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今日の読書 日本人に生まれて、まあよかった/平川祐弘

夏目漱石の書き記した文で「余は幸いにして日本人に生まれたと云ふ自覚を得た」「余は支那人や朝鮮人にうまれなくつて、まあ善かったと思った」という所から本書のタイトルはつけられていますが、夏目漱石のこの「まあ」という言葉の使い方、全肯定ではないけれども、概ね肯定するという感覚、これは非常に使い勝手の良い概念だなぁと思わずにはいられないのですが、本書のタイトルにこの匙加減を使っているあたり、世の中すぐに単純な二元論に持ち込みたがる人がいる中で、良い感じな日本人肯定感があっていいですね。

中身としては、比較文化史の大家である筆者が戦後民主主義の歪みでもある自虐史観について、その出来上がったバックボーン、敗戦による日本人の自信喪失と、日本人悪玉論というプロバガンダの影響、戦後知識人の日本に対する批判的な態度こそが正しいと強力に作り上げた極端な世論形成、そういったものをもう一度洗い直し、本当に戦後知識人が言ってきた事って正しかったの?全く違うよねというのまとめたものになります。

夏目漱石の言葉の「余は支那人や朝鮮人にうまれなくつて、まあ善かったと思った」というのも、決して民族的に相手を見下している失礼な物言いであると断じたがる人がいるけれども、日本人が当たり前にして無自覚になってる、言論や思想の自由があるって、素晴らしい事であって、むしろそれを自覚しないという事は、言論の自由というものを放棄したがっているという事。

もし本当に夏目漱石の言葉である「余は支那人や朝鮮人にうまれなくつて、まあ善かったと思った」を否定したいのであれば、日本以上に自由を謳歌する国になってから言ってくれという感じになりますね。

日本の戦後知識階層は反日プロバガンダを素直に受け入れる責任回避的な真面目な人であるとか、共産主義を素直に受けれた真面目な人達が支配してしまっていたから、偏りが出来て当たり前、その偏りを考え直そうというもの。

戦後の日本がつまずいた原因として、まずは戦争そのものの反省、これは日本悪玉という価値固定主義から脱却し、それでいて日本は悪くは無かったという逆の方向に振りきれるのではない、とにかく単純な二分論を排し、何が失敗だったのかを考え直すという事。

そして、日本が悪と価値固定された要因でもある、戦時中の反日プロバガンダ対策の甘さを再考し、その上で将来的にどうするか。

反日プロバガンダを流布された事を阻止できなかった事を反省し、逆に親日プロバガンダというのではなく、日本の立場の正当性の本当に正当な部分こそを上手く流布させる事。

そのキーとして五箇条の御誓文を上げ、今後の日本のためとして真のエリート教育の復活、日本についての真の理解とそれを外国に正しく伝える力の育成を軸にするのがいいのではないかとの提示があります。

目新しさはないものの、何度も繰り返されますが、こういう事を言うと必ずぶっ潰そうとする、朝日新聞の熱心な読者のような偽善的平等主義者があらわれるというのが、さもありなんと思えるものになっていますね。

世の中、単純な二分論で構成されていません。

しかし単純な二分論は単純故に力強さと分かりやすさを兼ね備えていて、簡単に流布されてしまいます、いい加減極論のカウンター合戦みたいな世論誘導というものが消え去り、日本国民みんなで、日本人に生まれて、まあよかったと言えるような世の中になるのが理想だと思いますね。

序章 日本人に生まれて、まあよかった
一章 国を守るということ
二章 本当の「自由」と「民主主義」
三章 戦後日本の歴史認識をただす
四章 生存戦略としての外国語教育
五章 せかいにもてる人材を育てる
終章 『朝日新聞』を定期購読でお読みになる皆さんへ
日本人に生まれて、まあよかった (新潮新書)日本人に生まれて、まあよかった (新潮新書)
(2014/05/16)
平川 祐弘

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