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今日の読書 逆説の世界史3ギリシア神話と多神教文明の衝突/井沢元彦

井沢元彦の逆説の日本史に続くライフワークとなっている逆説の世界史3冊目は、多神教文明についてとなります。

井沢元彦は日本の歴史学会の弱点として歴史上における宗教の役割についての検証の軽視もしくは無視という事に対してボロカスに罵倒して逆説シリーズを書く原動力にしたという事になっていて、実際に逆説の日本史の開始された半世紀前は唯物史観、進歩史観が圧倒的に幅を利かせていて宗教は麻薬という価値観をそのまま鵜呑みにしてしまうような状況もあったとは思いますが、21世紀以降唯物史観、進歩史観に圧倒的に影響を与えていたマルクスもまた形を変えた疑似宗教であったことが認識されるようになって、唯物史観的な考察から解放されている感はありますが、それはそれで学者ではなく作家だから好き勝手に権威ある学者相手にケンカを売って来た事が全部が全部正しかったかというと違うでしょうが、考察する方向性については早くから呪縛から解放されていた事は正しかったという事にはなるのでしょう。

それでもって、逆説の世界史は日本史シリーズとは違って時系列だけでまとめるのでは無く、ひとまとめにする事によって世界的に地域的に後の歴史にどのような影響を与えていったのかでまとめて検証するという手法になっていて、古代文明だからこそ直接的に影響力の強い宗教観について、多神教から一神教へ強引に変化させられた大多数の地域、それこそ古代文明としては存在感の強いギリシャ神話という宗教観が破壊され一神教に移行した理由と、その逆に多神教な価値観が生き残った仏教、神道、ヒンズー教との違いについての分析となっています。

仏教もインド発祥ながらインドでは廃れたのに対し、チベットや東南アジアや日本で生き残った理由、さらに日本の神仏習合という独自進化というものと、廃れたはずのインドでもヒンズー教の中に仏教が内包されていっているという事で、日本とインドの仏教の独自解釈としての生き残り方の似て非なる状況などなど。

個人的に一神教というものは肌に合わないというか、唯一絶対的に正しい考え方があるという事を信じられない性質なので、多神教の神話にあるある種のいい加減さ、ツッコミどころが多い神様がいるという考え方、ダメなのもいるけれどもダメなりに役に立った時もあるというよな部分否定部分肯定が生き残っている価値観というのが好きなのですが、そういった多神教の概念と一神教の概念の違いに関する考察は読んでいて楽しいですね。

一神教の価値観よりも多神教の価値観の方が好きなんだろうな、もしくは一神教の教えにある傲慢さが好きではないのだろうなというのは感じて、そういう意味では公平な視点とは言い難く、一神教の宗教感を持っている人に受け入れられるかどうかは分かりませんが、私は読んでいて楽しめました。

元々の世界史の知識がたいしたことが無いので、この考え方はどうだろうと疑問に思ったりする部分がないから、面白がっていられるだけかもしれないので、ガチに世界史に詳しい人にとって受け入れられるのかどうかは知りません。


序 章 多神教社会に生きる日本人 無宗教では無く「日本教」を信じる民族
第1章 インダス文明の滅亡とヒンドゥー教の誕生 古代インド思想における「輪廻転生」と「永遠の死」
第2章 ブッダの生涯と仏教の変容 なぜインドではなく中国と日本で発展したのか
 第1話 ブッダが追究した「完全なる死」の境遇
 第2話 禅宗がもたらした日本型資本主義
 第3話 仏教はなぜ発祥の地インドでは衰退したのか
第3章 オリュンポスの神々とギリシア文明の遺産 ポリス(都市国家)の連合体が確立した平和
 第1話 キリスト教に敗北したギリシア神話の世界
 第2話 民主主義のルーツとしてのポリス
 第3話 アレクサンドロス大王の偉業とマケドニア帝国の興亡
 第4話 ギリシア・ヘレニズム文明の賢者たち

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