今日の読書 富国と強兵 地政経済学序説/中野剛志

政治や経済など、いわゆる社会学分野の学問であるとか、その学問的裏付けをある程度利用した社会分析がどうにも現実社会と乖離しているのではないかという疑問を持たない人というのは恐らくいないと思います。

学問的なものと固く考えなくても、いわゆる報道による社会分析の外しっぷり、もしくは政治経済政策が狙ったように嵌まらないことなどでも、理論上大外しはしないはずなのに大外しをする事など枚挙にいとまが無いでしょう。

そういった外しっぷりが酷いのは理論上上手くいくはずという理論そのものが現実社会と乖離しているからと考えるのはある程度自然のの事だと思いますし、その現実と乖離した社会学分野の理論の問題は、総合的な分析から、学問分野別に細分化していった結果と考えるのはある意味普通ではあるでしょう。

しかし、その普通が出来ないのもまた社会学系の限界というか、いわゆる理系分野であれば実験によう検証がしやすく、物事を単純化したところから積み重ねて複雑な実験まで可能になるのに対し、実社会はそもそも実験ができない、理論上正しいはずという仮説を思いついたとしても証明手段がそもそもあり得ない。

また、現実社会を分析したとしても、専門分野外の事を横に置くと、その横に置いた部分こそが重要であると言うことを見過ごすことになり、そもそも理論上都合が悪いからこそ横に置くという恣意的な結論を導くことも往々にしてあり得ると。

そういった、分野別に専門化した弊害を正すためにも今度は逆に統合的に持っていこうというのが、地政経済学というものの狙いで、地政学と経済学は不可分、政治と経済は密接に繋がっているし、軍事条件と社会福祉は密接に繋がっているし、何か1つだけ取り上げても結局は現実と乖離するだけというのを説明しようとしています。

地政学という分野に関しては私はほぼほぼ無知、強いて言えば歴史上の出来事をそれぞれの土地の条件によって分析すれば、条件によって文化や行動様式がある程度決まるということは普通のことだろうなというのと、普遍的な価値観はそれはそれとして地球規模で共通して持ち得るものはあるが、ほぼほぼ普遍性は無い、世の中分かり合えることもあるけれども、分かり合えないこともあり、むしろ分かり合えないことなど何もないという理論で物事を進めると危険でしかないというのは感覚的に思っているものですね。

私のぼんやりと思っている、アンチグローバルと市場原理批判これを論理的にまとめてくれたものがこの1冊になるかなぁと思えるものでした。

アンチグローバル主義というと、今のご時世、差別主義者であるとか時代遅れというようなレッテルがすぐに貼られてしまいますが、私の考えているあるべきグローバルというのは、基本それぞれの国家は土着至上主義(本当は民族国家と言いたいところですが、現段階で出生地と民族が一致しない国家があるので一概には言わず)それぞれが一定以上の独自性を持ち、それぞれのお国柄や特徴を生かしたつきあい方ができる形にするべきという考え方ですね、例えば名前などを見て何人っぽいと見当がつくようなものとか。

しかし、現在のグローバル化というのはその逆で地球規模の全体主義や平準化という様相も含んでいたりして理想とは逆に行っているとしか思えない。

その最たるものが経済学の影響、いわゆる主流派経済学といわれる古典、新古典派の流れの自由主義であり、貿易をすればするほど社会はよくなる、関税をなくせばなくすほどよくなるという昨今の巷説はまさにそうですね。

経済学を学べば早い段階で比較優位論という貿易をする意味を学ぶわけですが、これがどうしても理論上理解は出来ても感覚的に拒否したくなるものであり続けているわけですが、ようは国際的分業と同時に比較優位に特化する事による国内産業の単純化、モノカルチャー化推奨にしか思えず、産業構造の変化に対するリスク細分化を真っ向否定するようにしか思えないわけですね。

そういった私が感覚的に理論ではそうだけれどもなぁと受け入れがたいと感じていて、でもじゃあ理論的にどう反論するかというと自分では理論構築はできないものを説明してくれているのを感じます。

