今日の読書 永遠の0/百田尚樹
映画化され大ヒットしたらしい、永遠の0を読みました。
実の祖父だと思っていた祖父は実は血のつながりが無く、実の祖父は別にいて、その祖父は戦時中零戦乗りでカミカゼ特攻隊として命を落としていた。
その実の祖父がどういう人だったのか、当時を知る人を訪ね証言を集めて祖父の実態に迫って行くという話になります。
第二次世界大戦中の軍人、現在の価値感と同じ尺度で判断して全否定すべき存在とされがち、またそういった風にマスメディアを中心に煽りすぎていて実態が分からないものですが、時代による価値観、空気感こそ違えそこに生きていた人達は決して狂信的なテロリスト集団のようなものではなく、いつの時代でも人間のやっている事って基本的には変わらないなという普遍的な価値観も当然あるもの。
祖父について聞きとり調査のような形で祖父の実態と共に、あの時代とはどういうものだったのかを同時に知る事になり、全肯定か全否定の2択の価値観ではないものが浮かび上がって行くという構成になっています。
聞く相手によって、祖父の姿が卑怯者から優秀なパイロット、あの当時の軍人にあるまじき生きたい、死にたくないという感情を前に出したり、当時軍人が当たり前のように死ぬ気でやれというのが文字通り本当に死ぬ事を表してたいたものを否定する態度をとっていた祖父の証言が集まってくる事で、当時の空気感が逆にリアルに伝わってくるかたちになっています。
証言を集めて、祖父の実態像が形作られていく過程が、歴史ミステリーを読んでいる感覚に非常に似ていますね。
歴史は残された資料から光の当て方を変える事によって、一度付けられたイメージが復されたりする事は良くある事、固定観念が変えられる事もまた1つの楽しみになっているものですが、そういった歴史の価値観の変化、通説とは違い実はこうだったのではないかという解釈の変化を魅せる事が許されるジャンルが歴史ミステリーだったりしますが、そういう事を考えると、第二次世界大戦もまた十分に歴史になった出来事であり、固定観念に変化をつけても、光の当て方に変化をつけてもまた構わない時代になっていると思います。
特攻隊は狂人の集まりだったのか、命を惜しいと思わない人達の集まりだったのか、安易にレッテル貼りをするのではなく、時代とともに変わる価値観と時代を経ても変わらない普遍的な価値観、それを上手く使い分けて、現代的な感覚を放り込んで解釈し物語として作り込んでいるので、ヒットするのもわかるなと思えますね。
零戦が世界を驚かせるレベルの無敵の戦闘機であったにもかかわらず、日本が敗戦に向かってどんどん凋落していく過程も、当時の軍部の上の方が無能だったというのがありますが、あれは軍人だから無能だったと今の時代とは無縁の物と理解したい人達がいるのならば、それは違うと分かりやすく作られていますね。
結局、悪しき官僚主義、エリートは出発点さえ成功したらばエリートとして君臨し、絶対に越えられない壁を作って、責任者のくせに責任を取るつもりはなく、保身のために有能な叩き上げをないがしろにしたり、きちんと若手を教育しないで急ごしらえのパイロットで何とかしようとしたりする姿、現在の日本にも被って見えますし、歴史は繰り返すという言葉では無いですけれども、日本が没落するというのならば、歴史は繰り返すという事になるよなと。
戦時中の軍部、特に敗戦濃厚になってきている時の描写は、それこそブラック企業そのもの、強制はしないけれども自発的に特攻隊にならないと分かっているよねという、空気を読めという悪しき流れ、経済が停滞し右肩下がりになっている昨今の責任回避能力に優れているから出世した企業や官僚のトップ、また政治家たちの姿と被りまくりで感情移入もしやすいですね。
責任ある立場の人間が、きちんと教育し育てるという概念なく、すべてを自己責任として無茶な要求をしつづける状況というのは、敗戦に向かっている姿であると分かりやすいですし、そういった社会構造を嬉々として作りたがるような人材派遣会社の会長をやりながら政治に口出ししている経済学者なんていうのが、当時下っ端には死んでこいと片道切符で特攻をさせていながら、自分は死からも責任からも逃げまくっていた軍の上層部と分かりやすく被りますね、もちろん小説ですから、現代の価値観から想像しやすいようにアレンジしている部分もあるでしょうが、意図していなくても勝手に相似形になっていると言っても過言では無いんじゃないかと思えるくらい。
戦時中という非日常を扱っていて、当時の悲惨さや戦争がいかに一部の人間以外に重くのしかかって来るのかを分かりやすく描いている作品ですが、いわゆるヒューマンストーリーとしてだけではなく、歴史ミステリーとしても読めますし、また歴史というものを使って現代社会への警鐘も織り込んでいるとも読める、作品自体に光の当て方によって見え方が変わって来る作品だなと思えますね。
