今日の読書 横浜1963/伊東潤

滅びの美など敗者に光を当て、勝者はあくまで勝者であって絶対的な善であったり優というわけではなく、敗者はあくまで敗者であって絶対的に悪であったり劣であるというわけでは無いという価値観を軸とした歴史小説を得意とする伊東潤による、初めてのミステリー小説になります。

最近の作品は歴史小説にミステリーの要素が強いものが出てきていたり、この作品もミステリー小説ではあるものの、1963年という東京オリンピックを翌年に控えた敗戦から高度経済成長期という激動の時代を舞台にした時代小説という見方もできるので、歴史小説からミステリーという違和感は皆無ですね。

舞台は横浜、戦勝国であるアメリカが横須賀に基地を置き我が物顔でのさばり、それを決して快く思っているわけではないのに、すっかり敗者として唯々諾々と従っている日本人達。

そこで、発生した殺人事件の容疑者は米軍関係者としか思えないものの、日本側は簡単に捜査ができず、アメリカ軍側も勝者として何をしても構わないという立場を絶対に変えようとはしない。

この状況で捜査にあたるのは白人の父親を持ち外見は日本人要素皆無のハーフの警察官。

出自によって日本人に差別されてきた経験を持ちながらも、日本人としての責務を果たすのに必死な男の目を通して勝者と敗者を分かつ物、絶対に越えられない壁としての差別などなどを捜査しながら考えたりなどなどですね。

敗者に光を当てるという意味では、日本の戦後復興はこれ以上無いくらいに敗者、それでいて敗者だから悪であるとか劣等人種と当てはめるには無理があり、それはそれで勝者の驕り。

その勝者の驕りであるかのような捻れが出ていているのが、日本は絶対悪だから軍備を持つなとアメリカに押しつけられ、それを利用して経済に特化して戦後復興を果たしていく日本の姿と、勝者のはずなのに戦争を続け、ベトナム戦争で若い命を散らしていくアメリカの姿。

ここら辺の歪んだ真理を上手く利用してミステリーに落とし込んでいる作品ですね。

ハーフという今ひとつ信用されない存在というのも、歴史小説に当てはめれば、外様としてなかなか信用されないというのと同じであったりしますし、勝者と敗者の狭間というか国境の大名の寝返りであるとかそういう立場の人物も扱ってきたノウハウが生かされているんじゃ無いかと思えて面白かったですね。

テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

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