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今日の読書 逆説の日本史22 明治維新編 西南戦争と大久保暗殺の謎/井沢元彦

井沢元彦のライフワークとして4半世紀以上続いていることになる逆説の日本史、明治維新後期というか激変期から最終的な落としどころとしてまとまることとなる西南戦争と大久保利通暗殺までの話となります。

軸としては西郷隆盛と大久保利通という薩摩出身の2人の考え方や立場の違い、理想と現実の兼ね合いや手順の違いから来る齟齬を中心に、長州出身政治家は権力を手にすると私腹を肥やす事に対して何のためらいも無い人物が多く出てきた事とその背景、逆に私利私欲のために動かなかったが為に歴史的に悪い扱いに追いやられることとなった肥前出身者との対比などなど、政争についてが多目。

江戸時代以降、朱子学の毒としての影響力の強さと、日本では朱子学が微妙に独自進化していた点、日本国中には伝播していなかった点などに注目し、朱子学の影響力がガッツリ強く行き届いていた清や朝鮮半島との違い、明治維新という欧米列強相手に学び吸収しようとする方向転換ができた日本と、そうはならなかった違い、征韓論に対する日本の思惑、よかれと思って啓蒙活動をしている部分のある日本と、朱子学の影響力の強さから日本のような野蛮国家に言われたくはないという強固な意志がある朝鮮半島との違いなどなどですね。

逆説の日本史では何度も何度も繰り返し、日本の歴史学会の当時の宗教思想に対する観点の軽視というのを主張していますが、それ故に逆にガチガチに宗教による行動論理を強調している事にもなりますかね。

明治維新あたりは日本史の中でも人気分野の1つでもあり、他の文献を読んだりしているので、通説だけでは無く諸説ありますという諸説の方もそれなりに目に入ってくるので、目新しさを感じることも少ないですし、それこそこのシリーズが始まった頃と比べて、感覚的に唯物史観が幅を利かせているという状況から脱しているように思えて、このシリーズで日本史学会全体の問題点として指摘し続けている中でも、少なくとも当時の宗教的常識という所については変化してきているのではないかと思いますかね。

そして、明治維新だけではなく、25年続いているシリーズだからという事で、過去に扱ったところで、書き足りなかった所であるとか、新たな発見があって、考えを改めざるを得なかったところ、当時凡ミスをしていたところを訂正するというコーナーを大きく作っていますが、それぞれの歴史について細かく扱うよりも、言霊信仰、一七条憲法以来の話し合い至上主義、ケガレという事などをひっくるめて日本教と考えるまとめ方、これを扱っている時が一番持ち味を発揮しているなと思ったり。

第1章 明治維新編 近代国家へと踏み出す「廃藩置県」の断行
第2章 明治政府のグランドデザイン編 日本の骨格作りと留守政府の奮闘
第3章 明治六年の政変編 「征韓論」とは何だったのか
第4章 サムライ達の反抗編 陰謀に散った不運の男・江藤新平
第5章 サムライ達の反抗編2 “最強”の西郷軍はなぜ敗れたのか?
第6章 補遺編

テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

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