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今日の読書 一睡の夢 家康と淀殿/伊東潤

関ヶ原の合戦を徳川家康視点と毛利輝元視点で交互に展開していく形で描いた『天下大乱』に続き、関ヶ原で実質天下をとった家康と、名目上徳川家に実権を肩代わりさせているだけで成長後は実権を取り戻す立場となる豊臣秀頼の対立構造を、征夷大将軍を息子の秀忠に継がせ秀忠に今後を任せるための段取りを整えていく父親としての家康と、豊臣秀吉の後継者として秀頼を本来あるべき地位に戻す事こそが正義であるという母親の淀殿の対立構造を交互に描く作品になっています。

大坂の陣で豊臣家が完全敗北するまでを描いていますが、その戦闘そのものは描かれる要素は少なく、そこに至るまでの駆け引き、天下の奪い合いを権謀術数と親としての立場、子供をどう評価していて、それだからこその行動理念、また親の思惑と成長した子供との意識のずれという事を軸に展開していくもので、歴史小説の題材として散々使われてきているものを、そういう解釈を使って描くのかという目新しさを感じさせるものになっています。

歴史小説は元ネタとなる歴史は一定の事実は知られているものとしてやらなければいけないですし、奇をてらいすぎて通説と全く違う人物像を作り上げようとすると有名どころは受け入れて貰えない可能性も高いですし、題材として使われまくっているものは後発作品は難しいと思うのですが、家康と淀殿を身分としての役割と親としての視点というものに力点を置くことによって、本音と建て前であるとか自分の意思でやった事と立場上そうせざるを得なかったこととの葛藤などなど描くというやり方を発見したんだなと思えるものに仕上げて来ましたね。

単純な対立構造で説明できるものばかりではないのが歴史上のものですが、この手法は今後も使えそうだなと思えますね。

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