基本経済学分野に関しては主流派経済学批判とさらに言うと主流派経済学であると理解しないままその理論を使っている人批判。

こと日本に当てはめると、財政再建至上主義あたりはそうでしょうかね、不況を脱するためには財政赤字をガンガン増やすことこそが理論上健全であるという事に大して、日本ではとかく財政赤字を問題視して、やれ日本破綻だと喧伝するような人だらけ、社会福祉が必要だと叫びながら経済政策は小さい政府を志向する捻れに気付かない人だらけと、日本の国内問題に当てはめるとなかなか面白く感じるものもあり、同時に野党時代に市場原理主義を批判していた人達が、ガンガン民営化こそ正義みたいな事をやり雇用創出どころか経済を不安定化させるという意味不明な事をやり、社会実験としては改めて雇用政策は市場主導では無理と証明するという、ブラックジョークもあり面白くないものもあり。

また、社会福祉の発展はそれこそ軍事と切り離せないという解説あたりは、日本の自称平和主義者あたりに読ませると発狂するんじゃないかと思えるくらいの分析もなされており、改めて地政学という戦争を含む国家的な問題分析をないがしろにしてはいけないというあたりも面白く読めますね。

全体的に非常に面白いのですが、問題は社会学分野の統合を狙っているだけに、それぞれをおろそかにできないということで、非常に長く扱っているもの全部に触れようとするとそれぞれの章ごとに論文を書けと言われているようなことになり難しくなるということですかね。

いわゆる専門書として読むのならば分かりやすいのですが(少なくとも経済学の専門書として読むのならば、数字やグラフが出てこないので、専門外の人も読みやすい)じゃあ一般書として読むとなると、社会学分野について何かしら既に囓っておかないと結構きついということで難しい部類に入る。

多くの人が読んだのならば、これを受け入れるかどうかは別として大いに異議があるとは思うのですが、簡単に人に薦めるにはハードルが高すぎる。

とりあえず、無いがしかの政治運動をしている人は必読書にしておいた方が良いですね、物事の単純化や極論化、単純な善悪二元論、戦争全否定論などなどについて考える事になるでしょうし良いとは思いますが、読む必要性がありそうな人ほど読まないだろうなと思ってみたり。

私のようにぼんやりと、市場原理主義への批判であるとか、国家間の関係は混ぜるな危険があると思っている人、戦争を絶対悪として考える事すら否定するという人こそがむしろ危険で戦争に向かわせているのではと感じている人。

そういったものに何かしら引っかかりを感じた人は、そのぼんやりと思っている事を補完してくれる1冊になっていると思います。


序 章 地政学と経済学

第1章 貨幣と領土

第2章 資本主義の不安定性

第3章 通貨と財政

第4章 領土の政治経済学

第5章 戦争と国家

第6章 資本と強制

第7章 第一次産業革命の地政経済学

第8章 第二次産業革命の地政経済学

第9章 ハルフォード・マッキンダー(1)

第10章 貿易の地政経済学

第11章 ハルフォード・マッキンダー(2)

第12章 戦争の経済的帰結(1)

第13章 制度経済学

第14章 戦争の経済的帰結(2)

第15章 経済成長の地政経済学

第16章 平和の経済的帰結

第17章 東アジアの地政経済学

第18章 領域国家と通商国家

終 章 地政経済学とは何か

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今日の読書 どうなる世界経済 入門国際経済学/伊藤元重

国際経済について、筆者が行った社会人向けセミナーをまとめたもので、講義を聴いている形で学ぶ形式のものですね。

経済学部の学生向けではなく社会人向けということで、理論的なものは学説によってというよりも現実経済で起きていることをメインに、数式を用いずに説明し、極論は廃して今現在悪化しているものがあっても全否定ではなく、いくつかの可能性の提示までに収めている講義だから当たり前ですが、テレビ番組の解説とかだともう少し極論に走りそうだなとか、何か叩く材料を見つけて叩くんだよなぁとか余計な事を考えてしまったりしますが、そういう視点を持つ方がある意味おかしいのですよね。