実の祖父だと思っていた祖父は実は血のつながりが無く、実の祖父は別にいて、その祖父は戦時中零戦乗りでカミカゼ特攻隊として命を落としていた。
その実の祖父がどういう人だったのか、当時を知る人を訪ね証言を集めて祖父の実態に迫って行くという話になります。
第二次世界大戦中の軍人、現在の価値感と同じ尺度で判断して全否定すべき存在とされがち、またそういった風にマスメディアを中心に煽りすぎていて実態が分からないものですが、時代による価値観、空気感こそ違えそこに生きていた人達は決して狂信的なテロリスト集団のようなものではなく、いつの時代でも人間のやっている事って基本的には変わらないなという普遍的な価値観も当然あるもの。
祖父について聞きとり調査のような形で祖父の実態と共に、あの時代とはどういうものだったのかを同時に知る事になり、全肯定か全否定の2択の価値観ではないものが浮かび上がって行くという構成になっています。
聞く相手によって、祖父の姿が卑怯者から優秀なパイロット、あの当時の軍人にあるまじき生きたい、死にたくないという感情を前に出したり、当時軍人が当たり前のように死ぬ気でやれというのが文字通り本当に死ぬ事を表してたいたものを否定する態度をとっていた祖父の証言が集まってくる事で、当時の空気感が逆にリアルに伝わってくるかたちになっています。
証言を集めて、祖父の実態像が形作られていく過程が、歴史ミステリーを読んでいる感覚に非常に似ていますね。
歴史は残された資料から光の当て方を変える事によって、一度付けられたイメージが復されたりする事は良くある事、固定観念が変えられる事もまた1つの楽しみになっているものですが、そういった歴史の価値観の変化、通説とは違い実はこうだったのではないかという解釈の変化を魅せる事が許されるジャンルが歴史ミステリーだったりしますが、そういう事を考えると、第二次世界大戦もまた十分に歴史になった出来事であり、固定観念に変化をつけても、光の当て方に変化をつけてもまた構わない時代になっていると思います。
特攻隊は狂人の集まりだったのか、命を惜しいと思わない人達の集まりだったのか、安易にレッテル貼りをするのではなく、時代とともに変わる価値観と時代を経ても変わらない普遍的な価値観、それを上手く使い分けて、現代的な感覚を放り込んで解釈し物語として作り込んでいるので、ヒットするのもわかるなと思えますね。
零戦が世界を驚かせるレベルの無敵の戦闘機であったにもかかわらず、日本が敗戦に向かってどんどん凋落していく過程も、当時の軍部の上の方が無能だったというのがありますが、あれは軍人だから無能だったと今の時代とは無縁の物と理解したい人達がいるのならば、それは違うと分かりやすく作られていますね。
結局、悪しき官僚主義、エリートは出発点さえ成功したらばエリートとして君臨し、絶対に越えられない壁を作って、責任者のくせに責任を取るつもりはなく、保身のために有能な叩き上げをないがしろにしたり、きちんと若手を教育しないで急ごしらえのパイロットで何とかしようとしたりする姿、現在の日本にも被って見えますし、歴史は繰り返すという言葉では無いですけれども、日本が没落するというのならば、歴史は繰り返すという事になるよなと。
戦時中の軍部、特に敗戦濃厚になってきている時の描写は、それこそブラック企業そのもの、強制はしないけれども自発的に特攻隊にならないと分かっているよねという、空気を読めという悪しき流れ、経済が停滞し右肩下がりになっている昨今の責任回避能力に優れているから出世した企業や官僚のトップ、また政治家たちの姿と被りまくりで感情移入もしやすいですね。
責任ある立場の人間が、きちんと教育し育てるという概念なく、すべてを自己責任として無茶な要求をしつづける状況というのは、敗戦に向かっている姿であると分かりやすいですし、そういった社会構造を嬉々として作りたがるような人材派遣会社の会長をやりながら政治に口出ししている経済学者なんていうのが、当時下っ端には死んでこいと片道切符で特攻をさせていながら、自分は死からも責任からも逃げまくっていた軍の上層部と分かりやすく被りますね、もちろん小説ですから、現代の価値観から想像しやすいようにアレンジしている部分もあるでしょうが、意図していなくても勝手に相似形になっていると言っても過言では無いんじゃないかと思えるくらい。
戦時中という非日常を扱っていて、当時の悲惨さや戦争がいかに一部の人間以外に重くのしかかって来るのかを分かりやすく描いている作品ですが、いわゆるヒューマンストーリーとしてだけではなく、歴史ミステリーとしても読めますし、また歴史というものを使って現代社会への警鐘も織り込んでいるとも読める、作品自体に光の当て方によって見え方が変わって来る作品だなと思えますね。
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