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今日の読書 第三次世界大戦はもう始まっている/エマニュエル・トッド 大野舞(訳)

フランの歴史人口学者・家族人類学者であるエマニュエル・トッドが本国では発表できないけれども日本向けならという事でロシアとウクライナの戦争を分析、ロシアを独裁者による極悪国家でウクライナは完全なる被害者という立場ではなく、ロシアを追い込んでいるのはアメリカとNATOという立ち位置による分析を軸にしてこの戦争の意味する事を紐解こうという狙いになっています。

アメリカこそが常に戦争真っ只中で世界を牛耳ろうとする存在であり、アメリカが戦争をせざるを得ないほど内部はガタガタ、行きすぎた新自由主義による振りきれた格差社会であると言う事。

NATOが軍事的な存在であるはずなのに戦争はもう起きないという、お花畑的な現実逃避とロシアへの恐れの理由と偽善がはびこり経済面も危機的な状況と。

いわゆる近代社会は西洋的価値観による世界統治によって行なわれていますが、そういった西側社会の脆弱さが露呈してしまい、ロシアとウクライナの戦争は泥沼化してしまう可能性などなど。

いわんとする事は分かりますし、アメリカが正義でもなんでも無い事も十分承知してはいますが、反米として世界をまとめるにはロシアは他国に対して価値観を共有するような事をしていたのか、味方を作ろうという動きをしっかりとやって来たか、旧ソ連の国家達に対して脅しという手段以外を駆使してソ連崩壊後も共同体として同じ方向を向き合えるようにやって来たかというと、そうではなく離れられるに足る事しかしてないし、ウクライナが元々ソ連邦としてまとめられる前に存在していた国家でもなんでも無く現状はアナーキーな集団であり、決してかわいそうな被害者という立ち位置ではないという分析を提示していますが、だからといってロシアが先制攻撃をする事の正当性は担保できていないよねというのはありますね。

ロシアの言い分であるとかロシア側の視点の説明については一定の理解を示す事は出来るわけですが、第二次世界大戦時の日本の言い分や立ち位置、連合国側の無茶ブリにちゃぶ台をひっくり返したせいで、正義と悪の戦争扱いになり悪のレッテルを貼られ敗戦国になった事を考えると、言い分に正当性があったとしても先制攻撃を仕掛ける事で正当性を全て剥奪されるんだよねって。

ロシアがアメリカやNATOを批判する事は気持ちとしては分かるし、アメリカが絶対的な正義として振る舞う事がおかしい事も重々承知しているけれども、アメリカこそが悪だとするために味方作りをおざなりにしているよねって。

現状を第三次世界大戦とみなすとして、エマニュエル・トッドの分析では第1次世界大戦に近いと考えているとなると、ロシアが一段落ついたところで後処理が大変な事になるんだろうなぁと。

個人的にはロシアが動き出す前は中国がその位置にいたはずなのに、いつの間にかすり替わっていたというのが頭を抱えたくなる事だったよなと…


1 第三次世界大戦は始まっている
2「ウクライナ」問題をつくったのはロシアではなくEUだ
3 「ロシア恐怖症」は米国の衰退の現れた
4 「ウクライナ戦争」の人類学

テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

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