国際経済ということで、貿易であるとか通貨の問題というわけですが、基本スタンスとしては保護貿易によるマイナス面に力点を置き自由貿易のプラス面に力点をおいているのは感じますね、まぁ公平さや公正さをどうするのかという問題点、二国間合意ということですと、かつての日米貿易摩擦交渉という悪条件があったからこそTPPのような枠組みは政治的な殴り合いになる事を避ける意味があるという扱いになっていたりしますので、私のように行きすぎた自由貿易は理論上上手くいくとしても、現実では不満の方が高まりやすく理論と現実が乖離してしまうという危惧を持っているとどうだろ?というのはありますね。

個人的には、国際金融のトリレンマという①為替レートを固定する②独自の財政金融政策を実行する③自由な貿易や投資を認める、この3つを同時に達成することは不可能という概念を知ることでぼんやりと理解していた問題点が結構分かる感じになりましたね。

統一通貨ユーロの問題点として、②の独自の財政金融政策の実行ができないことが、ギリシャ財政破綻の立て直しを困難にしているという例は分かりやすいというか、手をこまねいていなければならない状況になっているそもそもの原因だと思っていましたが、国際金融のトリレンマという永遠の難題と考えれば分かりやすいと。

講義形式をまとめているので比較的に簡単に読めますし、マスメディアで何かというとすぐ極論の結論を煽っているのを何だかなぁと思うけれども、今ひとつぼんやりとしているという人が読むといろいろとすっと入ってくるかもしれません。

逆に分かりやすく極論で煽るようなもの、それこそ中国の問題を扱っているところで、ボロカスの結論を導いてくれることを期待するとかいう人には物足りないかもしれません。

はじめに
ガイダンス 国際経済学で日本と世界をつかめ
      1どうして国際経済学が必要か
      2中国経済はソフトランディングできる?
      3イギリスのEU離脱で始まる大きな変化とは?
      4新大統領でアメリカのTPP政策はどうなる?
      5本書の構成
 
第一講義 ざっくりわかるTPP
      1国際経済学の重要な指標
      2TPPはどこが画期的なのか
      3日本の選択
      4WTOの果たした役割

第二講義 「国際収支」と「為替レート」再入門
      1国際収支とは何か
      2為替レートと日本の競争力

第三講義 通貨制度から見るEUの未来
      1国際金融のトリレンマ
      2発展途上国と固定相場制
      3ユーロの導入

第四講義 比較優位理論とグラビティ・モデル
      1比較優位
      2自由貿易体制の確立と貿易摩擦
      3グラビティ・モデル

第五講義 中国は”先進国”になれるか?
      1BRICsをめぐる国際金融フロー
      2ミドルインカムトラップのメカニズム
      3中国のたどる道
      4地球温暖化と国際経済
おわりに 


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今日の読書 ロシアの歴史を知るための50章/下斗米伸夫編著

タイトルそのままにロシアの歴史を50章でまとめたものになります。

近代国家として存在する前の段階、タタールの軛によって支配される側としてのトラウマを出発点に軛から解放され正教を軸に徐々にロシアとしてのまとまりを作っていき巨大国家としてのロシアが作られてから、革命によってソ連となり、ソ連が崩壊してロシアに戻ってそれからというのがざっくり過ぎる流れになります。

一応はぼんやりとロシアの歴史の流れは頭に入ってはいますが、どうしてもソ連崩壊付近から以降のことが分かりやすいですね、その前は元がぼんやりしか頭に入っていないので。

ソ連崩壊をソ連という特殊事例として扱うというのも考え方の1つでしょうが、私は現在の混沌とした世界情勢、グローバル化を進めてしまったからこそ起きている軋轢というものを考える上で、暴力的な左翼革命という不自然な国家体制、しかも戦時社会主義というまず暴力ありきでまとまるという非常に左翼らしい人工的な国家作りというものは、改めて検証する価値は高いと思えてならないですね。

共産主義の敗退は資本主義の勝利という二項対立構造で考えられる事が多く、決して全くの的外れ出会ったわけでは無いとは思いますが、力点は共産主義と資本主義という経済政策上の優劣に置くべきではなく、無理矢理1つの国家とするために、それまでの伝統文化や宗教、民族を一緒くたにするために強制的にフラット化した事は、現在の暴力的なリベラル勢力による伝統文化で土着文化に対し移民が気にくわないという理由で差別にすり替えて全否定するかのように喧伝して回るということに類似性を感じずにはいられないわけですし。

