今日の読書 ユーロから始まる世界経済の大崩壊/ジョセフ・E・スティグリッツ

非対称性の研究でノーベル経済学賞を受賞しているスティグリッツによる、ユーロ体制そのものが経済崩壊を内包しているものであり、格差拡大や混乱が不可避となっているよというのを解説したものですね。

そもそも、『副題が格差と混乱を生み出す通貨システムの破綻とその衝撃』ですから。

スティグリッツはいわゆるグローバル経済というものが格差拡大を進めるためのシステムであるとして、グローバル経済の論理的なバックボーンがいわゆる市場原理主義であることから、批判しまくりで十数年という感じですが、市場原理主義がグローバルという表看板は美名のものをむしばみ、本来の目的である連帯感を強め、安定を図るというものをむしろ逆に転換していると言うことを事細かに分析しています。

ヨーロッパはヨーロッパとしてまとまろうとする動きがあり、理由としては互いに反目して戦争を起こしたりなんだりという反省から、協力関係になる事こそが重要であるとなった事があるわけですが、行きすぎた反目が悪い結果を及ぼす事は分かりやすいのですが、逆に協力関係になる事の手段と目的と入れ替わったりすると、それはそれで大問題になる、表看板が素晴らしくても中身が伴わないとむしろ大失敗に陥ると言う事になり、現在のヨーロッパの混乱は表看板にこだわったせいで、その不満が噴出している状況、イギリスのEU離脱なんていうのも、EUの表看板に則ってボロカスに叩かれたりもしましたが、EUのシステム事態無理矢理感が強いので、結果論としてはイギリス離脱が大成功になる可能性もある。

逆にイギリスが離脱したことを受けてEUが問題点と真摯に向き合い大改革に成功する可能性はそれはそれであるでしょうが、課題は山積み状態であり、イギリスをボロカスに叩いているだけではむしろ悪い方に進むでしょうね。

EUの問題点としては経済の結びつきを強め、移民の促進を強めた事が格差拡大、労働者の低賃金化の促進に貢献しているという事。

労働者が自由に移動すると言うことは、低賃金労働者の獲得が容易になった大企業が労働者に対して賃金を抑える効果を強め、文句があるなら換えはいくらでもいるよという体制を強固にした事。

貿易に関しては税金によて輸入過多の状況を防ぐことが出来ず、弱小国家の産業は育たず、弱小国家は弱小国家のまま、労働者を雇うことが出来ずに移民していって、そういった人材がまた戻ってくればいいけれども、戻ってこないなど。

そして統一通貨であるユーロがさらに状況悪化を促進し、基本為替レートによる景気変化への対応策を奪っているにもかかわらず、なおかつ金融政策に自由度を持たないから政府による景気刺激策に制限がある状況で、なおかつ、財政赤字削減こそ正義という市場原理主義な自由主義経済思想者達の論理により、財政政策という将来への投資が封じられていて、長期的に景気が良くなるわけが無い状況。

基本的に新古典派な自由主義経済では政府は財政赤字の削減とインフレ率の抑制だけしていればよく、それこそが正義となった結果、硬直的になっていて、今財政赤字の削減をするタイミングじゃ無い、今インフレの心配をする時じゃ無いというのにも関わらず、そこだえにこだわるという、日本でも似たような悪夢がありましたが、緊縮財政こそ正義となった場合、格差は拡大して不況は脱せず阿鼻叫喚というのをいろいろな角度から検証。

そして、統一通貨ユーロや経済圏のEUの失敗とアメリカ経済との比較として、なんでアメリカで出来ることがヨーロッパでは出来ないのかという解説で、EUはそれぞれの国としてやっている部分とEUとしてやっている部分が中途半端な状況であり、黒字国が赤字国を救うために分配するというようなことをしているわけでもなく、それによって国によっての格差が固定されるという問題と、基本的に別の国だから別の文化があり混ざりきらないと言うことと、国を離れて経済移民すると出て行かれた国は国として廃れてしまうという問題があると。

これがアメリカならばどこかの州で仕事が無くなって別の州に多くの住民が移動する事になっても同じアメリカだから、どこかの州がすたれて無くなるわけでは無いから、それほど問題にはならないという比較。

ただ、この比較を持ち出した時に思ったのは、いかにもアメリカだよなと思い、アメリカって地方の土着文化というものが根付いていない所詮は人口国家でしかないというのを、無自覚のうちに認めていると言う事と、日本国内でもこれは参考にならない、日本国内の過疎と過密という状況を分析させようとしても無理かもしれないなと思わずにはいられなく、土着的な国家では無い人口国家であるアメリカのある種の強さというものも逆に感じたりもしましたね。

基本的には、移民推奨、自由貿易最高というような自由主義経済、財政赤字削減こそ正義、インフレ抑制こそ正義(デフレは素晴らしい)なんていうようなものは格差拡大になるよというのが分かれば良いのかなと。

自由主義経済に毒された、中道左派が増えたせいで世の中極右と極左が目立つようになっているという分析、自称中道系の政治家達はよく肝に銘じた方が良さそうですね、日本に真っ当な中道がもともといたのかどうかは知りませんが。


日本版への特別寄稿 イギリスのEU離脱とヨーロッパの苦難

はじめに ユーロという十字架に磔にされるヨーロッパ

第1部 危ういヨーロッパ
 第1章 危ういユーロ
 第2章 ユーロを構築した経済学の誤り
 第3章 ヨーロッパのお粗末な成果

第2部 誕生時からの欠陥品
 第4章 単一通貨が機能する条件とは?
 第5章 不況を生み出す拡散型システム
 第6章 不平等を拡大した欧州中央銀行

第3部 破滅を呼ぶ見当違いの政策
 第7章 いかにしてトロイカ政策は、危機当事国を締め上げて、不況へ落とし込んだか
 第8章 失敗の上塗りをする構造改革

第4部 世界経済が前へ進む道
 第9章 機能するユーロ圏の創設
 第10章 円満な離婚は可能なのか?
 第11章 "柔軟なユーロ"をつくる
 第12章 未来へ向けて

テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

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