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今日の読書 ポピュリズムと欧州動乱 フランスはEU崩壊の引き金を引くのか/国末憲人

先日フランスで大統領選挙が行われ、極右ポピュリストの危険人物という扱いのルペンが敗れ、マクロン大統領が誕生しました。

極論主義者が昨今幅を利かせている状況であり、実際にフランスでも決選投票まで持ち込んだということの意味は実際に大統領に受からなかったからといって無視出来るものではないでしょう。

ポピュリズムは大衆迎合主義と訳される物で、民主主義という政治制度では不可避なもの、大衆に迎合するが故に多くの大衆、非エリートにも分かりやすく夢を見させるか、もしくは恐怖心を煽るかという政策をぶち上げるものと思っておけば大きく間違いではないのかなと思いますが、じゃあ全否定すべきものかというと、大衆迎合ということは、それだけ現実社会のニーズをくみ取っているとも考えられるものであり全否定しきれるものでもないという扱いが面倒なものになります。

現実社会そのものが、単純な全肯定と全否定の2択で決める事ができないものであり、それを踏まえた上であたかも単純な二項対立構造で解決可能かのように語る人がいれば、そういった輩は警戒しないといけないとなるのですが・・・実際問題日本の国内でも政治家もマスメディアもわりと簡単に二項対立構造で語りがちで困りますね。

筆者は朝日新聞GLOBE編集長という立場の人であるというので、私はフランスのポピュリズムを取り上げただけで、ルペンを極右ポピュリストとしてボロカスに扱う、ナショナリストをボロカスに扱う、イスラム教徒がフランス国内でテロ行為を行ったとしても、それを理由にイスラム教徒を警戒するのは差別主義者のレッテルを貼る、そういった事に力点を入れまくるのかと思いましたが、予想以上にポピュリズムが台頭する理由、引き金になりかねない移民問題、移民や不法移民だけが問題ではなく、移民2世が世俗的な移民1世から先祖返りしたようにイスラム原理主義的な方向に振れていくということも、しっかりと触れていて驚きました。

フランスの移民問題、特にイスラム教徒との軋轢は基本キリスト教国家でありながら、政教分離をしっかりとやり、信教の自由の上にフランス国民としてのあり方が規定されている社会で、フランス国民としてよりもイスラム教徒であることを優先させようとすることは、郷に入っては郷に従うに逆らう行為であり、存在が差別されるという意味ではなく、行動として嫌われるという前提があるが、その前提を復してもイスラム教徒に対する差別問題にすり替えられ、共に不幸にしているという実像を扱っているのに、まさか朝日新聞社が差別されたと喧伝する方の言い分以外をしっかりと取り上げるとは!と驚いた次第。

フランス国内の移民やテロ問題、EUという組織による国家として不況対策を打ち立てられなくなっているグローバル化の問題であるとか、とかく現代社会は複雑な問題だらけの中、フランスの政治も多党乱立して政権も右派がとったい左派がとったり、コアビタシオンという保革連合政権で結局何をしたいのかよく分からなくなったりと複雑になっている中、だからこそ分かりやすいポピュリズムに走りやすい土壌になっているというのと、もはや現代社会は右だ左だと単純に分けることそのものに無理が出来てきている、もはやイデオロギーによる対立軸という概念そのものが現実社会から乖離しているというか、問題解決に向かわないであるとかいろいろぶちまけていますが、結局の所権威主義的ポピュリズムに向かって息苦しい社会へ向かうか、権威主義的な方向へ行くことを嫌ってカオスのまま問題の先送りしか出来ないのが現状なんじゃないかとしか思えないという結論なのかなぁと。

正直、本書を読んでフランスの問題を扱っているという意識よりも、朝日新聞の記者も日本国内問題を扱う時に、これくらいのスタンスで書けばいいんじゃないかと、そっちばかり気になってしまいました(苦笑)

まぁポピュリズム批判であり、それこそアメリカのトランプ大統領やロシアのプーチン大統領はほぼほぼ全否定ですが、これが朝日新聞の紙面だったらば、絶対に日本の首相をポピュリストかつ権威的なナショナリスト扱いとして、むしろそれを否定したいがためにフランスを引き合いに出しているんじゃないかということをしがちなのでね。

個人的には、フランスの左派がまとまりを欠いて、分裂したり共闘すれば良いところで共闘できなかったりというあたりで、日本の左と既視感を感じたり、それこそ日本屈指のポピュリズムの例になるよなって思ったりしたので。


はじめに 欧州が欧州でなくなるとき
第1章  イスラム過激派の世界から
第2章  『服従』の共和国
第3章  デカダンスの十年、迷走の四十年
第4章  先細りする外交大国
第5章  国民戦線はなぜ台頭したか
第6章  マリーヌ・ルペン権力への道
第7章  悪魔は本当に去ったのか
第8章  分断、排除、ノスタルジー
第9章  ワシントン・パリ・モスクワ枢軸
第10章 混迷の春
第11章 ロシア色に染まるフランス

テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

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