もちろん、ソ連崩壊は勝手に自壊したものではなく、米ソによる冷戦構造で軍拡競争を繰り広げて耐えられなくなったという側面は無視できませんが、これもイデオロギーを中心として拡大主義があったからこそ、共産主義を拡大しなければという変な義務感を持たずに、自国だけに収めていればまた違った展開もあり得たかもしれませんが・・・イデオロギーによる対立は不可避ではあったんでしょうね。

ロシアの歴史ではありますが、当然日本との関係、日露戦争、第二次大戦で火事場泥棒的参戦からのシベリア抑留、北方領土問題など基本的に良好な関係はできないままとなっている歴史的経緯、また北方領土を4島一括返還にこだわる理想主義がかえって足を引っ張る結果に繋がっている経緯(2島返還で仮に締結をしたとしても、素直に返還という流れになるかというと、平気でちゃぶ台返ししそうな国ではありますが)いろいろと興味深いですね。

ソ連時代から引き続きロシアという国は、常に世界情勢では緊張と緩和を繰り返し、安全という概念が育たない状況だよなぁとなっていますが、良くも悪くもロシアっていうのは強者であるという立場を失う事だけは出来ない国と理解すると、普通ならば妥協するだろという時に妥協しないでむしろ全力で喧嘩を売ってくるという流れになるもの分かる気になったりします。

問題は、そんなのが隣国にあって領土問題で揉めているということで、他人事として楽しめるというわけでは無いと言う事ですかね・・・


第Ⅰ部 ルーシからロシアへ

1 キエフ・ルーシの時代――国家の建設と諸公の分立
2 タタールのくびき――異民族支配のもとで
3 モスコーヴィア(モスクワ大公国)の台頭――第三のローマの誕生
4 大荒廃と動乱(スムータ)の時代――リューリク朝からロマノフ朝へ
5 ニーコンと古儀式派――17世紀の教会分裂
6 ウクライナ問題――もうひとつのルーシ

第Ⅱ部 ロシア帝国の時代

7 ツァーリと女帝――ピョートル改革に起因する女帝の誕生
8 ロシア帝国の領土拡張――多面的帝国の実相
9 コサック――ロシア帝国の尖兵
10 「大改革」の時代――西欧化と帝国の拡張
11 自由主義の時代――10月17日詔書への道
12 ユダヤ人問題――ロシアとユダヤの複雑な関係
13 19世紀の日露関係――通商関係樹立交渉から国境画定交渉へ
14 日露戦争と日露関係――敵国から同盟国へ
15 20世紀のロシア――帝国崩壊からソヴィエト体制へ
16 ベルジャーエフの時代――精神的転換と新たな世界観の探求

第Ⅲ部 ソ連邦の時代――「ユートピアの逆説」

17 レーニン――後進ロシアを社会主義の道へ
[コラム1]ロシア革命と古儀式派
18 戦時共産主義とユートピア――新しい人間の創造
19 共産党の支配――「党=国家体制」の成立と党内政治
20 ネップの農村――農民との「結合」の試みとその破綻
21 笑顔のプロパガンダ――1930年代の政治・文化
[コラム2]ハリウッドとコルホーズ――「楽しい生活」の映画プロパガンダ
22 飢饉とテロル――1930年代の悲劇
23 スターリン――20世紀が生んだ独裁者
24 大祖国戦争――偉大なる戦勝体験
25 米ソ冷戦と抑留問題――ソ連による捕虜の「ソヴィエト化」と米占領軍の「防衛網」
26 冷戦とソ連の核開発――米国製原爆のコピーから独自体制の構築へ
27 ソヴィエト農業の悲劇と勝利――最後の緊張の年1945~1970年

