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今日の読書 蒙古襲来と神風 中世対外戦争の真実/服部英雄

鎌倉時代に日本を襲った元寇は、島国であり対外戦争を避けることが出来る恵まれた環境の中で数少ない襲撃ですが、その元寇はどのようにして防ぐことが出来たかというと台風という自然現象、通称神風によって守られたと大筋では教えられることが多いものとなっています。

今の時代、教科書に載っているからというだけで、台風が全てを守ってくれたと鵜呑みにするに人はほぼほぼいないとは思いますが、神風という非常に魅力的な要素はなかなか捨てることは出来ずに放置され続けており、戦時中は神風特攻隊として悪用され、戦後は国防という概念の流布を避けるため、元寇は武士が命がけで戦ってくれたおかげで防ぐことが出来たという常識をスルーという事になっています。

戦後教育で神風という概念の放置について、国防や軍事力というものへの極端過ぎる忌避感があったからという説明は本書では一切合切触れられておらず、通説を唱えた学者の権威が強すぎたという事ですませていますが、神風という神話をぶち壊したい、通説になっているけれども、ツッコミどころ多すぎて学術的に放置していられないという意欲の源は、どうにも戦時中までの日本は神によって守られている神風信仰を木っ端微塵にしたいという気持ちが見え隠れしている気がしなくもないのですが、それはそれとして、史料解釈についてはいたずらに現代の価値観をおっかぶせることなく、検証しているものになっています。

前半は日本、中国、朝鮮半島に残された史料から実際に元寇が行われた行程であるとか、元と日本が戦争する事になった理由であるとかを読み解き、後半は合戦に参加した御家人である竹崎季長が指揮して絵師に描かせた『蒙古襲来絵詞』を読み解くという構成になっています。

前半部、日本と元が戦争になった要因としては、当時元がまだ中国全体を統治する前、宋と争っていた時、日本と宋との貿易、特に日本から中国では産出されていなかった硫黄を売っていたことが、そのまま兵器に使われるという事で、元には厄介であり貿易を辞めさせようとした事が軸であり、元から宋へ硫黄を売らないように要請された日本は当時宋が中心で元は夷狄という認識であったがために断り、これが積もり積もって、元が先に傘下にしていた当時の朝鮮半島国家高麗と手を組み日本へと攻撃するというながれであり、元は高麗と手を組んで宋と日本と滅ぼす気になっていたというもの。

で、元と高麗が日本に攻めてきた行程が書かれた歴史書を追っていくと、後に神風で全てを解決したかのように記された『八幡愚童記』に書かれていることが、単なる宗教宣伝になっていたり、現場を知らない公家が無邪気に信じているだけというのが分かるというのを検証。

後半の絵巻を検証し、神風に頼ったのではなく武士が戦った様子を検証し自然環境に頼って日本を守ったのではなく、しっかりと人力で戦ったというのを証明します。

元寇の神風神話でもそうですが、日本の悪いところなのか人間全てに普遍的なのか分かりませんが、結局は現場のことを分かっていない人間が、現場の努力を過小評価し恩賞を与えない口実を一生懸命作り上げて残してきているのが、根っこにあるのでははないかと思えて仕方が無いですね。

実際問題、鎌倉幕府は恩賞を与えようにも無い袖は振れないというか、防衛戦争は得る物がないので仕方が無いからというのはありますが、後々に備えて恩賞を与えない口実作りを残してしまい、その幻想を悪用し続けているという感じでしょうか。

ある意味、いつの時代も変わらないものは変わらないなって切なくなりますね。

序 章 神風と近代史
第一章 日宋貿易とクビライの構想
第二章 文永の役の推移
   第一節 蒙古・高麗軍の規模
   第二節 合浦・対馬・壱岐
第三章 弘安の役の推移
   第一節 東路軍の侵攻、世界村はどこか
   第二節 東路軍拠点・志賀島の攻防
   第三節 江南軍、鷹島へ
   第四節 閏七月一日の暴風
   第五節 台風後の死闘
   第六節 海底遺跡の語ること
   第七節 終戦、その後
第四章 竹崎季長の背景
第五章 『蒙古襲来絵詞』をよむ
   第一節 『絵詞』に描かれた文永の役の推移
   第二説 『絵詞』に描かれた弘安の役の推移
   第三節 鎌倉・安達泰盛邸でのできごとの意味
第六章 その後の日元関係
第七章 遺跡からみた蒙古襲来
   第一節 石築地
   第二節 鷹島神崎沖・海底遺跡と沈没船
終 章 ふたたび神風と近代へ

テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

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