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今日の読書 悪魔を憐れむ/西澤保彦

西澤保彦のデビュー作である『解体緒因』から始まる四国にある安槻市を舞台にし、主に匠千暁を主人公とするミステリー小説のシリーズの10作目になります。

シリーズ初となる作品がそもそも時系列としてはその後に始まるシリーズ長編よりも先の話になっていたりするのを始め、短編集は時系列無視でいろいろと飛んでいるので、その間に何が起きたのだと気になるものが多いというシリーズでしたが、ようやく待望の穴埋めとなる時期の作品となります。

シリーズ長編では主要登場人物は大学生で、長編はその大学生時代を時系列で進んできていましたが、今回は連作短編を大学卒業後(1人だけ留年していますが)を時系列を追う形で連作短編で埋め合わせています。

時系列によって人間関係の変化が起きたり、遭遇した事件によって人生に影響を与えられてしまうようなシリーズの楽しみ方の1つはシリーズが進む事によっての変化であったりするわけですが、このシリーズは長編が進むごとに人間関係の重たさによる変化が強くなる傾向があり、果たしてどこに着地点を考えているかが気になるように書かれているのですが、それを時系列無視で話をすっ飛ばすというやり方までされて、気になる事が多すぎる傾向が強く、とにかくシリーズを進めてくれという気持ちを煽りまくっています。

その気持ちを落ち着かせてくれる作品がでてくれて本当に良かったなと思えます。

元々最初のシリーズが書かれたのが90年代と言う事もあり、当初はぼんやりと書かれている同時代を思わせていたのが、今作は明確に何年の出来事なのかが明記されているのは特徴の1つになっています。

そうしないと、時代が変化してしまって電話ボックスなんていう連絡手段が使われる事を説明しないといけなくなっているというのもあるんでしょうが、逆に年齢がはっきりしたし、シリーズとして長く続ける事が難しいよなと。

4作品の短編集ですが、2作品はいかにも西澤保彦作品らしい人間関係、親子や夫婦といった狭い間柄の支配被支配が犯罪に繋がる心理に影響を与えている重たい話。

リベラルを装う独裁者、外面の良さと人間性の良さは同一ではないという痛い人間を書かせると、西澤保彦は心底嫌な気持ちになるという上手さがあるよなぁと思わずにはいられない、まぁ結構その型にはまっている部分もあるので、作品の数を読んでしまうとまたこの手の犯罪者かと思わずにはいられなくもありますが。

ちょっと嫌な気持ちになる作品がある一方で、酒を飲みながら雑談のように推理をする話もあり、その中でも犯罪があるので必ずしも楽しい気分になるものではないですが、気楽に楽しめる話はもっとこのシリーズで読みたいよなと思わずにはいられない。

シリーズで気になる空白期間を埋めてくれて良かったと安堵できる作品でした。

テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

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