第Ⅳ部 変容するソ連――「危機の30年」

28 フルシチョフ改革――非スターリン化から共産主義建設へ
29 冷戦と米ソ関係――対立と協調の二重螺旋
30 日ソ交渉と日ソ関係――北方領土交渉の原点・共同宣言
31 ソ連と中国――同盟、対抗、そして戦略的パートナーシップへ
32 待ちの政治家ブレジネフ――「停滞の時代」と米ソデタントが象徴
33 デタントとエネルギー――エネルギー大国への道
[コラム3]デタント時代における日ソエネルギー協力について
34 ブレジネフ時代の社会――安定と停滞
35 ゴルバチョフ――冷戦を終わらせた男
36 世界を変えた「新思考外交」――冷戦の終結をもたらすが、残された課題も多く
[コラム4]「新思考」と北方領土――逃した接近の機会
37 ペレストロイカと民族問題――立て直し/改革/崩壊
38 国民の総意に基づかないソ連解体――主因はペレストロイカとレーガンの対ソ戦略

第Ⅴ部 よみがえるロシア

39 エリツィンとその時代――苦難に満ちた体制転換
40 ウクライナとロシア――ウクライナの対ロ姿勢と内政
41 ロシア連邦の民族問題――進行する二つのナショナリズム
42 よみがえる宗教――民族的伝統としての正教と正教民族としての記憶
43 経済体制の転換――石油・ガスに依存する粗野な資本主義の実現
44 農業・農村問題――生産の集中化と農村の過疎化の進行
45 プーチン――無名の治安幹部から世界レベルの大統領へ
46 オリガルヒ――国有エネルギー資産の民営化で生まれた寡占資本家
47 プーチン外交――欧米との「協調」から「対立」へ
48 ロシア独自の安全保障観――影響圏的発想と過剰な国防意識
49 ロシアと未承認国家問題――ロシアの近い外国に対する重要な外交カード
50 日ロ関係――ペレストロイカから21世紀へ

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今日の読書 ユーロから始まる世界経済の大崩壊/ジョセフ・E・スティグリッツ

非対称性の研究でノーベル経済学賞を受賞しているスティグリッツによる、ユーロ体制そのものが経済崩壊を内包しているものであり、格差拡大や混乱が不可避となっているよというのを解説したものですね。

そもそも、『副題が格差と混乱を生み出す通貨システムの破綻とその衝撃』ですから。

スティグリッツはいわゆるグローバル経済というものが格差拡大を進めるためのシステムであるとして、グローバル経済の論理的なバックボーンがいわゆる市場原理主義であることから、批判しまくりで十数年という感じですが、市場原理主義がグローバルという表看板は美名のものをむしばみ、本来の目的である連帯感を強め、安定を図るというものをむしろ逆に転換していると言うことを事細かに分析しています。

ヨーロッパはヨーロッパとしてまとまろうとする動きがあり、理由としては互いに反目して戦争を起こしたりなんだりという反省から、協力関係になる事こそが重要であるとなった事があるわけですが、行きすぎた反目が悪い結果を及ぼす事は分かりやすいのですが、逆に協力関係になる事の手段と目的と入れ替わったりすると、それはそれで大問題になる、表看板が素晴らしくても中身が伴わないとむしろ大失敗に陥ると言う事になり、現在のヨーロッパの混乱は表看板にこだわったせいで、その不満が噴出している状況、イギリスのEU離脱なんていうのも、EUの表看板に則ってボロカスに叩かれたりもしましたが、EUのシステム事態無理矢理感が強いので、結果論としてはイギリス離脱が大成功になる可能性もある。

逆にイギリスが離脱したことを受けてEUが問題点と真摯に向き合い大改革に成功する可能性はそれはそれであるでしょうが、課題は山積み状態であり、イギリスをボロカスに叩いているだけではむしろ悪い方に進むでしょうね。

EUの問題点としては経済の結びつきを強め、移民の促進を強めた事が格差拡大、労働者の低賃金化の促進に貢献しているという事。

労働者が自由に移動すると言うことは、低賃金労働者の獲得が容易になった大企業が労働者に対して賃金を抑える効果を強め、文句があるなら換えはいくらでもいるよという体制を強固にした事。

