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今日の読書 海から何かがやってくる/田中芳樹

薬師寺涼子の怪奇事件簿シリーズの最新作になります。

ドラキュラも避けて通るという所から、ドラよけお涼と呼ばれ恐れられている薬師寺涼子を主人公としているシリーズですが・・・すごく残念な事にシリーズとして劣化しているというか、手段と目的が入れ替わってしまっているというか、元々作者の息抜きとなるシリーズとして作者が楽しんで書く気楽なシリーズとしての立ち位置があったんでしょうが、作者が楽しんで書くというものの目的が明らかに変わってしまったなぁと。

元々、国家権力をバカにする形でエンターテインメントにまとめていたシリーズでしたが、いつの頃からか普遍的な利権構造よりも、時事ネタとも言える登場人物の元ネタが分かりやすく特定できる形になる者をパロディ的に積極的に取り入れるようになり、ある種のお決まりになっていました。

その主張に賛同するかどうかは横において、時事ネタはあくまでも味付け程度ににとどめていて、それをたたき台にして解決が困難な怪奇事件に立ち向かい解決するというものであったはずなんですよね。

その怪奇事件も元ネタは実際の伝説上の怪奇生物である事が定番であり、どう解決するかもきちんと伝説上の弱点が提示されていて、困難であろうとも何とか奮闘して解決するという論理的展開があるものなのですが、今作は手段と目的が完全に入れ替わりましたね。

本来は味付け程度だった(とはいえ、直近の作品になればなるほど味付けの方に力点が行きすぎていましたが)とにかく現政権の批判への力点が半端無く、それが書きたいだけだよねレベルに力点が行きすぎています。

まぁ元々田中芳樹の社会思想のバックボーンはいわゆる戦後の進歩派と言われる左翼思想である事は分かりやすいくらい分かりやすいので、批判する事をいけない事だとは言うつもりもありませんし、それが正しいかどうかは横において、田中芳樹だからなですます範囲内であれば別に構わないのですが、とにかくエンターテインメントに昇華できていないんですよね。

ただ、自分が社会批判というか現政権批判をしたいためだけに必要以上に会話に盛り込みますし、そのせいで普遍的な権力批判とは別のものになっています。

怪奇事件も結局正体が何だか分からずに力技で解決しているだけ、力技で解決するにも、その力技に行くための論理的展開がこのシリーズの醍醐味であったはずなのに、解決に向かう根拠がきちんと展開せずに怪奇に対する扱いが雑・・・

シリーズとして人気があるからこそ続いていると思うのですが、怪奇事件簿の怪奇というものに対して力点をおけないくらい興味を失っているのであれば、このシリーズでやらなくてもいいんじゃないかなぁと。

エンターテインメントに昇華できない時事ネタ批判であるならば、無理に作品に組み込むのではなく、ストレートにコラムなりなんなんなりで発表した方がいいんじゃないかと。

時事ネタは軽めのパロディくらいに収めないと手段と目的を取り違えているという評価にしかならなくなり残念な気持ちになってしまいますからねぇ・・・

海から何かがやってくるなんていうタイトルに逃げずに、怪奇の方にもしっかりと力点を置いて欲しかった・・・
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