今日の読書 問題は英国ではないEUなのだ 21世紀の新・国家論/エマニュエル・トッド
ソ連崩壊、リーマンショック、アラブの春、ユーロ危機、英国のEU離脱と預言を的中させたと話題のフランスの歴史人口学者、家族人類学者のエマニュエル・トッドによる初の日本向けというか、日本でのインタビューを元にまとめたものになります。
タイトルだけ見ると、英国のEU離脱についてがっつりと扱っているように思えるものですが、このタイトル部分に関わる物だけ別枠でやっていて、他は日本での仕事ということになります。
エマニュエル・トッドはEUの問題点としてドイツ帝国の拡張主義による1人勝ち状態という事に力点を置き、EUが理想とは乖離した状況に陥っているし、そもそもEUという組織作りにおいて想定されてきたグローバリゼーションは米英アングロサクソン的なグローバリゼーションでしかなく、現状そのグローバリゼーションに対する疲弊からグローバリゼーション否定へと真っ先に向かっているのがアングロサクソンであるということなどなどから、ある種グローバリゼーションは終わりの始まりに向かっているという視点を持っていたりします。
かといっていわゆるグローバリゼーションは世の中を疲弊させるとして否定的に見ている物の移民に関しては賛成派、メルケル首相のように際限なく移民を流入させる事こそ正義みたいな扱いにするのではなく、ようは歯止めの利いた移民推奨という立場ですね。
そういった物事の見方をしていたり、数々の預言を的中させたという事から、そのベースとなる視点について解説していて、今後の世界情勢をどう予想するのかというのが本書。
人口変動と家族制に着目しているのが特徴で、ソ連崩壊を予想した時は人口変動で極端な数字が出たり、急に発表しなくなったりがきっかけでダメだなと分かったという事で、これはどういった国であれ、何か極端な数字が出た時には極端な変化が国を襲うと念頭に置いておいて良いという感じでしょうか。
日本として気掛かりになる、世界情勢というか日本により直接的に関わるものとしては、これから安定化するのは米露、不安定化するのは欧中であり、これまでと国際関係が変動する事も念頭に置いておく必要性、特にロシアに関しては今までが悪いイメージでありすぎたが、覇権狙いの危険な存在というのは過大評価、中国に関しては経済大国となっている事は過大評価であるというのは何度も繰り返されて出てきます。
特に中国に関しては、極端な少子高齢社会へ突入、しかも男女比が極端に男が多いと言う問題点(一人っ子政策というものは取り立てて触れていない)高等教育を受けている率が先進国としては著しく低い事が問題として噴出するということ、中国幻想に囚われている人が世界的に多すぎるが、数字を見ると幻想に過ぎないというのは分かるとしています。
個人的には近場に巨大国家があるのはいろいろと脅威なので、中国が春秋戦国時代なみに分裂するかもくらい予言してくれていると助かったのですが、そういうものはとくに言及されていないですね。
今世界情勢を考察する時に有名な学者がトマ・ピケティ、スティグリッツ、ポール・クルーグマンと経済学者に偏重しているのが実は大きな問題というのも、ピケティは結局私は手を出していないですが、スティグリッツとクルーグマンは読んでいるので、ちょっと興味を持ったというか、個人的に経済学的分析に興味を持っていて、市場原理主義批判をするアメリカの学者というのが都合がいいと手を出しているのですが、経済分野以外の分析というのが、あまり世に出回っていないという事でもあるんですね。
そこら辺が問題としていますが、逆に日本の場合は初歩的な経済学理論をスルーした政府批判だらけなのが問題ではなかろうかと思ったりもしましたが、そういうのは当然書かれてはいません。
とりあえず、いわゆるグローバリズムに関して全肯定しないといけないかのような風潮に対し疑問を持っている人は読んでみると、考え方として納得出来る部分を見いだせるものが多くあるのではないかと思います。
日本の読者へ 新たなる歴史的転換をどう見るか?
1 なぜ英国はEU離脱を選んだのか?
2 「グローバリゼーション・ファティーグ」と英国の「目覚め」
3 トッドの歴史の方法 「予言」はいかにして可能なのか
歴史かトッドはいかにして誕生したか?