貿易に関しては税金によて輸入過多の状況を防ぐことが出来ず、弱小国家の産業は育たず、弱小国家は弱小国家のまま、労働者を雇うことが出来ずに移民していって、そういった人材がまた戻ってくればいいけれども、戻ってこないなど。

そして統一通貨であるユーロがさらに状況悪化を促進し、基本為替レートによる景気変化への対応策を奪っているにもかかわらず、なおかつ金融政策に自由度を持たないから政府による景気刺激策に制限がある状況で、なおかつ、財政赤字削減こそ正義という市場原理主義な自由主義経済思想者達の論理により、財政政策という将来への投資が封じられていて、長期的に景気が良くなるわけが無い状況。

基本的に新古典派な自由主義経済では政府は財政赤字の削減とインフレ率の抑制だけしていればよく、それこそが正義となった結果、硬直的になっていて、今財政赤字の削減をするタイミングじゃ無い、今インフレの心配をする時じゃ無いというのにも関わらず、そこだえにこだわるという、日本でも似たような悪夢がありましたが、緊縮財政こそ正義となった場合、格差は拡大して不況は脱せず阿鼻叫喚というのをいろいろな角度から検証。

そして、統一通貨ユーロや経済圏のEUの失敗とアメリカ経済との比較として、なんでアメリカで出来ることがヨーロッパでは出来ないのかという解説で、EUはそれぞれの国としてやっている部分とEUとしてやっている部分が中途半端な状況であり、黒字国が赤字国を救うために分配するというようなことをしているわけでもなく、それによって国によっての格差が固定されるという問題と、基本的に別の国だから別の文化があり混ざりきらないと言うことと、国を離れて経済移民すると出て行かれた国は国として廃れてしまうという問題があると。

これがアメリカならばどこかの州で仕事が無くなって別の州に多くの住民が移動する事になっても同じアメリカだから、どこかの州がすたれて無くなるわけでは無いから、それほど問題にはならないという比較。

ただ、この比較を持ち出した時に思ったのは、いかにもアメリカだよなと思い、アメリカって地方の土着文化というものが根付いていない所詮は人口国家でしかないというのを、無自覚のうちに認めていると言う事と、日本国内でもこれは参考にならない、日本国内の過疎と過密という状況を分析させようとしても無理かもしれないなと思わずにはいられなく、土着的な国家では無い人口国家であるアメリカのある種の強さというものも逆に感じたりもしましたね。

基本的には、移民推奨、自由貿易最高というような自由主義経済、財政赤字削減こそ正義、インフレ抑制こそ正義(デフレは素晴らしい)なんていうようなものは格差拡大になるよというのが分かれば良いのかなと。

自由主義経済に毒された、中道左派が増えたせいで世の中極右と極左が目立つようになっているという分析、自称中道系の政治家達はよく肝に銘じた方が良さそうですね、日本に真っ当な中道がもともといたのかどうかは知りませんが。


日本版への特別寄稿 イギリスのEU離脱とヨーロッパの苦難

はじめに ユーロという十字架に磔にされるヨーロッパ

第1部 危ういヨーロッパ
 第1章 危ういユーロ
 第2章 ユーロを構築した経済学の誤り
 第3章 ヨーロッパのお粗末な成果

第2部 誕生時からの欠陥品
 第4章 単一通貨が機能する条件とは?
 第5章 不況を生み出す拡散型システム
 第6章 不平等を拡大した欧州中央銀行

第3部 破滅を呼ぶ見当違いの政策
 第7章 いかにしてトロイカ政策は、危機当事国を締め上げて、不況へ落とし込んだか
 第8章 失敗の上塗りをする構造改革

第4部 世界経済が前へ進む道
 第9章 機能するユーロ圏の創設
 第10章 円満な離婚は可能なのか?
 第11章 "柔軟なユーロ"をつくる
 第12章 未来へ向けて

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今日の読書 偽りの帝国/熊谷徹

副題が、『緊急報告・フォルクスワーゲン排ガス不正の闇』という、昨年発覚したフォルクスワーゲン社がアメリカでディーゼルエンジンのNOx排出量を違法ソフトウェアによって不正な数値を記録させていたという、巨大な詐欺事件および発覚後の対応のまずさで莫大な訴訟騒ぎに発展してしまったという、なかなかインパクトのあった事件を検証したものになります。

