社会の問題点を説明し、その解決策を提示するというものになります。

タイトルだけ見ると、全く新しい価値観を提示するかのように見えますが、アメリカの市場原理主義というか、金持ちの金持ちによる金持ちのための市場形態批判という事で、スティグッツ教授の今世紀に入って直後の頃から翻訳されている一般向け現状解説書で繰り返し書かれている事の焼き直しといえば焼き直しになりますね。

つまり今世紀に入ってからアメリカ経済界は格差拡大のために突っ走ってきていて、それに対する警鐘を鳴らし続けているけれども、全く改善出来ていないと。

変わっているのは、書かれるたびに失敗例として上がる企業の名前が変わったりするくらいであったり、失敗の規模がむしろ拡大しているという数字が出てくる事ですかね。

結局、一部の人間が規制緩和を叫んでレントシーキングという超過利潤をかすめ取っていく、日本語の感覚からすると利権の拡大にいそしんでいるという事に尽きますね。

最高税率の軽減による逆進性の強い税制度にして税収が伸び悩み、マクロ経済対策は緊縮財政にインフレ抑制だけという、不況期にこんなことしたらば失業者だらけになるし、立場の弱い就業者は続々とかつかつの生活に落とされて中間層を破壊するだけ。

サプライサイド(供給サイド)経済理論で物事を進めても待ったく理論通りになっていないという、経済右派という名の古典派経済学系列批判。

私は意図して、市場原理主義批判のものはアメリカ国内批判ものを読んで、世の中が市場原理主義に向かうとなると、アメリカのような格差社会になるんじゃないかという風評を作れればなぁとしていますし、日本国内の政治経済政策批判をするものとしては、どちらかというと野党というかいわゆるリベラルや左派批判に力点を置いて、なんで社会保障の拡大を好んで喧伝しているのに、マクロ経済対策に関しては、緊縮財政とインフレ抑制を目標としているような事ばかり言って、ガッツリと市場原理主義政策なのかと突っ込まずにはいられないというか、基本的にマクロ経済政策に興味ないだろう?というか理解する気が無いだろうと、この捻れ状態を正さないとどうにもならないと思って意図的に偏った読書傾向にしていたりします。

アメリカの問題点は改善は容易な道ではないなと思えるくらい問題点が提示され、これがこのまま日本に来たらば嫌すぎると思って読み進めるのですが、これを反面教師として日本でどう活用すればいいのかとなったときに、日本の政治は基本的に経済学理論を念頭に置いての対立軸でも何でも無いだけに、わけが分からないよなぁと思わずにはいられないんですよね。

前半はアメリカの失敗した現状分析、後半はそれを踏まえての解決策という構成なのですが、基本的には中流層の復活を目指すという事で、金融資本主義からの脱却。

株式市場での短期的利益の追究、キャピタルゲインで儲ければウハウハ状態になっている状況をしっかりと規制し、大きすぎてつぶせないとなっている金融業界は、きちんと責任ある状態に戻す、利権構造を破壊する。

そして、金融業界のマネーゲームに奔走させずに、しっかりとインフラ整備に投資させるようにし、新たな労働市場を構築させ、また労働者にしっかりと働いた分の報酬を与えるようなインセンティブを与えてアメリカ全体で新たな技術革新や新たな研究活動ができるようにするという事ですね。

言っている事は全くもって基本的な事であり、かつての日本の戦後復興期の頃に社会保障を強めた感じというのが感覚として合っているかなと。

ただ、理論上は全くもってそうなんでしょうが、日本が戦火でみんなで右肩上がりを目指そうという状況であるとか、日本に限らず開発途上国であれば、インフラ整備から何から手をつける所だらけで、公共投資の失敗が少ない状態(必要なものだらけで無駄な公共財というものが無い状態)ならばやりやすいのでしょうが、アメリカのように大国であり、先進国という立場であり、富裕層が強すぎる中では手をつける課題が分かっていても法律改正そのもののハードルが高そうだなぁって思わずにはいられないですし、この点に関しては日本も既得権益保持者の既得権維持能力は異常という事で失敗続きに終わってしまうので、なかなか難しいだろうなぁって。

はじめに 今こそ「新しい世界経済」へ大展開する時
序章   不平等な経済システムをくつがえす
第1部  世界を危機に陥れた経済学の間違い
 第1章 "自由な市場"が何を引き起こしたか
 第2章 最富裕層にのみ奉仕する経済
 第3章 なぜ賃金は低いままなのか
第2部  地に落ちた資本主義をこう変える
 第4章 最上層をいかに制御するか
 第5章 中間層を成長させる
おわりに アメリカ型グローバリズムをゆるすな

テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

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