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今日の読書 クローバー・レイン/大崎梢

文芸編集者を主人公に、本を作り売るというのはどういう事かというのが分かる小説ですね。

ちょっとした事をきっかけに、非常に素晴らしい小説に出会った物の、その小説を書いた作家はここ数年ヒット作も無く話題も無く、大手出版社としては露骨に優先順位は低い。

本を作るという事は商売である以上、良い作品だから出版出来るというのではなく、売れる計算が無い限りだす事は無理。

ある意味では当たり前ではあるものの、果たしてそれでいいのかという疑問を抱きながら、どうにかして出版し、売れるものにしたいという熱意に回りを巻き込む事になってという奮闘記。

出版不況と言われ本がなかなか売れない時代、もちろん本に限らず物が売れない時代であり長いデフレがそれを明らかにしていますが、それでもやはり、良い物が皆に認められて売れるという世の中であって欲しいと思わずにはいられません。

本、特に小説というのは一過性のものではなく、売りだされた時期を逃すと二度と売れないというたぐいの物ではありません、しかし、良い物であろうとも誰にも見向きもされないまま知る人ぞ知る作品で終わってしまう物も多くありますし、作品の質云々ではなく、作家の名前や、話題性だけで売り上げが変わってしまうものでもあったりします(作家読みする私にとっては、ちょっと肩身が狭くなる思いだったりしますが)

良い物を多くの人に伝えたい、大人の事情で、自分が良いものだと思わないものでも、良い物である事にして、喧伝して売らざるを得ないものがあふれている昨今、自分が心底良い物だからとのめり込む事ができるという事が羨ましいと感じましたね。

また、本を出版するという事は、多くの苦労があったりとか、裏側が垣間見える楽しさであるとか、関わり合う人々に、ちょっときれいごと過ぎると感じさせるギリギリのラインを攻めていたりとか、非常に面白くまとめていると。

作者は本屋さんで務めていた経験もありますし、ある意味、本を作ってから売るまでの過程の最初と最後を知っているからこその視点であり、それを知っているからこその利点を生かしているなと改めて思いますね。
クローバー・レイン (一般書)クローバー・レイン (一般書)
(2012/06/07)
大崎梢

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テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

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「クローバー・レイン」大崎梢

作家=小説を書く人。 文芸編集者=小説のためになんでもする人。 老舗の大手出版社に勤める彰彦は、過去の人と目されていた作家の 素晴らしい原稿を偶然手にして、どうしても本にしたいと願う。 けれど会社では企画にGOサインが出なくて――。 いくつものハードルを越え、本を届けるために、奔走する彰彦。 その思いは、出版社内の人々に加えて、作家やその娘をも巻き込んでいく。 本に携わる人たち...

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No title

とてもよかったです。
こういう本に出会うから、読書はやめられないないんですよね。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。

Re: No title

本読みとしては、すごく共感しやすい話ですし、やはり良い本が世に出てきて欲しいと思わずにはいられなくなりますよね。
トラックバックさせていただきます。

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