この事件に関しては、前に『VW不正と中国・ドイツ経済同盟』というものを読んでいたりするのですが、そっちではドイツという国の問題点として大きくとらえて、フォルクスワーゲン社そのものの問題点は切り口の1つという扱いになっているのに対し、こっちはドイツという国の問題ではなく、あくまでも企業としての問題について、会社の成り立ちから、人事面の特徴と企業風土に力点を置いて、グローバルな大企業としての問題だけを扱っています。

フォルクスワーゲン社の特徴として大きく扱われているのは、ポルシェ・ピエヒ家の絶対的な権力体制であり、上意下達と合理化が染みついていて、無茶筋な条件、例えば今回の事件であれば、NOx排出量をディーゼルエンジンで基準値以下にしながら、なおかつCO2も削減し燃費も向上させる。

アメリカ基準では規制が厳しいのはNOx、ヨーロッパで規制が厳しいのはCO2、それぞれ条件が違いながら、両方共に水準を高めるのは相反する部分が多く共存し得ないものであり、開発するとなると手間暇金とかけないといけないのに、合理化もしないといけないのでそれも出来ない。

技術革新のようなものの場合、失敗は単独では失敗ですが、失敗という実験結果から得る物というのは大きく、何が可能で何が不可能なのかを知ることそのものに失敗というのはありえないものですが、これに金銭や時間の制限が加わると失敗そのものが許されなくなり、大きな意味での成功というのは掴めなくなるものですが、目先の目標のために失敗した事であるとか、その条件では不可能であると進言する事そのものが出来ない、それをすると左遷させられたり首が飛んだりするような社風が出来上がってしまっていた。

それもあり、技術も伸びずに不正をしなくては行けないところまで追い詰められていた。

これが、大きな軸として不正をせざるを得なくなった後、不正がばれてからの対応のまずさということでは、グローバル企業でありながら、ドイツの常識で物事を考えすぎていた、訴訟大国のアメリカというものを分かっていなさすぎて、誤魔化そうと時間稼ぎをしていたらば、その姑息な手段そのものが泥沼に引きずり込まれる結果を招いたと言う事ですね。

どことなく、ドイツ企業というのは一般的に真面目なイメージ作りがあり、不正を行っていたというと驚いてしまう風潮はありますが、対岸の火事扱いにするには、日本の企業のダメなところと被っているなぁと思えて仕方が無く、中でも触れられていますが、実際問題直後に三菱自動車が不正がばれて日産自動車傘下に入ったあたり、ドイツと日本と失敗する時の失敗の仕方は類似性があると思わずにはいられなかったですね。

不正をしていたというだけではなく、労働環境がブラック企業じゃないかと、上司の命令が絶対であるという会社が全てブラック企業扱いするのは考え方が甘いと言われるかもしれないですが、不正せざるを得ない環境、法に触れることをしないといけない環境はやっぱりブラック企業ですね。

ヨーロッパと日本と違いはあるものの、ある程度伝統国家的な保守性が根っこにあって、外側の危機管理が甘くなる傾向があるのかなぁというのと、先進国での失敗例ではアメリカが独自性が強いだけと思えたりもしますが、それはそれで別の話ですね。

本編とはあまり関係ないといえば関係ないですが、一応中でも触れられているように、フォルクスワーゲンはアドルフ・ヒトラーが国民みんなに自家用車が普及するようにという狙いで振興されたものであることは有名ですね。

ヨーロッパではヒトラーは全否定しなければいけないものという強迫観念があるように思える節だらけですが、そのわりにフォルクスワーゲンって普通に残っているよなぁって、一応ヒトラーの功績扱いにして問題ないもののはずなのに、だからぶっ潰せ!にはなっていなんですよね。

まえがき 地下室の死体
第1章  VW排ガス不正の衝撃
第2章  帝国の内なる不安
第3章  不正はいかにして行われたか
第4章  襲いかかる巨額の経済負担
第5章  不正は氷山の一角

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