国家を再評価せよ
国家の崩壊としての中東危機
4 人口学からみた2030年の世界 安定化する米・露と不安定化する欧・中
5 中国の未来を「予言」する 幻想の大国を恐れるな
6 パリ同時多発テロについて 世界の的はイスラム恐怖症だ
7 宗教的危機とヨーロッパの近代史 自己解説『シャルリとは誰か?』
タイトルだけ見ると、英国のEU離脱についてがっつりと扱っているように思えるものですが、このタイトル部分に関わる物だけ別枠でやっていて、他は日本での仕事ということになります。
エマニュエル・トッドはEUの問題点としてドイツ帝国の拡張主義による1人勝ち状態という事に力点を置き、EUが理想とは乖離した状況に陥っているし、そもそもEUという組織作りにおいて想定されてきたグローバリゼーションは米英アングロサクソン的なグローバリゼーションでしかなく、現状そのグローバリゼーションに対する疲弊からグローバリゼーション否定へと真っ先に向かっているのがアングロサクソンであるということなどなどから、ある種グローバリゼーションは終わりの始まりに向かっているという視点を持っていたりします。
かといっていわゆるグローバリゼーションは世の中を疲弊させるとして否定的に見ている物の移民に関しては賛成派、メルケル首相のように際限なく移民を流入させる事こそ正義みたいな扱いにするのではなく、ようは歯止めの利いた移民推奨という立場ですね。
そういった物事の見方をしていたり、数々の預言を的中させたという事から、そのベースとなる視点について解説していて、今後の世界情勢をどう予想するのかというのが本書。
人口変動と家族制に着目しているのが特徴で、ソ連崩壊を予想した時は人口変動で極端な数字が出たり、急に発表しなくなったりがきっかけでダメだなと分かったという事で、これはどういった国であれ、何か極端な数字が出た時には極端な変化が国を襲うと念頭に置いておいて良いという感じでしょうか。
日本として気掛かりになる、世界情勢というか日本により直接的に関わるものとしては、これから安定化するのは米露、不安定化するのは欧中であり、これまでと国際関係が変動する事も念頭に置いておく必要性、特にロシアに関しては今までが悪いイメージでありすぎたが、覇権狙いの危険な存在というのは過大評価、中国に関しては経済大国となっている事は過大評価であるというのは何度も繰り返されて出てきます。
特に中国に関しては、極端な少子高齢社会へ突入、しかも男女比が極端に男が多いと言う問題点(一人っ子政策というものは取り立てて触れていない)高等教育を受けている率が先進国としては著しく低い事が問題として噴出するということ、中国幻想に囚われている人が世界的に多すぎるが、数字を見ると幻想に過ぎないというのは分かるとしています。
個人的には近場に巨大国家があるのはいろいろと脅威なので、中国が春秋戦国時代なみに分裂するかもくらい予言してくれていると助かったのですが、そういうものはとくに言及されていないですね。
今世界情勢を考察する時に有名な学者がトマ・ピケティ、スティグリッツ、ポール・クルーグマンと経済学者に偏重しているのが実は大きな問題というのも、ピケティは結局私は手を出していないですが、スティグリッツとクルーグマンは読んでいるので、ちょっと興味を持ったというか、個人的に経済学的分析に興味を持っていて、市場原理主義批判をするアメリカの学者というのが都合がいいと手を出しているのですが、経済分野以外の分析というのが、あまり世に出回っていないという事でもあるんですね。
そこら辺が問題としていますが、逆に日本の場合は初歩的な経済学理論をスルーした政府批判だらけなのが問題ではなかろうかと思ったりもしましたが、そういうのは当然書かれてはいません。
とりあえず、いわゆるグローバリズムに関して全肯定しないといけないかのような風潮に対し疑問を持っている人は読んでみると、考え方として納得出来る部分を見いだせるものが多くあるのではないかと思います。
日本の読者へ 新たなる歴史的転換をどう見るか?
1 なぜ英国はEU離脱を選んだのか?
2 「グローバリゼーション・ファティーグ」と英国の「目覚め」
3 トッドの歴史の方法 「予言」はいかにして可能なのか
歴史かトッドはいかにして誕生したか?
国家を再評価せよ
国家の崩壊としての中東危機
4 人口学からみた2030年の世界 安定化する米・露と不安定化する欧・中
5 中国の未来を「予言」する 幻想の大国を恐れるな
6 パリ同時多発テロについて 世界の的はイスラム恐怖症だ
7 宗教的危機とヨーロッパの近代史 自己解説『シャルリとは誰か?』