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今日の読書 走狗/伊東潤

明治維新の時代、西郷隆盛と大久保利通の陰として警視庁長官まで上り詰めた川治利良を主人公とした歴史小説になります。

伊東潤の作品は歴史上敗者扱いにされる方を主役とする傾向が強く、戦国時代では北条氏を主役に刷る作品が多かったりしますが、幕末から明治維新以降までの時代では薩摩関係者を主役にする傾向は出始めているのかなというのがありますね。

『武士の碑』という村田新八を主役にした作品が前例にあるだけではありますけれども、何となく薩摩藩関係者は掘りがいがありそうと踏んでいるんじゃないかと勝手に思える気はします。

川路利良は武士としては最下級もいいところの出身という事で、それが幕末に出自に拘らない西郷隆盛に見いだされ、犬として奔走し結果を出し出世をし野心にとりつかれていくという流れですね。

単なる出世欲という野心だけではなく、権力欲と日本という国家を欧米に負けないような国家にしたいという欲望とで公私共に生き急いだ感じになってしまうという。

面白いのは秘密警察という存在にとりつかれていくという事ですね。

フランス革命から学び、ロビス・ピエールと秘密警察のジョゼフ・フォーシェの国家のためにはなりふり構わないというもの、国家のためならばどんな汚い手段も厭わないというのが、国家のためという建前から乖離してしまうというか、手段と目的が入れ替わってしまう危険性をはらんでいるという当たりですね。

革命から独裁政権に移行すると独裁維持のために粛清の嵐になってしまうというのは、暴力的左翼の宿命なんでしょうが、正義のためという看板を背負った革命っていうのはそういうものだよなぁと。

明治政府が維新以降残った人材が小粒になってしまったし、ならざるを得なかったのはこういう事なんだろうなぁと考えさせられるものでした。

テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

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