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今日の読書 宇沢弘文の数学/小島寛之

新古典経済学派という市場原理主義を学んだ上で否定的に捕らえ「社会的共通資本」という人間に不可欠の基盤的装置の重要性を説いた経済学者である故・宇沢弘文の弟子になる数学者から経済学を学び直した筆者が、数学というものも社会的共通資本であるとして、数学を大いに利用し発展させてきた経済学の概念を紹介するというものになります。

ケインズ経済学は基本的に不況期の対策に特化した概念であり、好況時には終わった扱いをされたり、また不況から派生する失業こそが害悪という事から公共事業を積極的に進めるため、環境破壊の問題と隣り合わせであったり、また無駄な公共事業を乱発する失敗、極論を示す概念では無いがゆえに軸がぶれやすい(そう見えやすい)などという分かりやすい弱点もあり、特に日本のように戦後復興という不況対策をケインズ型というか、土建国家で登ってきた国の場合、主流派経済学、市場原理主義という経済右派からは無駄に溢れたものとして、不況対策は市場に任せるべき一辺倒に傾いていき、弱者保護を表看板に掲げるような左派は官僚主導で利権構造がけしからんという視点に特化したり、環境保護という名の公共事業全否定論者に偏ったり、根本的に経済学に関しては興味の欠片もないがために、政府の仕事は財政赤字削減とインフレ抑制という、市場原理主義ど真ん中な主張をして、本当に弱者保護を考えているのか、不況に緊縮財政をして弱者だらけにすることこそが正しいと思っているのかと不思議なことをする始末であったりとか、まぁ理解されていないというか、変にねじれている状況だったりとか。

経済学そのものがインチキ臭く勘違いされやすい要素が大きいですし、実際に金が絡んだ話になると、国全体についてどうこう考えるよりも、個人的な儲け話と勘違いされたりしますし、変に倫理的に正しいことしか認めないみたいな人が声高になってしまって、一部の人にだけ金が流れるというような話にすり替えられたりしますし、公共事業関係ですと、実際に袖の下を重くしている人もいるので、それはそれで学術的な論理が聞かない世界になったりもするのですので難しいのですが。

いろいろときな臭い感じになってしまう部分を横に置いてみても、経済学というものはなかなか現実世界の事象をしっかりと描き出せない限界がある事も事実であり、いかに現実との乖離をなくすかという事に力を入れてきているわけですが、その中でも数学的要素は切っても切れないものであり、数学的要素の強いものについて現段階までの問題点と、その問題点を修正している考え方を紹介しているのですが、難しくならない範囲に収めているので、私のような底辺の頭脳しか持ち合わせていなくても、一定の理解はできるようになっています(理解したものを覚え続けているかどうかは別問題)

経済関係の特に政策に関係するようなものはどうしても、経済政策について極端に煽るようなもの、このままでは日本はダメになる、この政権ではダメだと言うような政権批判であるとか、官僚批判と結びつけるものがどうしても目を引いてしまいますし、論理的な分析よりも倫理的な分析というか、善悪で物事を判断しようとするというものの方が、誰にでも分かりやすいという錯覚があるのですが、何という行動を批判するというよりも誰という存在を批判するような所に力点をおいた分析って、認知バイアスに陥りやすくてほぼほぼ無意味な結論にいきがちなんじゃないかと私はバイアスをかけているので、できれば本書のようなものが流布しやすい社会になるといいなぁって。

第1章 ケインズから宇沢弘文へ
第2章 宇沢弘文は何を主張したのか
第3章 社会的共通資本としての数学
第4章 統計学は世界を変え得るのか
第5章 ゲーム理論の原点回帰
第6章 21世紀の宇沢理論 小野理論・帰納的ゲーム理論・選考の内生化

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